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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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06 公爵領の発展具合がやり過ぎてる件について


 翌日―――――


 今日は生憎の曇り空。どんよりとした重ったるい雲が、私の心模様と重なってるわ。折角、やる気を出して気合の入った綺麗な青い色のドレスにしたのに、この天気じゃあ魅力半減よね。


 そして、公爵領へ行くのは案の定この四人。

 朝から胃を抑えてるお父様。瞼を擦りながら半覚醒状態のお姉様。私と行けることを喜ぶあまり顔が締まらないメアリー。そして今すぐにでも部屋に戻りたい私の四人だ。


 「ねぇお父様。何で今回私が呼ばれたのか気になったのだけれど。もしかして、私を護衛代わりにしているわけじゃないでしょうね?」

 「ははは…。ソンナコトナイデスヨー」

 「不自然なくらい棒読みなのだけど」

 「分かった。今回、サマンサは好きなだけ食べて構わない。だからついてきてくれないか? 私とクリスの二人だけだとちょっと不安なんだ」

 いつもはお姉様がいると不安とか言い出すのに、今回はお姉様がいる方が落ち着くとは、アンバーレイク公爵領とはいったい……。

 しかし、食べ物につられて上機嫌のお姉様。

 「あら、だったら喜んでついていくわ」

 朝から随分と食欲旺盛ですね。

 「では、ちょっと軍資金をレイチェルに借りてくるからちょっと待っててもらっていいかな?」

 ここにきてお父様はおこづかい制が現実味を増してきたわ。


 お父様が戻ってくるまでの間に、もう一つの疑問をメアリーにする。

 「ねぇ、メアリー」

 「なんでしょか、クリス様」

 「そんなに武器持っていく必要ある?」

 「何を仰るんです! 万が一ということもありますので、備えあれば憂いなしです」

 「そ、そうなんだ。侵略と間違われなければいいね」

 弁慶みたいな状態になってるメアリーの重量で馬車が傾かないか心配だわ。

 本人がいいならいいけど、もし疑われたら速攻で見捨てるわよ?


           *      


 馬車に揺られて一時間半くらい経った。

 もう既にアンバーレイク領に入っていたのだが、暫くは長閑な牧歌的な風景が広がっていた。しかし、公爵領・領都エーレクトロンに近づくにつれ、私とお姉様とメアリーが窓の外を目を皿にして食い入るように眺めてしまう。


 というか、メアリーには離れて欲しい。装備している武器があちこちに当たって痛い。それに、こっち側に寄ると重さで馬車が傾く傾く。

 「あの、あんまり片方に寄られると重さで馬車の車軸が壊れます」

 御者のおっちゃんから注意が入った。当たり前だよね。メアリーも御者台に乗ればよかったのに。


 まぁ、でも気になってしまうのは仕方ない。

 街道沿いの線路には汽車が通り過ぎ、その横の川向こう側には大量の工場が連なっていた。産業革命時代のロンドンというよりは、前世での川崎とか千葉とか鹿島みたいな風景が広がっていた。生成AIで作った景色かな?


 黒い煙で霧が広がっているわけでもなく、空気もそこまで汚くない。まさか、脱硫装置とか下水処理とかちゃんとしてるんだろうか。

 あまりの違和感ありありの光景に圧倒されていると、馬車の速度が落ちてきた。

 何事だろうと前を見ると、渋滞していた。渋滞対策までは出来ていないんだなぁと思った。

 一、二分待つと進み出した。交差点らしき場所の上を見ると信号がついていた。

 渋滞じゃなくて信号待ち。それも車じゃなくて馬車でなんて、なかなかない経験だよね。

 それにしても、御者のおっちゃんも戸惑いながらも周りに合わせて馬を操っていた。プロだね。


 そして、さらに進むこと十分。中心街のような場所を走っているのだが、幅の広い道路。その道の真ん中に路面電車。周りのビルも高い。流石にニューヨーク並みの高層ビルはないけれど、一番高いのでも十階は超えてるんじゃないだろうか。

 圧倒されっぱなしのまま、北上し、目的地のアンバーレイク公爵家へと着いた。

 圧倒的カルチャーショックで、疲れてしまった。今日はこのまま一回止まって休んだ方がいいんじゃないだろうか?

 そんな提案をしようと思って振り返ると、みんな固まっていた。あのお姉様でさえも。


           *      


 「ねぇ、うちの領ってそれなりに発展してると思ったんだけど、今までの見たら自信なくなってきたわ」

 全面的に同意ですお姉様。

 「これってもしかしてだけど、ワザワザ呼び出されてマウント取られる流れなのかしら? そしたら暴れてもいいわよね」

 「いいわけないじゃないですかサマンサ様。あの技術力ですよ? 簡単に取り押さえられちゃうんじゃないですか?」

 全身武器で武装した人が言う言葉じゃないね。未だに武器が当たってるから早く武装解除して欲しいな。


 そんなこんな阿呆な事を言っているうちに、アンバーレイク公爵家の長い長い通路を抜けて、屋敷の玄関前に到着した。

 「ほら、お父様着きましたよ。覚悟決めてくださいよ」

 腕で大きくバツを示している。今更そんなのが通用するわけないでしょうに。

 そんな事をしていたら、お姉様とメアリーに両の腕を掴まれたお父様が馬車の外に引っ張り出された。



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