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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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48 お茶会①


           *      


 懐かしい気分でジル様指定のお茶会会場に来たわけだけど、学園の敷地内にそういうのが出来る場所が用意されているのね。知らなかったわ。

 同日に複数のグループが行う事が予想されていたのか、Aー1と立て看板に書かれていた。ちょっと味気ない。

 一応呼ばれてない人が入らない為なのか、入り口には二人のボディーガードみたいな人がいた。

 「失礼します。招待状をお持ちでしょうか」

 「どうぞ」

 「拝見いたします………ありがとうございます。どうぞお入りください」

 例の失踪事件もあるから、結構警備が厳重なんだろうな。まぁ、中でどんな会話をするのかまでは把握していないんでしょうけど。

 バラのアーチを潜って歩く事二、三分。開けた場所に辿り着いた。こんなに周りに秋バラが咲いているなら、無理にメアリーにお風呂入ってこいって言わなくても良かったわね。

 辺り一面お花の香りと紅茶の香りでいっぱいだ。


 そして、その広場の中央には何人ものドレスを着た女性が居た。

 「あらクリスさんお待ちしておりましたわ」

 ジル様が会話を中断し、私に声をかけた。

 既に何人もの人達がテーブルについている。もしかして、私だけ違う時間を指定されたのかしら?

 その証拠にみんな態と聞こえるように独り言を呟く。

 「あら、みんな揃っているのに一人だけ遅れてくるなんて」「私よりも家格が下なのにね」「レオナルド殿下の婚約者だからっていい気になっているのかしら?」「ジル様に失礼だと思わないのかしら」

 等々、目一杯嫌味を言ってくる。

 これよこれ。私が望んでたのは。

 後ろでメアリーが「あ?」と声を荒げるが、スッと手を出し制止する。メアリー伏せ!

 折角待ちに待ったご令嬢達からのいかにもな嫌がらせが見られるのよ? 楽しまなくちゃ損じゃない!

 「何を仰っているのかしら? クリスさんは時間通りですわよ」

 へ?

  キョトンとした顔でジル様が言うので、みんなそれ以上は言えず黙ってしまった。

 私もびっくりよ。

 しかし、別の切り口はないかとみんなジロジロと舐め回す様に私を見る。

 そんなに見ても可愛くて美しい私しかいませんよ。可愛くってごめんね?

 「それにしても、ジル様のお茶会になんて服を着てきているんですの?」「ほーんと。なぁにその地味な服〜。ぷーくすくすー」「もしかしてちゃんとした服買えないのかしら?」「かわいそー」

 あら、この人達見る目が無いのね。残念ね。

 私の格好をバカにしているあなた達こそ、ハレーションを起こしそうなくらい色がごちゃごちゃしているわよ。もう少し引き算のあるデザインのドレスを着た方が宜しいのでは?

 周りに咲いてる秋バラが霞むくらい色がうるさい。統一感が無いのもマイナスね。

 ジル様はどう反応するのだろうか。

 「お黙りなさいあなた達。あなた達にはあのドレスの素晴らしさが分からないのですか?」

 「「「「「「え?」」」」」」

 「あれは、お金があっても買う事の出来ない幻のゴールデンマムのドレス。一体それをどこで……」

 あらジル様はちゃんと分かっているのね。流石は公爵家のご令嬢。しかし、私もこのドレスがそんなに凄いものだと思ってなかったので、周りのご令嬢方と一緒で内心かなり焦ってるわ。

 そんな凄いドレスを持っているなんてヨメナさんは一体……。


 おっと、そんな事今考える事じゃないわね。

 とりあえず、ニコッと笑っておく。答えに窮した時はとりあえず笑っとけばいいのよ。

 一瞬みんなが後ろに仰け反った気がするけど気のせいよね。

 ジル様は何故かポカンとしている。この人もよく分からないな。私をバカにするために呼んだのか、周りの取り巻きにバカにさせるのかとも思ったんだけど、どちらでも無いようだ。

