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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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14 初日から呼び出し


           *      


 「皆様、クリスティーヌ嬢をお連れいたしました」

 私が案内された場所は大勢の教師がいる会議室だった。

 日曜夜九時にやってるドラマの無駄に広い会議室って現実にあるのね。

 広い部屋の中央に円形のテーブルがあり、その周りに何人もの教師がいた。

 入学早々断罪されるのかしら?

 「待っていましたよ。クリスティーヌ嬢」

 「あの…私は何で呼ばれたんでしょうか?」

 「あぁ、そんな身構えなくていいですよ。別に咎めるために呼んだわけではありませんので」

 「はぁ」

 そんなはいそうですか…って納得できないわよ。こんな重苦しい空間でリラックスしろなんて土台無理な話よ?

 「皆さん、そんな眉間に皺を寄せていたらクリスさんも怯えてしまいますよ」

 「そ、そんなに怖い顔していませんよ」「そうです。緊張しているのは、寧ろこっちですよ」「我々の評判を落とす様な物言いはやめてください」「まぁ、確かに顔は強張っていましたがね」「そうですね。小皺が深くなってしまったらもともこもありませんからね」

 一瞬で場を和ませたのは、ソフィアのお母様スミカ様だった。

 「あれ、どうしてソフィアのお母様がこちらに?」

 「私ね、ここの前副学長だったの。結婚を期に引退したんだけど、ソフィアが入学するから、私も期間限定で復職したのよ」

 「我々としては、ずっといてもらいたいのですがね」

 横に座る学長が眉をハの字にして言う。

 きっとスミカ様的にはソフィアが、学園を爆破させないか監視の意味も込めているんだろうな。


 「では、サディ先生例の物を」

 「はい」

 私の前に三枚のテスト用紙が置かれた。

 「実はですね、それぞれ最後の問題は普通は解けない筈のものなんです」

 「えっ!?」

 「これは、昨年サマンサ嬢。あぁ、あなたのお姉様が持ってきた夏休みの宿題から出題していまして」

 「この問題は、我々教師や研究者にとっては恐ろしく画期的な内容だったのですよ」

 「そして、持ってきた当の本人であるサマンサ嬢は知らないという」

 「そこで、この問題を出せば出会えるのではないかと思い、捨て問題として出題したのですよ」

 いろんな先生方がそれぞれに口を開く。

 そんなもの入学時のテストで出しちゃダメでしょ。

 「そして、全問正解したのは、クリスティーヌ嬢。あなただけなのです」

 「えっ?」

 「まぁ、こちらの問題はもう一人ソフィア嬢も正解していましたが、他はいませんでした」

 「そして、全てのテストで態と50点に調整するというのは、中々できるものではありません」

 うわぁ…。態とやった事が裏目に出てしまってる。

 「どうしてこういう事をしたのかは分かりませんが、あなたはレオナルド殿下の婚約者でもありますよね?」

 「はい…」

 「そんなお方をレオナルド殿下と別のクラスになんて振り分けられません」

 いらない配慮だわ。余計な事しなくていいのに。

 「まぁ、それは明日発表いたしますが、本題としましては、どうか我々にご教授願えませんでしょうか?」

 「はい?」

 「あなた様は、我々よりずっと進んでおられる。我々の探究心にお付き合いいただきたい」

 一同、一様に頷く。

 別にこんなの前世でちゃんと勉強してたら出来る内容よ? 正直私よりソフィアの方が上だと思うんだけどなぁ。

 「学長、思ったのですが、レオナルド殿下と一緒の教室にしたら我々に教えていただく時間が取れないのでは?」

 「なるほど。グリーヴァ先生の言う事は一理ある。では、うちのクラスに入れるといる事でいいですかな?」

 「ジギー先生いいわけないでしょ。抜けがけしないでよ。おじさん先生より若い子の所がいいに決まってるでしょ」

 「何が若いだよ。私とそんなに変わらないだろうデランジェ先生は」

 「争うのは良くないですよ。ここは間をとって私のところにしましょう。そうしましょう」

 「レベッカ先生、間とは?」

 「全く。こういうのはちゃんと若い先生でないと。ねぇ?」

 「ガゼット先生がいいなら、僕でもいいですよね?」

 「ジグソウ君は去年入ったばかりじゃないか。却下だ」

 「なっ!?」

 うーん。まさに会議は踊るだわ。次から次へとみんなそれぞれ自分の意見を通そうとするばかりで建設的な話ができてないわね。

 正直どこでもいいんですよ。皆さん教師にしては恐ろしく美形なんでしょうけど、途中から自分のがかっこいい、美人だって話になっているんですが、帰ってもいいですか?

