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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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28 たい焼き

 

 その後は特にイベントもなく()()にこの日は終わった。

 いろんな事が気になって胃が少し重い気がする。

 「じゃあ邪魔が入る前に行きましょうか」

 私の手をぐいっと掴んで足早に教室を出る。後ろで何か声が聞こえた気がするが、それしか分からなかった。

 校舎を出ると、今まで意気揚々と歩いていたソフィアが止まった。

 「どうしたの?」

 「やっぱり。ソフィアお姉様、私を置いてどこへ行くおつもりです?」

 マーガレットの方が少し上手だったようだ。ソフィアの思考なんてお手の物。どういう行動に出るか分かっていたのだろう。先んじて昇降口出口に仁王立ちしていた。

 「いや…クリスがたい焼き屋さんに連れていってくれるって言うから」

 「でしたら、私が一緒してもいいですよね」

 「えぇ……そうね…」

 声のトーンが下がる。そして私を見るが、私は何もしていないわよ。

 「あらぁ、こんな所で何をしているのぉ?」

 今度は後ろからエリーが来たようだ。

 「ちょっと聞いてよエリー。クリスったら勝手にソフィアお姉様とデートしようとしていたのよ!」

 だからデートじゃないって。

 「あらぁ素敵ねぇ。でもぉ、クリスちゃん、デートって顔、してないわよぉ?」

 「「え?」」

 私の顔をしげしげと覗き込んだって何も出ないわよ?

 「じゃーあ、私もご一緒してもいいかしらぁ?」

 「いいわよ」

 マーガレットが勝手に了承する。まぁ、私はいいんだけどさ。

 ソフィアは引きつった笑顔をして、震えた手でサムズアップしていた。

 「(……次回こそは……)」

 まーた何かボソボソ言っているわね。

 「ソフィア、早くしないともっと人が増えるんじゃない?」

 「! そ…そうね。じゃあ、早く行きましょう」


 そんなこんなでアンさんオススメのたい焼き屋さんに到着した。

 『たい焼き・ブラッククローバー 』と看板に書いてあった。これどう見てもアンさんの関係者がやっているでしょ。

 まぁ、アンさんがここにいないならどうでもいい事なんだけどね。

 今の時間でもそこそこの人が並んでいる。

 暫く並んで待っていると、漸く私たちの順番が回ってきた。

 待っている間に看板のメニューを見ていたけど、結構いろんな種類があって迷う。

 クリームですら、カスタードと豆乳クリームにクリームチーズとかがあるし、季節限定や、お餅入りまである。悩む。悩むけど、ここは自分の直感を信じて…。

 「パンプキン豆乳クリームでお願いします」

 「あいよっ! 140カラットだよ」

 「はい」

 「はい丁度ねー。はいパンプキン豆乳ねー」

 一個一個が結構大きい。暦の上では秋だからね。秋っぽい季節物を選んでみた。

 みんなは何を選んだのかなー…………。

 エリーは大きめの紙袋に並々と買っていた。

 ソフィアは大きな紙袋二つ。マーガレットは小さめの袋を一つ買っていた。

 もしかして、一個だけ買ったのは私だけ?

 「あらぁ…結構買ったのね?」

 「エリーも人の事言えないじゃない」

 「私はぁ、うちで待っている子達にね」

 「私もカリーナの分と合わせて四つね」

 「わ、私だって、みんなの分も合わせて買ったのよ!」

 「ホントにぃ?」

 「ホントよ。というか、自分の分しか買ってないクリスの方がどうかと思うわよ」

 「そうね。そこまで思いが至らなかったわ。ごめんね」

 「い…いいのよ。私が買ったから」

 物凄くばつが悪そうな顔をするソフィア。


 「ま…まさかソフィア様が私たちの分まで買ってきてくれるなんて!」「成長されましたね………ステラは嬉しく思います…」

 シフォンさんが驚いて腰を抜かし、ステラさんが感極まって泣き出してしまった。普段のソフィアがどういう感じなのか分かるわね。

 「ちょっと大袈裟じゃないかしら?」

 「普段の行いって大事ですよね」

 「ぐっ…そうね。反省するわ」

 プレオさんがソフィアにとどめを刺した。

 「ねぇマーガレット? どうして私の分は買ってこなかったのかしら?」

 「え? だってマトリカリアは太るからって最近控えてるじゃない」

 気まずそうな顔をするヨメナさんと、呆れた顔をしているデイジーさん。

 「あ、あの…私は大丈夫ですので、マトリカリアさんどうぞ」

 「あぁ…カリーナ様はなんて心が広いのかしら。それに比べてあんたは…」

 「もらえなかったからって僻むんじゃないわよ。だったら余計な事言わなければいいじゃない!」

 こっちは収拾がつかないわね。

 とりあえず、ソフィアの買ってきた大量のたい焼きをみんなに配る。

 「ちょっとクリス、何勝手に配ってんのよ」

 「え? みんな用に買ってきたんでしょ? 袋入れっぱなしだと蒸れちゃうし」

 「うぐ…」

 「やっぱり…」

 シフォンさんが呆れた目でソフィアを見る。

 「わ…私が配りたかったの! 本当よ」

 「そうなんだ。ごめんね」

 「いいわよ。はぁ…(後で買ってこないと…)」

 「え? なんて?」

 「何でもないわよ。ほら、お茶淹れてよ」

 「はいはい」

 「あれ?」

 「どうかした?」

 「二袋買ったんだけど、一つ足りない」

 「メアリー?」

 「な…ななな何ですか?」

 「今後ろに隠したの出しなさい」

 今回は素直にスッと出すメアリー。

 「誠にごめんなさい」

 「ソフィア、メアリーは一個でいいからね」

 「分かったわ」

 「なっ!」

 やっぱり普段の行いって大事よね。


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