20 クラス発表①
翌日。
「あーこれよこれ。私求めてたのこういうのよ。もうサイコー」
朝からテンション高いお姉様が、普通の朝食に感激していた。
別に大したもの作ってないんだけどな。
焼き魚にだし巻き卵と味噌汁。あとは漬物くらいね。ヨメナさんが朝から大絶賛していた。
「何言ってるのよ。このご飯の炊き具合完璧よ。ふっくらツヤツヤで粒が立ってるのよ。文句なしだわ」
「ホント。うちじゃこのツヤがもう一歩なのよね」
「ルームシェアしてよかった。お米最高」
朝からテンション高い白米ジャンキー達が朝から褒めちぎって、何杯もおかわりしていた。そんなに食べて眠くならないのかしら?
「特にこのお漬物最高ね。何杯でもいけちゃうわ」
「あ、それはカリーナちゃんが漬けたのよ」
「何ですって!」
「ひっ…」
お姉様が勢いよく反応するからカリーナちゃんがビクッとしちゃったじゃない。
「これは一日二日で出来るようなものじゃないわよ。プロの味だわ。ねぇ、これ売ったら儲かるわよ」
「私もそう思うわ。前は全然食べなかったけど、今食べると懐かしい感じするもの」
「カリーナもクリスに負けず劣らず料理の才能があるのね」
三人とも大絶賛だ。マーガレットとお姉様はしみじみとしている。
確かに美味しいのよ。お茶請けとしても優秀だと思う。
そんなカリーナちゃんは真っ赤な顔で俯いてしまった。
「で…でも地味じゃない?」
「大和撫子って感じでいいと思うけどな」
「ヤマトナデシコ?」
あー、カリーナちゃんには分からないわよ。
「まぁ、要するに魅力的な女性って事よ」
そうだね。ロングストレートの黒髪に少し青みがかった黒目だし、肌も白いし、何より奥ゆかしくて淑やかで。それに芯も強いしね。なんていうか才色兼備って感じよね。まぁ、私と同じで男なんだけどさ。
「そういえば、私が部屋に入った時にはもういないんだもの。何時から起きてたのよ…」
「まぁ、朝ご飯の準備ありますし」
「私が起こしてあげたかったのに…」
お姉様が早起き出来た事自体驚きなんだけどね。学園に来て少し変わったのかしら?
まぁ、他の面々もご飯が出来る頃には起こさないのに勝手に起きてきたものね。そこは感心だわ。メアリー以外。
結構な量作ったはずなんだけど、やっぱり人数が多いからか、全部無くなってしまったわ。
「はぁ~食べた食べた。ごちそうさまー」
「今日クラス発表よね?」
「クラスガチャってやり直しききます?」
「マーガレット、ガチャって言い方は流石に…」
「一理あるわね。私も気に入らなかったら、引き直したいわ」
「ソフィアまで何言ってんのよ」
口の周りにご飯粒つけて、ドヤ顔しないでよ。みっともないわね。
「でもさぁ、やっぱり一緒のクラスになりたいじゃない?」
「大体ああいうのって成績順か、平均になるようにするもんでしょ。人数多いし、一人でも知り合いがいたらラッキーくらいに思わないと」
「じゃあクリスは私と一緒じゃなかったらどうするのよ」
知らないよ。そんなこと言われても。
でもまぁ、スミカ様が何かしら手を回していると思うから、私とソフィアは一緒になりそうね。
「じゃあ…もし一緒にならなかったらどうするの?」
「そうね。決めたヤツに産まれてきた事を後悔させてやろうかしら」
「やろうかしらじゃないわよ。物騒ね」
「バカな事言ってないでそろそろ行ったらどうかしら? もう発表されている筈よ」
「え? あら、もうこんな時間」
「じゃあ行きましょっかソフィアお姉様ー」
みんな食べっぱなしで行こうとするので、せめて食器だけでも流しに持っていかないと。
「あ…」
カリーナちゃんも同じ考えだったようだ。手が触れてしまった。
「あ、クリス様、カリーナ様、片付けは私達でやりますので」
「なんかすいません」「申し訳ないです」
「いえいえいいんですよ。仕事ですから」
どうにも今だに庶民感が抜けないのよね。
ジャケットを羽織り、バッグを持って玄関を出る。
流石に全寮制だと、エレベーターが渋滞するわね。なかなか四階まで来ない。
やっと乗れたのだけど、各階で止まるから中々進まないし、無理矢理入ってくる人もいるからキツキツだ。
やっとの事で、一階へ到着した頃には身も心もヨレヨレだった。
「毎朝これはきついわね」
「少し時間ずらしましょう。今はちょっと早いくらいだし」
「そうね」
階段を使うって発想は出ないんですね。
まぁ、私としてはあのくらいの高さならひとっ跳びでいけちゃうんだけど、流石に人目もあるしね。スカート履いた状態だと、なおの事出来ないわ。




