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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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39 呼び出し(今月二回目)


           *      


 今日は凄く憂鬱だ。

 昨日イデアさんからの情報を元に旧校舎を調べたら、行方不明だった二人を見つけたんだけど、いや見つかったのは良いことなのよ。

 ただ、どうしてあの場にいたのかを説明するのが非常に難しい。

 イデアさんの説明では納得しなかったし、何より私付きのメイドが三人いた時点で、分かってて捜索した形になるしね。しかも学校からのお達しを無視して。

 お陰で授業の内容も、レオナルドからの甘い囁きも右から左に抜けていくだけだ。

 気がつけば午後の授業も終わり、教室で呆っとしていた。

 「ちょっとクリスどうしたのよ。今日一日ずっと上の空じゃない」

 「そうですよ。私の愛の囁きをただ黙って頷くなんてクリスらしくありません。どうしたんですか? 何か困りごとがあれば相談に乗りますよ」

 「あはは…。大丈夫です…。ちょっとこの後職員室に呼ばれているので、それで…」

 「クリスまた何かやらかしたの?」

 「またって何よ。私そんな問題児じゃないんだけど」

 「ふむ。職員室ですか。私の力で無かったことにしましょうか?」

 「王家の力をそんな事に使わないでください。廃嫡されますよ」

 「はい………え? 本当に?」

 本当かどうかは知らないけど、ボンボンの王子が好き勝手やってると、たいてい最後はどんでん返しで廃嫡されたり、地方に飛ばされたりするのよね。

 まぁ、レオナルドに限ってそんな事はないだろうけど、一応釘は刺しておかないとね。

 そう思ったんだけど、神妙な面持ちのレオナルド。

 「私が庶民になっても、一緒に付いてきてくれますか?」

 「そうならないよう気をつけてれば大丈夫ですよ」

 「そう…ですよね」

 望んだ答えじゃないのか、思うところがあったのかシュンとしている。

 「何言ってんのよ。私なんてクリスがどこに行こうと地の果てまで追いかけてくわよ」

 「何それ怖い。闇金の業者なの?」

 「ちっがうわよ! バカ!」

 「クリスさん、ちょっといいですか?」 

 ソフィアとレオナルドとくだらないやりとりをしていたら、いつの間にか先生が目の前に立っていた。

 「あ、サディ先生…」

 「すいませんが、クリスさんをお借りしますね」

 「「あ、はい…」」

 そう言って職員室にドナドナされていくんだけど、さっきのくだらないやりとりで、少し気が紛れたわ。


 先生の後を付いていくが、どうにも職員室には向かってないように思う。というか、この行き先には覚えがある。

 そして案の定、無駄に大きい扉の前に案内された。

 「どうぞ」

 扉を開けられ、中へ通されると、無駄に広い会議室にレグナム学長とスミカ様の二人だけが座っていた。

 正直、この人数なら職員室とか応接室とか小会議室とかいくらでもあったと思うんだけど。

 「待っていましたよ。そちらへどうぞ」

 案内された椅子に座る。なぁにこれぇ。めちゃくちゃ座り心地のいい椅子ね。ずっと座っていられるわね。ちょっとくるくるしちゃいそうになるのを我慢して佇まいを直す。

 「昨日はありがとうございました。あの二人なら昨日のうちに目を覚まして、衰弱はしていますが、どこにも異常が無いことを確認いたしました」

 「そうですか。それは良かったです」

 スミカ様が二人の状況を告げる。

 その報告だけだったら良かったのになぁ。キーンと耳鳴りがする。胃から熱いものがせり上がってくる感覚がある。

 「それで、お二方からいろいろ事情をお伺いいたしましてね」

 それを私に話す理由はないと思うんですよ。私に話すという事は何かある訳で。


 コホンと一つ咳払いして、学長が訥々と語り出した。

 今回の失踪事件、王家と学園にあまりいい感情を持っていない家の生徒の自演であった事。

 そして、それをするよう指示していた人間が学園に入り込んでいた事。

 トミーとカイラの家、ブリリアントグリーン侯爵家とノーザンブライト侯爵家もそれをするよう指示をしたのだが、二人が拒否をしたために、本当の失踪事件が起きてしまったのだという事。


 目的の為なら娘がどうなってもいいと考えてるなんて最低ね。

 ここまでそれなりの数の貴族が関わっているとは思わなかったわ。

 まぁ、自演だっていうのなら納得よね。外傷もないし、すぐ見つかるところに入ればいいんだもの。どおりですぐ見つかるわけよ。

 渋々従った子もいれば、盲目的に従った子もいるんでしょうね。

 安全な学園内が、そいつらのせいで危ない場所になってしまうなんてね。

 今後断った事によって同じ目に会うと考えたら、従ってしまう子も出てきてしまうだろう………。でも、これが公になって表面化したら寧ろ都合が悪いのは…。

 「あの、この事って公表するんですか?」

 「正直なところを言いますと、未定です」

 「未定…」

 「失踪を自演した生徒を糾弾するわけにもいきませんし、今回被害に遭われた生徒を晒すようなマネは出来ません。それにまだ犯人も捕まっておりませんしね」

 まぁ、そうだよね。下手に不安を煽っても仕方ないしね。

 もしかして、当事者にその結果報告だけなのかな? 

 「えっと、話ってそれだけでしょうか」

 「いいえ」

 「あ、まだあるんですね」

 「勝手にあの場に行った事は、流石に教師として叱らないといけませんから」

 「あっ……」

 その後、一時間近くこってり絞られてしまった。


 ただただ平謝りするしかなかった。まぁ、心配しての苦言なんだろうけど、非常に心苦しい。

 「まぁ、あの場所は私を含めて、古参の先生でも一部しか知らないので、見逃しても仕方ありませんが、よく見つけられましたね」

 最後の最後で残りっぺみたいなフォローをされた。

 「あの…」

 「はいなんでしょう」

 「態々こんな広い所でやらなくても良かったのでは?」

 どうしても気になっていたので聞いてしまった。

 「あぁ…そんなことですか。だって、臨場感あるでしょ?」

 しれっと言い放つ学長。精神衛生的によくないわ。とても悪趣味だと思うの。まるで何処かの誰かさんに似ている気がする。

 そう思ったが、それは口に出さずに一礼して部屋を退出した。


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