 「あなた達、そんな自分の事ばかり言っていては解決しませんよ?」

 「では、スミカ先生はいい案があると?」

 「ええもちろん。私の娘ソフィアと同じクラスにすればいいのよ」

 「それこそ職権濫用じゃないですかー」

 「あら、あなた達にとっても悪い話じゃなくてよ? 確かにソフィアは二つ間違えたけど、一つは合ってるワケじゃない? それにうち(アンバーレイク領)の繁栄具合知ってるでしょ?」

 「なるほど…。では、ソフィア嬢にもご参加いただけるなら、我々にとっても悪い話ではないですね」

 なんか私が入る隙なく話が進んでいく。別にやるなんて言ってないのに。全く勝手な話よね。


 「あの、私やるなんて言ってないんですけど」

 「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 先生方が一斉にこっちを向いた。怖い。

 「え? ここまで来てダメなの?」

 「だって私にメリットないですよね?」

 「うぐっ…」

 「あの、お話がこれだけなら失礼させていただきますね」

 夕飯の準備があるから早く帰らないとだし。

 そう言って足早に退出しようとしたところで、スミカ様に止められた。

 「お待ちになって、クリスさん」

 振り返ると、席を立ちこっちに向かってきた。

 「別に無償で協力して欲しいなんて言ってないのよ」

 初耳ですが?

 「(ソフィアと一緒のお部屋なんでしょう?)」

 「!?」

 「(男の子と女の子が一緒って、まだ早いと思うのだけど)」

 「(いえ、ソフィアに無理矢理……)」

 「(でもそこは、断らないとダメじゃないかしら?)」

 返す言葉もございません。弱い所を疲れてしまった。てっきり公認だと……。

 あれ、でも、『よろしく』って言ってたよね?

 「(でも、よろしくって言ってましたよね?)」

 「(同棲するなんて聞いてないわ。私は変な事しない様見守ってねって意味でに言ったのだけれど)」

 ニヤニヤしながらスミカ様は言う。これ分かってて言ってるわね。

 「(でしたら、今日中に別の部屋へ移りますので、変な事は起きないかと。何なら男子寮へ移りますけど…)」

 そう言った瞬間に慌てるスミカ様。

 「待って! それだと困るんだけど」

 「スミカ先生どうかしましたかな?」

 「いえ何でもないです。もう少し待ってください」

 「(分かったわ。そのままでいいわ。ただ、本当にあれは凄いのよ。革命よ。お願い。是非とも参加して欲しいのよ。もちろんタダとは言わないわ)」

 その代案次第かな。

 「(うちの領の特産品知ってるかしら? あ、工業製品じゃないわよ)」

 あのメシマズ領だった所の特産品なんて…。

 「(風の噂で聞いたんだけど、お酒お好きよね?)」

 「分かりました。お受けします」

 この年齢で嗜んでるなんて知られたら大目玉じゃ済まないわ。ここは受けざるを得ないわ。

 「本当かね。流石はスミカ先生」

 「いえいえ。真摯にお願いした結果ですわ」

 買収と恐喝ですよね?

 「あの、参加するのはいいんですけど、毎日はちょっと…」

 「もちろんだ。毎週金曜日はどうかね?」

 週の中頃にやられるよりはいいか。

 「はい。それなら」

 その瞬間。先生達が一斉に立ち上がって喜び出した。そんなに喜ぶことかなぁ?


 「クリスさん。ありがとうね」

 「いえ……」

 「うちの領の北部。あぁ、隣のプレナイトピーク領もそうなんだけど、あの辺美味しいお米が取れるのよ」

 「えぇ、それは知ってます」

 あの辺、豪雪地帯だしね。魚沼とか会津坂下みたいなめちゃくちゃ美味しいお米が取れるのよね。それがどうして領都はあんなにメシマズだったのかしら?

 「水もいいのよ」

 「………………」

 「ちなみにその少ーし南では大麦とかホップとかも作ってるのよ。蒸留所もいっぱいあってね」

 「………………………………………」

 「是非とも感想を聞かせて欲しいのだけれど…」

 「一生ついていきますわ。お義母様」

 「あらやだ。お義母様だなんて、ソフィアと一緒でママでいいわよ」

 まぁ、学園でママなんて言えないので、普通にスミカ先生って言うけどね。たまに間違えて先生をお母さんって呼んじゃうことあるけど、この人に限っては間違えてもノーカンよね。

 それにしてもアンバーレイク領がそんなにお酒造りが盛んだとは知らなかったわ。一体誰が輸入したのかしら?

 アンバーレイクのアンバーってビールかウイスキーの琥珀色って事なのかな? それでレイクは浴びるほど飲める地域って事かしら。なんて楽園なのかしら? 卒業したら移り住もうかしら?

 そして、スミカ様に詳しく聞くと、やっぱりいろんな種類のお酒があるようだ。

 日本酒、米焼酎、麦焼酎、芋焼酎、ウイスキー、ビール………。南部では葡萄も作っているからワインとブランデーもある。他にもジンとかシェリー酒もあるのかしら?

 学園に通ってる場合じゃないわね。もっと早く知ってればよかったとこれほど後悔したことはないわ。

 というか、こっちの世界でも日本酒って名前なのはどう考えてもあの三人のうちの誰かよね。ソフィアが作ったんなら、もっと早く知れるはずだもの。

 まぁ、今後の楽しみが増えたってことで多めに見ましょうか。

 それにしても、どこの世界も母は強いのね。また丸め込まれてしまったわ。


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