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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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27 教室にて


 結構時間を取られてしまったな。

 やっとの事で教室へ戻ると、もう既に何組かのグループが出来上がっていた。もしかしてこれ学園でのスタートダッシュに失敗した感じかしら?

 そう思ってたんだけど、ソフィアが私に気づいて近づいてきた。

 「あら、遅かったわね………」

 言い終わる前に私の周りをスンスンと匂いを嗅ぎ始める。犬かな?

 「クリス何か食べたでしょ?」

 「なんで分かるの?」

 「匂いで分かるわよ」

 何それこわい。

 「ずるいわ」

 ずるいって言われてもなぁ……そうだ。

 「ごめんて。ちょっと先生と話し合ってた時に出されたから食べただけよ」

 「むぅ…」

 「それで、王都に有名なたい焼き屋さんがあるらしいから、終わったら一緒に行きましょ?」

 「それって放課後デートよね? いいわ。許してあげる」

 別にデートじゃないんだけど、変に言ってまたぞろ不機嫌になっても困るから否定はしないでおく。


 「あ…あの…クリス様?」

 ソフィアの後ろに何人かの生徒がいた。

 「はい。どうかしましたか?」

 「私、ファンです」

 ファン?

 「私もです。いつもお世話になってます」「僕はオパルスから進学しました」「クリス様と同じクラスになれて良かったです」「クリス様の為、勉学に励みますね」

 話を聞くと、小さい頃から勉強に励んでここに入学できた事が嬉しかったようだ。まぁ、うちの領は学費無料だしね。やる気ある子や成績優秀なら進学やいい職業につけるしね。それに子供達に負担がかからないよう、親御さん達にも生活が苦しくならない様にしてるし、なんならスキルアップの為の夜間学部あるし。

 結婚して子供作ってもいい環境づくりには細心の注意を払っているからね。独身だからって税金高くなんてしてないわよ。

 でもまぁ、こうしてうちの領の子達から感謝されるのはいいわね。いつもは別の意味で感謝されてるし………何人かそんな感じのニュアンスも子もいたわね。


 「あ…あのー……」

 「あ、はい。あ、トミー様、カイラ様どうかしましたか?」

 「私達、あなたがあのクリスティーヌ様だと知らなくて…」

 「えぇ…。まさかあの本と同じ見た目だとは思わなくって……」

 本? 本とな? その本とはいったい?

 「あの……もし、差し支えなければ…」

 何? サインでも欲しいんですか? 申し訳ないけど今この場所ではちょっと…。

 「私達も出版しても宜しいでしょうか?」

 ズコッとコケてしまったわ。入学早々何を言っているのかしら? 予想外の答えだわ。

 「実は私達こういうのに興味がありまして…」

 「是非描いてみたいなと思ったんですの」

 「いいんじゃない。ねぇクリス」

 「どうしてソフィアが許可するのさ。まぁいいけどさ」

 「本当ですか。ありがとうございます」

 「描いたら、是非とも最初に読んで頂きたいです」

 私の思ってた学園での仲間像が違う。

 いつの間にかトミー様達と他の生徒達で盛り上がり始めた。

 「あの…」

 「はい。どうかしましたか?」

 「私のウチ、印刷所やってます」「あ、私何冊も描いてます」「僕も」「俺も」「壁サーです」

 次々と声をあげる生徒達。

 「本当ですか? 是非とも描き方を教えて欲しいんですが…」

 「勿論です」「仲間が増えることは嬉しいですね」「みんなでクリス様を愛でましょう。愚腐腐腐腐腐腐腐」

 いつの間にか、私から離れていってあやしい話で盛り上がっている。私をダシにしないでちゃんと仲間に入れて欲しいんだけど。


 「ホントクリスって人気よね」

 「あれ人気っていうんか?」

 「描かれてるキャラランキングではずっと一位だからいいじゃない」

 「よくないよ」

 がっくり項垂れながら自分の席へ戻ると、後ろから声を掛けられた。

 「クリスティーヌ嬢は随分と人気があるんだね」

 「私あなたの人気に嫉妬してしまいそうですわ」

 「…………」

 イヴ様だけ、妖しい微笑みで私を見てくる。そしてとんでもないハンドサインをする。

 「ちょ!」

 「どうかしたかい?」

 「い…いえ……」

 イヴ様もそっち側の人間なんですね。寧ろ一番ヤバそうなタイプだわ。

 頬に手を当てうっとりとした表情で私をずっと凝視している。

 「あの…聞いておりますの?」

 「え? あ、ごめんなさい。ボーッとしてました」

 イヴ様が気になって話が耳に入ってなかった。

 「もう。私の話を聞き逃す方なんて初めてですわ」

 「すいません」

 「まぁいいですわ。今度お茶会を開こうと思いますの。是非とも参加していただきたく…」

 「あ、はい。分かりました」

 「……え? 宜しいんですの?」

 変なことを言うね。だって参加して欲しいんでしょ?

 隣を見るとソフィアが『もう遅い』みたいな顔をしていた。何かあるのかな?

 「では、近いうちに招待状をお送りいたしますわぁ」

 隣のシェルミー様もイヴ様も特に変わった様子はない。強いて言えば、イヴ様がずっと獲物を狙う蛇の様にしか見えないけど、それは最初からだからだしね。


 「おや、何やら皆さん盛り上がっていますね」

 他の生徒達と話をしていたレオナルドが戻ってきた。

 レオナルドの席に座っていたシェルミー様が自分の席へ戻る。

 「いいえぇ。皆さんと親睦を深めていたんですの。ねぇ?」

 「えぇ」

 「そうですか。それはいい事ですね」

 そこでソフィアがいつも通り、私の袖を引っ張る。 

 「(ちょっと、クリス正気?)」

 「(何が?)」

 「(知らないの? ジルの開くお茶会がどんなのかを)」

 「?」

 「(はぁ…。その顔だと知らないのね…)」

 「何をこそこそ話していますの?」

 「何でもないわ」

 ソフィアはプイッとそっぽを向いて黙ってしまった。え、何? 何かヤバイ催しなの? ちょっと教えて欲しいんだけど。ねぇ、ソフィアさん?

 「クリス、顔青いけど大丈夫?」

 このタイミングでカリーナちゃんが戻ってきた。カリーナちゃんに聞いても分かんないよね…。


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