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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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36 旧校舎②


 「あら、クリスちゃん。今お帰り?」

 「あ、はい。というかイデアさんその格好は…」

 イデアさんはグレージュ色の作業着を着て清掃用具を持っていた。

 「あぁこれ? これねぇ、先生やろうと思ったら枠が無いし、教員免許も持ってないからって事で、空いてる仕事紹介してもらったら、これだったのよ」

 そう言って清掃用具を持ち上げて見せた。本物の女神様を清掃のおばちゃんにするなんて、知らないって怖いわよね。

 「あ、別に怒ってないからね。これはこれで楽しいし、天界の仕事に比べたら全然楽よ」

 そんな天界の仕事に私を引きづり込もうと画策してましたよね?


 「あ、そうだ。丁度良かったわ」

 何か嫌な予感がする。

 「お仕事の邪魔してはいけませんよね。お疲れ様です」

 そう言って足早に立ち去ろうとしたら、腕をガシッと掴まれてしまった。歩き出そうと持ち上げた右足が地面を掠める。

 「何ですか? 掃除の手伝いですか?」

 最近マーガレットとカリーナちゃんが料理にハマって本格的な夕飯が出ているので、料理を作らなくていいから時間はあるんだけど、イデアさん案件は大抵めんどくさいから関わりたくないんだよなぁ。

 「離してはくれなそうですね」

 「分かってるじゃない」

 はぁ…。深く溜息を吐いてイデアさんに向き直る。

 「で、用件はなんですか?」

 「実はね、私旧校舎の清掃当番なの」

 「一人でですか?」

 「いや…本当はもっといるんだけど」

 ハブられているのかな?

 それに旧校舎って、さっき通ってきた所だ。もしかして一人だと怖いから行きたくないとか、一緒に付いてきて欲しいって事なんだろうか?

 「あのね、怖いからとかって理由じゃないからね」

 「…………」

 「その目は疑ってるでしょ」

 「まぁ…はい」

 「私が怖いのは、スケジュール通りに進まない事と天界の上司とロベルタちゃんだけよ」

 ロベルタさんにどんなトラウマを植え付けられたんだろうか?

 「じゃあ何なんです?」

 イデアさんは軽く咳払いして話し出す。

 「今日、旧校舎の清掃当番なのに、他の清掃員の人達が、あそこは暫くやらなくていいなんて言うのよ。どう考えてもおかしくない? 何か隠してると思わない? 暴きたいと思わない?」

 好奇心旺盛なイデアさんらしいわ。


 つまり、その清掃員の人達が何か今回の失踪事件に絡んでるかもしれないってことね。だから、一人で探ってやろうって事なのか。

 でも、あそこって教師の人達がくまなく探して見つかってないのよね。今回の件に絡んでる先生でもいるのかしら?

 考えるとおかしいことがいっぱいあるのよね。

 例えば、今まではなるべく見つかりやすい所に一人でいたとかね。

 それに失踪した生徒達の家って、どっちかというと王家や学園の方針に否定的な家ばっかり。今回の二人の家もそっち寄りだったはずだけど、あの二人ってレオナルドには否定的だけど、それ以外は家の方針に反発してるんだよね。だって、貴族なのに態々一般枠の特待生枠で入ってきてるんだもの。

 そんな人がこんな事件に加担するとは思えないのよね。

 やっぱりその清掃員の人達が絡んでる可能性はあるけど、失踪して二日目。そろそろ見つけ出さないと危ない気がする。


 「分かったわ。私も行くけど、うちのメイドさん達も呼んでくるから待ってってもらってもいいかしら?」

 「えぇお願い」

 時間も惜しいので、数回壁伝いにジャンプして自室のベランダへ跳ぶ。

 お姉様がベランダ越しに入ってくるので、ベランダの鍵はいつも開いたままだ。

 「メアリー、ビシューさん、ロココさん。ちょっといいかしら」

 「ちょ、クリス様一体どこから帰ってきてるんですか」

 ソファに寝転がってせんべいをバリボリ食べていたメアリーが呆れた顔で問う。

 というか、下に食べカスがいっぱいこぼれているんだけど。ちゃんと掃除するんでしょうね?

 ビシューさんとロココさんは対面のベッドに座り資料を読んでいたようだ。この落差よ。

 「お姉様だってここから入るんだから、別に私がここから入ってもいいでしょ」

 「絶対に横着して跳んで来ましたね」

 「………………」

 メアリーのくせに鋭い。

 「まぁ、いいじゃない。で、見つかったの?」

 「見つかってませんね。今、奥の森を手分けして捜索していますが、難航していますね」

 最初に見つかった子がその森の手前で見つかったからなんだろうけど、管理するにはなるべく近場に置いておきたいと思うのよね。

 だからそこを探してもいない気がする。

 「ちょっと怪しいところがあるから、一緒に来て欲しいんだけど」

 「分かりました」

 「遅くなりそうなので、理由を説明してから行きますね」

 「さっすがロココさん。気遣いができて助かるわ」

 「もしかして、私への当てつけですか?」

 何にも言ってないのに勝手に被害者ヅラしないでもらえるかしらメアリー?

 寮から出るときに表から出ると、コンシェルジュの人に止められてしまうし、今は裏口にも警備員さんがいるから一度入ったら翌朝まで出られない戒厳令状態だ。

 もちろんバレるわけにはいかないから、ベランダから出て行く。

 一応、人がいないことを確認してから跳ぶんだけど、まだ明るいからちょっと不安。


 「イデアさんおまたせ。じゃあ行きま……アデッ!」

 喋っている途中でイデアさんにチョップを食らってしまった。ちょっと舌を噛んでしまったんだけど!

 「何するんですか!」

 「何じゃないわよ。何しれっと跳んでるのよ。あんな壁ジャンプ配管工のヒゲオヤジくらいしか出来ないわよ?」

 「いやあれくらい…」

 「…ってそうじゃなないわ。クリスちゃんスカート履いてるのに跳んだらパンツ見えちゃうでしょ!」

 「あっ……」

 その辺の事全く考えてなかったわ。

 「見られたらどうするの」

 「ごめんなさい」

 私の周りって変な人しかいないから、まともに注意してくれるなんていつぶりだろうと感心してしまった。

 「まぁ、見えなかったんだけどさ…。早すぎて」

 「…………」

 どっちの意味で言ってるのか計りかねるわね。

 「イデア様、もっと言ってやってください。うちのクリス様はその辺の感覚が鈍いので」

 「メアリーにだけは言われたくないんだけど」

 「何か、今日は私に冷たくないですか?」

 「気のせいでしょ」

 そんなやりとりをしていたらビシューさんとロココさんもしれっと跳んできた。


 「お待たせしました。今日は夕飯はいらないと説明してきました」

 「今日はカリーナ様の日でした。分かっているはずですが、物凄く悲しそうな顔をしていました」

 「作る前なら食材無駄にならないでしょ? というか、作っちゃったんならラップしておいてくれれば後で食べるのに」

 「「「「はぁ……………」」」」

 「え、何? 何で一斉にため息つくのよ」

 「だってねぇ……」

 「えぇ。我が主人ながら悲しくなってきます」

 「カリーナ様かわいそう」

 「私、鈍感系主人公って嫌いなのよね」

 みんなが一斉にカリーナちゃんに惻隠の情を見せる。何か間違った事を言っただろうか?

 軽く首を傾げると、みんな一斉に深いため息を吐いた。

 何なのよ一体……。何でそんな非難されなくちゃいけないのよ。


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