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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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29 クラス毎に特色があるらしい


 学園生活にもある程度慣れた頃。

 廊下を歩いていると、生徒達のいろんな話し声が聞こえる。

 「あのギャル先生ヤバいよな」

 「な。俺あの先生マジ好きだわー」

 クオンさんの事だな。あの格好で定着したんだな。心なしかギャルの生徒増えたしなぁ。影響力凄いな。インフルエンサーじゃん。

 「G組だっけあそこ」

 「そうそう。みんなギャルだもんな」

 「なー。俺あそこのクラスがいーわ」

 「それなー。あの見た目でめっちゃ優しいし、親身になってくれるらしいしな」

 「俺みたいなオタクにも優しいしな。クオン先生しか勝たん」

 オタクなのに喋り方が陽キャになりかけてるわね。ていうか、オタクってあんなウェイウェイ言ってたっけ?

 「でもな、H組はもっと凄いらしい」

 「あそこなー。あそこもいいよなー」

 H組はギガさんだよね。

 「みんなお母さんって呼ぶらしい」

 「なに? 言い間違いじゃなくて?」

 「そう。先生じゃなくてお母さん。包容力がハンパないらしい。あそこだけ保育園みたいな感じらしいぞ?」

 あの人も何やってんのよ。まぁ確かにお母さんって言いたくなる気持ちも分かるからね。

 「相談あると、抱き抱えてくれたり、膝枕してくれたり、頭撫でてくれたりするらしいぞ」

 「なんて羨ま…けしからんな。クラス替えを要求したい」

 「だが、決めるのはまだ早いぞ」

 「どう言う事よ」

 どう言う事よ。…あら、被ってしまったわね。

 「B組も凄いらしい」

 B組ってプロフィアさんでしょ?何も問題はないでしょ? もしかして初々しくて見守ってあげたい的な感じ?

 「ムチで叩いてくれるらしい」

 は? どう言う事よ。黙って続きを聞く。

 「あそこの先生な、ボンテージの衣装で授業やってくれんのよ」

 「マジか!」

 「マジマジ。最初は普通の格好なのに、問題が解けないと、着ていた服を脱ぎ捨てて、ムチで地面とか教卓とか叩きまくるらしい」

 「いいんかそれ?」

 「それでな、顎くいとかビンタとかしてくれるらしい」

 あの人もダメだったか。まさか、そんな趣味持ってるとは思わなかった。今まで下にそういうの着てたって事かしら? 清純そうな見た目で一番とんでもないのでは?

 エリーのところにいたから、普通じゃないとは思ったけど、いくらなんでも前世での趣味を謳歌しすぎてるんじゃないの?

 もしかして、男装させられてた反動なのかしら?

 それにしたって、いくらなんでもねぇ…。ぶっちゃけはっちゃけすぎだと思うのよ。

 「教卓の上に座るとみんなワザと間違えるらしいな」

 それ逆に教育失敗してない?

 「悩むなぁ」

 「だろ?」

 悩んだところで、クラス替えできないし、何なら副担任だからね。まぁ、授業で当たれば……、私も当たった事ないわね。担当科目なんなのかしら?

 これ、他のクラスもこんな感じなのかしら?

 気になって仕方ないわ。続きは? 続きはないの?

 「俺んとこなんて、真面目も大真面目でつまんねーもん。メイド服着てるから、最初はおっ! って思ったんだけど、硬すぎてなぁ…。歳もいってるし…」

 何言ってんのよ。アンジェさん最高でしょ? それが分かんないなんて、全然ダメね。あの貞淑さに隠された大人の色気を分かんないなんて、まだまだ子供ねぇ。

 「俺んとこもメイド服着てるけどさぁ、初日に何配られたと思う?」

 「え? 行事予定表とかだろ?」

 「婚姻届だよ」

 シグマさん…。見つからないなら、ここで結婚相手を見つけようとしてるんですね。

 「何それ、最高じゃん。先生と恋愛なんて羨ましいんだけど」

 「恋愛もクソもあるか! 婚姻届の下には、先生の取扱説明書もあったんだぞ! 箇条書きで細かく書いてあったんだ。あれは、恐怖だぞ」

 「うわぁ、めんどくさそう……。地雷じゃん」

 「絶対に束縛するタイプだよな」

 「それはそれで…いや、やっぱないわ」

 シグマさんが結婚できないのはそういうところだと思います。

 「お前らさっきから聞いてりゃ、言いたい放題だな」

 おや、新しい人が話に加わったわね。

 「俺なんてなぁ、朝から筋肉ダルマみたいな副担任と、その弟の痴話喧嘩見せられるんだぞ? それも毎日だ!」

 「なんかすまん」「俺も」

 「分かってくれりゃあいいって事よ」

 みんないろいろあるんだなぁ。うちのアンさんも、一応は問題起こさずにやっているからなぁ。なんていうか、担任のレベッカ先生の方が酷すぎて、そのフォローで自我を出せない状況って感じ?


