表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

391/546

30 部活の勧誘


 あれから数日。今の所は平穏無事に学園生活を送っている。

 「何あれ?」

 昇降口の前では先輩と思しき人たちが紙を配っていた。

 「どうぞー」

 渡された紙を見る。

 「乗馬部…。部活の勧誘だね」

 「クリスは部活とか入るの?」

 家の仕事とか、裏の仕事とかあって忙しいからパスかな。やってみたい気持ちはあるんだけどね。

 「忙しいから無理かな」

 「私も無理ね。社長業も兼ねてるから難しいわよね」

 「そうよね。デートの時間も減るしね」

 ソフィアは放課後に遊ぶ事全般をデートって意味で捉えてるのかしら?

 その後も無理矢理勧誘のチラシを渡され、教室に着く頃にはそれなりの厚さになっていた。

 「結構貰ったわね」

 「これ見るだけでも面白いわね。どれどれ……」

 まぁよくある部活が多いね。剣道部、弓道部、乗馬部、文芸部……。

 あとは変わった部活もあるようだ。畑作部。いいね。畑で野菜を育てるのか。学校の敷地でやっていいのかは謎だけど。似た様なものだと園芸部もあるわね。王城でもお庭づくりしていたからそういうのもいいわね。ただ時間が取れないのよねぇ…。こういうのって家でやらない人とか、やりたいけどスペースとかがない人向けよね。

 「私、クリスが調理部とか製菓部とかやるって言ったら入るわ」

 うーん。確かに料理作るのは好きだからいいんだけど。現状家でも作っているわけだし、学校でも家でも作るとなると大変なのよね。友達とワイワイやりながら作るのもいいんだけど、ソフィアも入るってなったら、それこそ大変だわ。ソフィアに料理させない様にしないといけないんだもの。ただ食べるだけの部活なんてある訳ないから顰蹙買ってしまうわね。

 運動部も文化部も結構あるわね。………落研! え? この世界に落語研究会があるの? これはちょっと気になるわね。

 ボードゲームやらカードゲームの部活も結構あるわね。これただ遊んでるだけじゃなくて?

 あとは……同人誌愛好会。愛好会とか言ってるけど、ここが一番人が多いんじゃないかしら?

 下の方にいくにつれ変なのが紛れ込んでるわね。えーっと…魔術研究会。マント着て夜中に蝋燭立てて紋章書いて変な事言うんでしょ?

 最後は……。

 「どうしたのクリス。いきなり立ち上がって。もう授業始まるわよ?」

 「ちょっと用事が出来たから、一限目は何とかごまかしといて」

 とんでもない事してくれたわね。あのバカ。まだいる筈だから、とっちめてやらないと。


 「よろしくお願いします。是非ともクリス教へ入信ください」

 「何やってんだお前! こらぁ!」

 アーサーの背中目掛けて飛び蹴りを食らわす。

 「はぁああああん!」

 ズザーっと地面を滑っていくアーサー。持っていた紙束は辺りに散乱している。

 そして、その様子を見て、遠巻きに避けて逃げていく生徒達。

 「あっ! それ拾わないでください! 貰っちゃった人は読まずに捨ててください!」

 「何をするんです。あっ! 我が愛しの女神様でしたか…。ありがとうございます」

 何でそこでお礼を言うのかしら? でもそんな事今はどうでもいいわ。

 「お前、布教するなって言ったよな?」

 怒りに任せて胸ぐらを掴む。私をここまで怒らせたのはアーサーが初めてよ。

 「あぁ…そんな乱暴な言葉遣いはおやめください」

 「お前がやらなきゃ、こんな言葉遣いしないわよ」

 「私はただ、クリス様の素晴らしさを全員に広めたいと」

 「だから、それをするなって言ってんのよ」

 「私から宗教を奪ったら、フィギュア職人の道しかありませんよ」

 「出来ればそれもやめて欲しいんだけど」

 どうしてこいつはこんなにも私の嫌がることばっかりするのから?

 パッと掴んでいた胸ぐらから手を離す。

 「はぁ…。どんだけ配ったの?」

 「それはもう沢山お渡ししました。その場で入信いただいた方も沢山おります。あと、この後下駄箱にも入れる予定で」

 とんでもないわね、その行動力を別の事に使いなさいよ。

 「こらー。もう授業始まってるぞ。何やってるんだ」

 何人かの教師が集まってきた。さっきの騒ぎを見た生徒が通報したのだろう。

 「ほら君もやめないか」

 「はい」

 「一体何があったのか、ここでは何だから職員室まで来てもらうよ」

 「はい」

 「君も大丈夫かね? こんなに汚れちゃって」

 「これはこれでご褒美なので問題ありません」

 「は…はぁ…?」


 職員室に通されてアーサーと別々に問い質された。

 「まぁ、話を聞く限り問題は無いように思いますが?」

 「何でですか? 学園で布教活動は問題でしょう?」

 「確かに。学園内ではそういった活動は制限させていただいておりますが…」

 「でしたら!」

 「今回は事前に許可の申請をいただいておりますし、何よりクリス教はあなたもご存知通り、この国の三大宗教の一つですよ? 怪しい新興宗教ならともかく、国教なら問題ないとの判断です」

 「嘘でしょ!?」

 「本当ですよ。こちらが申請書類です。学園長ならびに副学園長のサインと判子もあります」

 「…………………」

 本当だわ。私の知らないところでこんなにも大きな組織になっていただなんて…。

 「かくいう私も入信しましてね。いやぁ…あれはいいですね」

 全っ然よくないよ!

 「女神様と聖女様が学園に入学されていますからね。我々教員一同天にも昇る思いですよ。はっはっは」

 本当に昇天させてあげようかしら? ……いけないわね。思考が暴力的になってるわ。

 「ですが、部活の勧誘をしているところで宗教の勧誘は問題ではないですか?」

 「まぁ…そうですね。クリス様の言う事も一理ありますね」

 一理じゃなくて常識の話だと思うんだけど?

 「これを許しちゃうと、変なことやっても文句言えなくなりますよ?」

 「そうですね………。断腸の思いですが仕方ありません」

 断腸の思いの使い方間違ってないかしら?


 まぁ、私はお咎めなしにはなったけど、件のアーサーもお咎めなしなのは解せないわね。

 とりあえずは布教活動を停止させられただけでも重畳ね。でもあのアーサーの事だし、無視して勝手にやりそうなのよね。


 それから数日。アーサーによる布教活動は行われていないようだ。

 廊下でアーサーを目撃したので、一応やっていないか確認しておきましょう。

 そう思ったのだけど…。

 「ちょっとアーサー?」

 「おや女神様どうされましたか?」

 「その後ろの汚れ…」

 「あぁこれですか? 折角女神様に付けていただいたのです。消すなんて滅相もございません。シルクスクリーンで跡の部分を付けました。信者達からは羨望の眼差しで見られますね。私だけに付けられた聖痕です」

 もうアーサーが何を考えているか分からないよ。スタンダードに怖いわ。

 というか、それを羨ましがる程の信者ってもう狂信者よね。これ以上増えないことを祈るわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