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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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41 身内の恥②/書いてみたかっただけ


 「で、クライブさんは何やってるんです?」

 「お叱り待ちなんだが?」

 ワンちゃんが完全降伏の仰向けのポーズで寝っ転がるクライブさん。気持ち悪い。

 「あらぁ、この駄犬はホントダメねぇ」

 そう言いながら。アンさんがクライブさんのお腹を踏みつける。

 「ちょ、お前じゃない! おれは幼女に踏まれたいんだ」

 私を幼女扱いしないで欲しい。確かに見た目は小さいですよ。でも、年相応に成長しているんですからね? まぁ、中身は女装好きのおっさんですけど。……って誰がおっさんよ。

 ……って、自分に突っ込んでる場合じゃないわね。

 クライブさんは、まぁ…普通か。見た目以外が普通じゃないからどこか変なところがないか見てしまったわ。やたら下半身が厚い気がするけど、エンジェルシリカ領ではそういうのが流行っているのかしら?

 「そんなに俺の事を見つめるなんてやっぱり」

 「死ね! クリスきゅんは私のよ」

 「ぐえ! やめっ!」

 本当にこの二人は仲がいいわね。


 クライブさんを踏みつけているアンさんはというと、魔女みたいな格好をしている。

 魔女っていっても、スチームパンク風の魔女だ。この人も相変わらずスカート丈が短い。まぁ、常識の範囲内だけどね。

 そして無意味についてるベルトみたいなものとか紐とかいっぱいついている。

 この中では一番ちゃんとコスプレしてるなぁ。

 なんというか、杖より、銃の方が似合いそうなレベルだ。

 「アンさんその格好は?」

 「これ? 私黒魔術研究会の顧問だから」

 あ、入るかどうか気になってたやつだ。

 「これ、ルイスが設立した部活なのよ」

 「えっ! お兄様が?」

 普段から中二病みたいな事言ってたけど、まさかそこまでとは思わなかったわ。

 「ここは可愛い魔法少女が沢山いるからね。役得ってやつよ」

 この人部員の人達にそのまま生贄とか材料にされたらいいのに。でも、悪魔さん側でも扱いに困って着払いで返送されそうだな。初期不良じゃなくて仕様ですってね。

 「そうそう。レオナルド殿下も我が黒魔術研究会に入部してますよ」

 「えっ!」

 「ふふっ…。理由がかわいいのよ。クリスちゃんを黒魔術で女の子に戻したいんですって。健気よねぇ。クリスちゃん初めから男の娘なのにね」

 「変な事教えてませんよね?」

 「別に変な事なんて教えてないわよ。顧問だもの。ただ見守ってるだけよ」

 ホントかなぁ? この人の言う事何一つ信じられないんだよなぁ。


 さて、ここまでは見知った顔だけど、よく知らない人もいるなぁ。

 「あの、こちらの先生方も関係者なんですよね?」

 そう言うと、踏まれて潰れたカエルのようになっていたクライブさんが咳き込みながら立ち上がる。

 「あぁ。そいつらも関係者だよ」

 見た感じ、普通の格好をしている。変なところはなさそうね。私を見る目も普通だし。

 そうよね。みんながみんな自分の性癖ひけらかしてる訳ないものね。

 あの人達見て、裏社会の人間だなんて絶対に思わないものね。

 「今回はキャロル。あぁ、アクアマリンウィールアイルのとこからは入学してないからな。代わりに従者が教師として来たんだ」

 そうなんだ。こっちの五人はまともそうな人で良かったわ。

 「そうなんですね。えーっと………」

 「初めまして。コードネームオレンジレンジです」

 ん?

 「ミセスグリーンアップルです」「ブルーエンカウントです」「赤飯です」

 せき……え? 赤飯?

 「学年主任してます。緑黄色しゃ……」

 「ちょっと待って! コードネーム?」

 「遮られちゃった……」

 「えぇ。そうですよ」

 「ちなみに本名は?」

 「ジャックです」「ジャックです」「ジョンです」「ジョンです」「ジャックジョンソンです」

 紛らわしい。よくある名前だけどさぁ…。どおりでコードネームなんて付けているのね。それにしても何でバンド名なのよ。これ絶対名付けたやつ前世の記憶あるでしょ。一体誰なのかしら?

 チラとアンさんを見ると? コテンと首を傾げた。違うのか……。

 それにしてもこのまま言うわけにもいかないわね。

 「学校でもその名前なんですか?」

 「そうですけど」

 「あ、そうなんですね…………………もしかして、私もあるの?」

 「あるわよ」「ありますね」「あるに決まってんじゃん」

 一斉に反応があった。

 「何なんです?」

 「トータルファット」

 「え?」

 「だから、トータルファット」

 私どっちかって言うと、鶏ガラなんですけど。

 もうここまで来たら他のみんなのも聞いておきたい。なんか懐かしい気分になるし。

 「ちなみに皆さんのコードネームって何なんですか?」

 「私はポルノグラフィティよ」

 アンさんは名前だけなら納得。歩く公然猥褻物だし。

 「クライブは何だっけ? プッチモニだっけ」

 「意味は分からないがな。なんか若々しい響きで好きだな」

 アンジェさんはスレイヤー。シグマさんはアンスラックス。聞いてもないのに、お母様とミルキーさんも教えてくれた。何でスラッシュメタル四天王なんですかね?