 「まぁ、いろいろ言ったけどさ、あそこはヤバいよな」

 「あぁ、あそこな」

 え? どこ? そんな凄い先生いるの?

 「あそこは、先生は普通なんだよ。ただなぁ」

 「みんな修道服着て祈ってるんだろ? 異常だよ」

 もう、何処が? なんて聞かなくても分かる。あのバカが懲りずにやらかしたのね。

 気がついたら、そのまま走り出していた。

 そして、J組の扉を開けて後悔した。

 「おや、女神様」

「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」

 逃げようと思ったら囲まれて引きづり込まれてしまったわ。

 「女神様ようこそ、おいでくださいました。ささ、こちらへどうぞ」

 「いや…」

 「女神様!」「女神様、聖書にサインを前の筆でかいてください」「毎日読んでます女神様」「毎日女神様の教義を遂行しています」「女神様、聖書の内容の実体験を語ってください」「どうやったら、聖書のような事が起きますか?」「あのモンスターはどこで会えますか?」

 違う。それ聖書じゃない。同人誌よ。

 というか、何で…何で全員シスターの格好しているのよ。制服はどうしたのよ。

 しかもこのシスター服、うちで試作で作ったやつに似てるわ。

 生地はエナメルで、キャミソール風のロングスカートだけど、両方とも腰の辺りまで入ったスリットで、露出が凄い。フロントスカートが長くて重いのか、見えそうで見えない。

 てか、下着履いてなくない?

 一応、足の付け根近くまであるサイハイソックスを履いてるけど、逆に際立つわね。

 それと、手袋と一体型の付け襟の上着ってフェチが過ぎるわよ。ウィンプルまでしっかりエナメル生地で作り込まれてる。重くないのかな?

 とりあえず予備を含めて十着ほど欲しいわね。あれって指先とかところどころエナメルが剥がれたりするからね……って違うわ。いや、違わないんだけど…。

 私の趣味とアーサーの趣味が一致するのが、なんか嫌だわ……。

 あそこで祈ってる一際大きい人が先生かな?

 「先生も止めてくださいよ」

 「何故です? 私達はただドグマに従って祈ってるだけですよ」

 「そうです。我々は教師である前にクリス教の一信者なのです」

 「ラクリマ先生とファナック先生の仰る通りです。私達はただ敬愛する女神様に祈っているだけですよ」

 もう泣きたくなってきたわ。

 それにしても、どうしてアーサーは神官の格好なのかしらね?

 もうこのクラスはダメかもしれない。というか、アーサーはどうやってこの危機的状況(クライシス)を作りだしたのかしら? とりあえず、みんな目を閉じている間に跳んで逃げるしかないわね。


 無事に気づかれずに脱出出来たけど、あれは何とかしないとまずいわね。

 お姉様に相談してもいいんだけど、宗教弾圧とかで変に争いになったら本末転倒よね。

 こういう時は、エリーに相談しましょ。


 「…という訳なんだけど、どうにかならない?」

 「分かったわ。クリスちゃんが困っているんなら私が一肌脱ぐわね」

 そう言って徐に脱ぎ出すエリー。

 「だからってこの場で脱がないで欲しいんだけど」

 「あら、うっかり」

 うっかりで済んだら、警察はいらないのよ?

 「で、どうするの?」

 「そんなの簡単よぉ。エリー教に改宗させればいいの」

 それは解決にならないのでは?

 「そんな心配そうな顔しなくても大丈夫。他に興味を持たせればいいの」

 なるほど一理ある。

 「で、どうするの?」

 「まぁ任せなさぁい」

 不安しかないけど、私ではアーサー含め、あのクラスをどうにも出来ないからね。ここは信じて任せるしかないかな。


 数日後。

 再びJ組へ訪れると、みんな制服姿に戻っていた。私を見ても軽く手を振ったり、微笑む程度になっている。

 エリー凄い! どうやったのかしら?

 「ふふ。簡単よ。違うものに興味を持たせるって言ったじゃない」

 「うん」

 「だからぁ、男と男の熱い恋愛を伝播したの。最初は中々受け入れられなかったけど、徐々にね」

 なるほど。とんでもない事してくれたわね。まぁ、エリー教の目標がそれだから仕方ないわね。

 「だから、今はほら。あれ見て」

 廊下を困り顔で走るアーサーと後ろから『腐腐腐腐腐腐』と笑いながら追いかける生徒達がいた。

 まぁ、どうせすぐに元に戻るかもしれないけど、アーサーにはいいお灸になったんじゃないかしら?

 そして、私の予感は的中したようで、一週間もしたら、また元通りになっていたが、前ほど酷くは無くなっていた。

 ただアーサー一人を除いて。


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