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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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17 ルームシェア②


 「あら、漸く収まったのね」

 一体誰のせいでこうなったと思ってるんですかねソフィアさん?

 そんな事を全く意に介さないソフィアはあっけらかんとした顔で話を続ける。

 「それで、今日の晩御飯何?」

 「何がいいの?」

 「肉!」「肉!」「肉!」「肉!」「私は何でもいいわ」「私もクリスの手料理なら何でも……」

 マーガレットとカリーナちゃんは控えめに何でもいいと言ってくれたけど、ここぞとばかりに「肉!」と女子らしからぬ言い方をしたのは勿論ソフィアとメアリーだ。意外なことに、シフォンさんとマトリカリアさんも「肉!」と言っていた。ここに来てから少しリミッターを解除したのかしら?

 「分かったわ。下ごしらえとかも含めて二時間くらいもらうわよ」

 「いいわよ」

 リビングのテーブルの上には既にジェンガとかすごろくみたいのが置かれていて、既に準備万端のようだ。

 そのまま遊んでいてくれると助かるわ。絶対にキッチンには入ってこないようにね。

 マーガレットがその事に気づいたのか、こっちを見て軽く頷いた。カリーナちゃんは手伝わなくていいのかとそわそわしていたけど、そのままソフィアをそこに繋ぎ止めていてくれる事が最大の手伝いよ。

 何人かのメイドさん達も参加しているのは、下手にソフィアが手伝うと言い出さないようにする為ね。初日から寮を爆破させるわけにはいかないものね。


 ……さて、七時にご飯を食べるとして、そのくらいになるよう調整しながら作っていきましょうかね。

 さて、何を作ろうかしら? 顎に人差し指を当て考える。

 「クリス様、お手伝いいたしますよ」

 そう言ってくれたのは、ヨメナさんだ。その後ろには、イータさんとステラさん。

 「ありがとうございます。お願いしてもいいですか?」

 「何を仰います。本来なら私達がやるべき事ですよ」

 「そうですよ」

 「うちのソフィア様がすいません………」

 「いやいいんですよ。私も好きでやっているので…」

 ステラさんだけがやたらと申し訳なさそうな顔しているけど、そんな気を使わなくていいのに。

 「それで何をお作りに?」

 「うーん。ソフィアの満足する肉料理となると………」

 冷蔵庫の中を確認する。誰が買い出しに行ってくれたのか分からないけど、多種多様な食材が入っている。

 「初日だし…お祝いも兼ねるから………」

 ローストビーフ、チューリップの唐揚げ、ステーキ辺りかしらね。肉だけじゃ栄養偏るからサラダチキン盛り盛りのサラダとか作って………、主食はどうしましょ。ルーローハンとかキンパとか作ればいいのかな?

 山盛りのミートボールとフライドポテトもいいかもしれない。洒落たもの作っても秒で無くなりそうな気もするので、まず量を確保できるものを作ろう。

 「嫌いなものとかあります?」

 「ソフィア様は特にないですね」

 「うちのマーガレット様も変わったものでなければ」

 「カリーナ様は食が細いので重くなければ」

 「特に問題はないかな。ローストビーフ、ミートボール、唐揚げ。サラダチキンでサラダを作って、余裕があったらステーキとフライドポテトを作りましょ。主食はどうします? 肉料理ありますけど…」

 「それだけあったら、パンとかでいいんじゃないでしょうか?」

 「だよねぇ…」

 「まぁ、今日はお祝いって事でデザートも作った方が良いんじゃないですかね?」

 「あ、そっかぁ…」

 これは時間との勝負だなぁ。

 「とりあえず作っていきましょうか」

 「「「はい」」」

 


 「クリス様、手際良すぎませんか?」

 隣で一緒に作業していたヨメナさんが目を見開き驚いていた。

 「まぁ、長くやってるんで。慣れですね」

 「お貴族様なのにですか?」

 「まぁ、うちは結構変わってるんで」

 貴族が料理する事自体なかなか無いようだし、驚かれてもしょうがないかな。

 「そういえば、掃除洗濯裁縫とか何でも出来ますよね?」

 話に加わってきたステラさんが言う。

 「そうですね」

 「うちのお嬢様も見習ってくれれば…」

 「ははは…」

 「うちのお嬢様はその辺一通り出来るようになりましたね。お嫁さんにどうですか?」

 イータさんがカリーナちゃんを推薦してきた。一考の余地はあるわね。

 「何言ってんのよ。クリスは私のお嫁さんになるのよ。ねー?」

 いつの間にかキッチンカウンターに頬杖付いていたソフィアが冗談を言う。

 「味見したいのは分かるけど、まだ何も出来てないよ」

 「違うわよ。いや、違わないけど……」

 「?」

 「ソフィア様、こちらをどうぞ」

 「さっすがステラね」

 ステラさんがお茶のおかわりと追加のお菓子を渡した。なるほど。

 でも、ここでそんなにお菓子たべたら夕飯食べられなくなるわよ? 少しは我慢してもらわないと。

 「でも、もう少しクリスのメイド姿を目に焼き付けておきたい」

 散々見ているでしょうに。何で今更?

 「よく、男の人がうなじ見てドキッてするって言うのよく分からなかったけど、今なら分かるわ。これは確かにくるものがあるわね。ごちそうさま」

 料理中に髪の毛が入らないよう。ポニーテールにしているからうなじが出ているけど、そんなにいいものなのかな? というかごちそうさまって何?


 ある程度料理ができてきた頃にチャイムが鳴った。

 ビシューさんが玄関に行ってドアを開けるなり「げ!」と女性らしからぬ声を上げていた。

 ビシューさんがそんな声を上げるって事は、来た人物は一人しかいないわね。

 「やっほー。お姉ちゃんが遊びに来ましたよっと」

 ニコニコしたお姉様が疲れ切ったメイドさん三人を引き連れてやってきた。

 「あれ、お姉様どうしたんですか?」

 「どうしたもこうしたもいい匂いがするんだもの。居ても立ってもいられなくなって来ちゃったのよ」

 どんだけ嗅覚がいいのよ。

 「いや、この部屋の上が私の部屋なのよ」

 あぁなるほど。どおりで……………もしかして、こうなるのが分かってて上の部屋に住んでるんですかね?

 「まぁ、いっぱい作ったんで」

 「あらホント?」

 「ソフィアとメアリーが了承すればいいんじゃないですか?」

 「どういうことよそれ」

 お姉様はテーブルゲームに興じるソフィア達の所へ行って何やら二、三言葉を交わして戻って来た。

 「いいって」

 「じゃあ出来るまでそっちで待っていてください」

 「分かったわ」

 軽く鼻歌交じりでお姉様が向こうへ行ったタイミングでお姉様付きのメイドさんの一人、フィジーさんが申し訳なさそうに謝ってきた。

 「すいませんクリス様。サマンサ様が勝手に…」

 「別にいいわよ」

 「これから多分ご飯の時は突撃するかと…」

 「それはそれで大変ね」

 「嫌ならガツンと断ってもらっていいですからね?」

 「私にそれが出来るわけないじゃない」

 「ですよね…」

 一体お姉様はこの三人とどんな生活しているのかしら?

 「とりあえずお疲れでしょから、あっちで休んでていいわよ」

 「お心遣い感謝します」「クリス様が主人なら良かったのに……」「ちょ、ヒナナ」「私も同感よマーブル」「フィジーまで……」

 そんな三人はソファに座りボーッとしていた。昨日までうちに居たはずなんだけど、昨日の今日で何をそんなに疲れる事があったのかしら?


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