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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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26 お姉様の趣味


 しかし、なんだかんだ自由な学園よね。

 教室へ戻ろうと歩いていると、またぞろ声を掛けられた。

 「そこの生徒止まりなさい」

 「はい?」

 振り返ると、なんか軍服みたいな改造をした制服を着た人が二人いた。左腕には『生徒会』と書かれた腕章を付けていた。

 「そこから先は関係者以外立ち入り禁止だ」

 「あ、そうなんですか。ごめんなさい。入ったばかりで場所が分からなくて」

 「ごめんで済んだら意味がないではないか。規則は規則だ。罰を受けてもらおう」

 えぇ! 罰って何よ。そもそも立入禁止の看板とかないし。

 というか、こんなところでこんな意味不明な理由で時間取られたくないのよね。

 ……相手は二人。見たところ大して強くなさそうだし、ちょっと眠ってもらおうかしら? でも顔覚えられて後で連行されても面倒だし。どうしましょ。


 「あら、こんな所で何をやっているのかしら?」

 立入禁止と言われた方の奥からお姉様が人を引き連れやって来た。そしてお姉様以外の人達は、何故か一斉に両脇にはけて後ろに腕組み待機しだした。

 「はっ! この者が我々生徒会室に無断で立ち入ろうとした為、引き止め罰を与えようとした所であります」

 よく見たらお姉様の制服も改造されているじゃない。軍服ワンピースっぽい感じになっている。これはこれでいいわね。……ってそうじゃなくてこの状況はなんなのよ?

 「ふーん……そう」

 なんて底冷えしそうな声を出すんですお姉様?

 「あの…道を間違えてしまいまして……」

 「貴様! 勝手に喋るな! 発言を許してはいないぞ」

 「そうだ。生徒会長閣下の前で無礼な事は許されないぞ」

 えぇ…。なぁにこれぇ……。お姉様の趣味なんでしょうけど、何でこんな軍隊みたいな感じになっているのよ。

 その張本人のお姉様は薄っすらとした笑顔で口を開く。

 「あなた達の忠実な態度は褒めてあげるわ」

 「「はっ! ありがたき幸せ」」

 生徒会独自のポーズなんだろうか。地面に片膝をつけ、片腕を前に突き出し、頭を下げて謝辞を述べた。

 「でもね。その子、私の妹なの」

 ピタッと固まる二人。

 「い……妹御で…ございますか?」

 「そうよ。私のかわいいかわいい妹よ。顔を見たら分かるでしょう?」

 「いえ…その……」

 まぁ、言うほど似てないわよね。

 「あら? 分からなかったの? こんなにかわいい私の妹に勝手に何をしようとしたって言ってたっけ?」

 「ま……誠に申し訳ございません……どうか…どうかお許しを…」

 「い…以後気をつけます。わ…我々は罰を受けさせていただきたく存じます」

 どんだけ恐怖政治してるのよ。後ろで控えている生徒達も表情が硬くなっているわ。

 「そうね。いい心がけだわ、反省は大事よね」

 「は…ははははい! どうか、どうか一番でお願いしたく…」

 「まぁ、すぐに自らの過ちを認めた点は評価しましょう」

 顔を上げ、希望を見出す二人。

 「でも、私のかわいい妹に気づかなかった事。勝手に罰を与えようとした所を鑑みると、六番は……厳しすぎね。……五番にしましょう」

 「そんな! もうこんな過ちはいたしませぬ。どうかどうか!」

 「だぁめ。あなた達勝手に色々やってるでしょ? それも含めての五番よ。あなた達連れて行ってあげて?」

 「「「「はっ!」」」」

 生気の抜けた真っ白な肌で目は虚ろ。口はぽかんと開けたまま。脱力したまま無理矢理起こされ、半ば引きづられるように他の生徒会の人達に連れて行かれた。

 連れていかれる途中で我に気づいたのか、

 「離せー! 死にたくない! 死にたくなーい!!」

 廊下まで響く声で必死に懇願している。

 かわいそうだとは思うけど、変に手を出して私にまで被害が及んだら嫌だものね。まぁ、聞く耳持たなかったのが悪いんだから仕方ないと思うけど、五番とか六番って何よ……。


 「ごめんねクリス。うちのバカどもが迷惑かけちゃって」

 「いえ……」

 「そんな事より、学園は慣れたかしら?」

 「まだ入ったばかりなので」

 「そう。変な先生や生徒がいたら言ってね? 処理するから」

 処理って何ですか? 何をするおつもりですか?

 「じゃあ私はやる事がまだ沢山あるから行くわね。……そうそう、クリスは生徒会室にいつでも自由に入ってきていいからね?」

 「え…えぇ…機会があったら」

 「待ってるわ」

 そう言って、今度こそ去っていった。お姉様の後ろを大勢の生徒会メンバーが私に敬礼した後、綺麗に整列して付いていった。

 ……ここには絶対に来ないようにしましょう。そう心に決めたのだった。


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