 「あら、ごめんなさい。ずっと立っていては疲れてしまいますわよね。どうぞそちらにお掛けになって」

 「はい。失礼します」

 座るときに椅子も要チェックだ。お菓子とかアイスとか置いてある場合もあるしね。それでドレスを汚したらとんでもないもの。

 幸い椅子の上には何も置かれていなかった。

 座った途端に、周りの取り巻きさん達から怨嗟のこもった笑顔が向けられた。器用だなぁ。


 「今日は来ていただいて嬉しいですわ」

 「こちらこそ、招待いただきありがとうございます」

 「そんなに畏まらないで、まずはお茶でもどうぞ」

 ジル様って天然なのかな? 周りの取り巻きさん達の態度に気づいてるのか気づいてないのか分からない。そんな状況をスルーして場を進行させていく。

 「失礼いたします。ストレートとミルクどちらにしますか?」

 「あ、ミルクティーでお願いします」

 「かしこまりました」

 カップにミルクを四分の一ほど入れて、二つあるティーポットのうちの片方を取って紅茶を注いでいく。

 そして、私の前にソーサーごと置く。

 あら、ちゃんとスプーンは右側に縦で置かれているわ。

 カップのつまみを掴むように持って一口飲む……。あら、紅茶が濃いめに淹れてあって美味しい。

 ソーサーにカップを戻した時に気づいたんだけど、何故かシーンとしていた。

 そして、誰かが「ほっ…」とため息のようなものを漏らした。

 不思議に思って目線だけ動かして周りを見ると、何故か顔を赤らめて呆っと見ている事に気づいた。

 別に変な飲み方してないと思うのだけど…。

 「クリスさんはとても美しい飲み方をするのね」

 「えっ…」

 いつも通りに飲んでるだけなんだけどな。まぁ、褒められて嬉しくない訳がないので、謝辞を述べる。

 周りからは、もう隠す気がないのか「ぐぬぬ」という悔しそうな声が聞こえる。

 私を貶める材料が減ってとても悔しそうだ。一息つくためにそれぞれティーカップを持ってお茶を飲む。

 そんな彼女達は良い家のご令嬢だけあって、飲み方も綺麗だ。やけくそ気味にグビグビ飲むのかと期待したんだけどなぁ…。


 お茶を飲む彼女達を見ていて気づいた。一人除いて失踪事件に関わった人達じゃない。

 最初に居なくなったシマリナイトキャッツアイ侯爵令嬢、サンセットアパタイト伯爵令嬢、フェナカイトキブシ子爵令嬢、アテナースロベリア子爵令嬢、ユークレースランド伯爵令嬢、そして今の所被害に遭ってないスファレライトチューベローズ侯爵令嬢。

 どういう人選でこの人達を呼んだのだろう。後ろで控えるメイドさんや従者の人達も隠してはいるけど、敵意のある空気を醸し出している。

 彼女達の中で一人、イイ事を思いついたといった顔をした人が口を開く。今度はどんな嫌味を聞かせてくれるのか非常に楽しみだ。

 「そういえばクリスさんは同室の男爵令嬢や平民の方を召使いのようにこき使っているそうじゃありませんか?」

 「あら本当? 可愛い顔してやることがえげつないのね」「表では良い顔して裏では虐めているなんて最低ね」「私クリスさんはそんな人だとは思っていませんでしたわ。それを聞いてショックですわ」

 こんなあからさまな嘘をジル様まで信じるなんて、ちょっとスルー出来ない内容ね。

 ジル様が信じている様子を見て、取り巻き達はクスクス笑っている。

 「あの、はっきり訂正させていただきますが、私があの子達のご飯を用意しているのよ? どれだけ大変か分かるかしら? ものすごい量を食べるのよ。それをヨメナさんと二人で作っていたの。まぁ、最近はマーガレットとカリーナちゃんも料理に目覚めて作るようになったけれど、それまでは殆ど私が作っていたの。勝手な事言われても困るんですが」

 「あら、そうなの。ごめんなさいですわ。皆さんも嘘を鵜呑みにしてはいけないわ」

 「うっ…、申し訳ありません……」「すいませんです……」

 ジル様があっさりと非を認めたためか、バツが悪そうに、渋々といった感じで謝る取り巻き達。

 「そういえば、さっきヨメナ…と。いや…そんなまさかね…」

 ジル様が小さな声でヨメナさんの名前を呟く。もしかして何か知っているのかしら?

 


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