 例の三人娘はサカナクション、フジファブリック、アジアンカンフージェネレーション………。世代なのかな?

 ここまで来たら、うちのお兄様とお姉様も気になるわ。

 「あの、うちのお兄様とお姉様のコードネームってなんですか?」

 「ルイスは……えーっと、何だっけ?」

 「ボーイジョージじゃなかったっけ?」

 「あぁ、そうだったわね。忘れてたわ。で、サマンサは何だっけ、やたら似た音が続いてたわよね」

 「マリリンマンソンだろ」

 「あー、それそれ。どう言う意味なのかしらね?」

 お姉様は納得だわ。

 ちなみに初対面の五人の先生は色で呼ぶことにした。五人いるし、戦隊モノみたいでいいわよね。

 「じゃあ、オレンジ、グリーン、ブルー、レッド、黄緑さん。今後ともよろしくお願いします」

 「あの、私だけ犬型の風船みたいな感じなんですけど」

 「ちょっと言ってる意味が分からないんですが」


 とまぁ、いろいろ聞けて良かったわ。

 それにしてもコードネームとかあったの全然知らなかったわ。

 お陰で気も少し紛れ………紛れたか? なんかドッと疲れた気もする。

 「あの…私をお忘れではないですか?」

 「敢えてスルーしていたのに」

 最後の一人はJ組の副担任、ファナックさん。これもバンドから来てるのか? それとも本当に狂信者からきているのか分からないわ。だって、未だに修道服着てるんだもの。

 「実は私はオパールレイン領の孤児院出身なんですよ」

 「ええっ!!!」

 「そんな驚かなくても」

 流石にスルーするわけにもいかず話を聞くと、私より五歳上で、子供の時にいろいろ助けられたので恩返しも含めて教師になったんだそうだ。確かにこんな子いたかもしれない。なんせ、私より年上の子もかなりの人数いたからね、。一人一人そこまで覚えてないのよね。

 「ちなみに本名は?」

 「え、クールですけど。お忘れですか?」

 「あー……いた気がする。薄い本を熱心に読んでたわよね」

 「そうですそうです」

 嬉しそうにするけど、あれ参考書じゃなくて同人誌よね。よくそれで教師になれたわね。なるにあたって物凄く苦労してなったんだろうなとは思うんだけど、その格好だと、恩返しじゃなくて復讐のようにも見えるんだけど?

 「ねぇ、その修道服だけど、襟の下は風吹いたら見えるよね? 何で?」

 「趣味ですかね…」

 そういうのはさぁ、ソシャゲの可愛いえっちぃ子が着ているからいいんであって、筋肉質な男が着ていたらただの変態よ? まぁ、そういう趣味のご婦人方も大勢いるから否定はしないけどさ。

 そして、そんな彼はアーサーの口車に乗ったのかは知らないけど、共にクリス教を広めようとしているらしい。止めて欲しいんだけど。あと、生徒達を洗脳するのも止めて欲しい。


 最初の謝罪だけで良かったのにな。

 なんか肩に地縛霊が沢山憑いているんじゃないかなってくらい重い。

 応接室を出て、すぐに深いため息を長々と吐いてしまった。

 あの人達学校に来てからハメ外しすぎでしょう。普通逆よね? 前はもう少しまともだった気がするんだけどなぁ。


           *      


 「どうですかね。クリス様気が紛れましたでしょうか?」

 アンジェがふといつもの顔になって呟く。

 「多分オッケーっしょ。あーしの色気で嫌な気分もどっか飛んでったんじゃない?」

 「そう思うか?」

 「何よ童貞。あんたは違うって言うの?」

 「その童貞ってのやめろよ。あれ絶対に気疲れしてるだろ」

 「本当ですか?」

 「これをやろうって言い出したのはアンなんだから、責任取れよ」

 「分かったわ。結婚すればいいのよね」

 「アン様、それは聞きづてなりませんね。クリス様はうちの娘と…」

 「いーや、私と結婚するのよ。私なら絶対に寂しくさせないし」

 「寂しい思いしてるのはシグマでしょうに…」

 それを見ていた部下の面々は小声で話し合う。

 「なぁ、俺達上司に恵まれなさすぎじゃね?」

 「それな」

 「こっちの仕事の方が危ないとか聞いてないんだが…」

 我を忘れて暴走する上司を見て、信用や信頼といったパラメータがどんどん下がっていくのを彼女らは気づかないのだった。

 そして収拾のつかない話はこの後夜遅くまで続くのだった。


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