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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第6章

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13 みんなでランチ②


 「ちょっと待ってください。今聞き捨てならない事を言いましたね?」

 「何よ」

 食事中にソフィアが何の気なしにルームシェアしているという話になって、レオナルドが待ったをかけた。

 「え…それなら、私とクリスは婚約者なんですから、私と過ごすのが正しいのでは?」

 「ざーんねんでしたー。クリスは女子寮にいるから相部屋できませーん。それにー、一回申請したら変更は出来ないのよー。校則に書いてあるでしょー。王子様がルール破るなんて出来ませんよねー?」

 ソフィアが煽る煽る。レオナルドがかわいそうになってくるくらいだわ。

 「でも、一年に一度ですよね? 来年はどうなるか分かりませんよ?」

 「無理でしょ。女子の制服着てたら女子寮。男子の服着てたら男子寮なんだから」

 そのルールも相当おかしいけどね。まぁ実際うちの領の男子の殆どが女装してるし、他の領でも相当数いるから仕方ないのかもしれないけど…。

 「な、ならば私も…」

 「もう振り分け済みだから無理でしょ。今頃変えたらら問題じゃない」

 「くっそぉ………くっそぉおおっ……」

 本当に悔しがっている。両手で握りしめたナイフとフォークがガタガタと震えている。

 そんな事罵り合ってないで、早く食べちゃいなさいよ。冷めるでしょ? ただでさえソフィアは頼んだ料理の数が多いんだから。テーブルの三分の二以上占有してるから、私のところが狭いんだよね。

 「ねぇクリス」

 「何?」

 「それ美味しそうね。どんなの?」

 「あぁこれ? 若鶏のハチミツ焼き。美味しいわよ」

 「へぇ……。ねぇ、一口ちょうだい。私のもあげるからさ」

 「いいけど。はい」

 お皿の横に切り分けて置いておく。

 「違うわよ。食べさせて。あーん……」

 「仕方ないなぁ。はい、あーん」

 「んー! 柔らかくてジューシー。……ルームシェアしてるとこういう事も出来るんですのよ。おほほほほ………」

 ルームシェアは関係ないと思う。

 「未だ嘗てこんなにソフィアを恨めしく思ったことはありませんよ」

 「それはどうも。ふふふふ…」

 やっぱりソフィアって悪役令嬢向いてるんじゃないかな? 性格ねじ曲がって千切れてるもん。

 そういえば、こんな事してたらマーガレットも騒ぎそうだなと思ってマーガレットの方を見ると、スプーンを握りしめたまま、目をパッチリと見開いてずっと凝視していた。怖い怖い怖すぎるわ。女の子がしていい表情じゃないわよ。

 流石に見かねたのか、両サイドのエリーとアーサーが止めさせようとするが、ノールックで手をぺしんと叩き落としていた。

 「クリスっていつもこうなの?」

 「割と日常茶飯事よ。カリーナちゃんも慣れないと気疲れするから、あんまり相手にしなくていいからね」

 「う…うん……」

 そういえば、ウィリアムも静かだなと思ってたら、自分の食べている料理をいろんな角度から見たり、分解したり、考えながら食べている。口に含んではうんうん頷いてるしどうしたのかしら? 自炊するレパートリーを増やそうとしているのかしらね?

 まぁ勉強熱心なのはいいけど、ウィリアムのミックスフライがバラバラなんだけど。ちょっとやりすぎじゃないかしら?


 レオナルドが「私にも一口ください」と言ってくるし、マーガレットも「ソフィアお姉様、私にも食べさせてください」と言い続けてるし。エリーはエリーで次から次に料理を注文するし、大変だわ。

 「はふはふ……ふーふー……はむ………もきゅもきゅ……はふーはふはふ……」

 私はテオドールたんが一生懸命食べている姿を見て現実逃避しましょ。今だけはテオドールたんで癒されたい。

 はたから見たら絶対に貴族に見えないわね。もしそう見えたんなら世の中の貴族は相当マナーがなってないわね。


 お昼ご飯を食べ終え、学園に戻る。

 中々レオナルドが解放してくれなかったが、エリーが一緒にいると言い出したらあっさり去っていった。

 今度からエリーをSPとして雇おうかしら?

 そんな事を考えていたら、教師の一人に声を掛けられた。

 「あの…あなたがクリスティーヌ・オパールレイン嬢ですか?」

 「はい。そうです」

 「申し訳ないんですが、職員室まで来ていただいても宜しいですか?」

 「えっ!」

 「ちょっとクリス、入学早々何やらかしてるのよ」

 「いや身に覚えが無いんだけど……。あの、私何かやっちゃいました?」

 「詳しい話は職員室でお話しします。皆さんお待ちですので急ぎでお願いします」

 「えぇ……」

 他のみんなもマジで何やらかしたって顔で見ている。私が知りたいくらいよ。だって今日入学したのよ?

 もしかして、女装しているのがバレたのかしら? でも、私だけって事はないし……。

 「分かりました。……じゃ、行ってくるから」

 「うん。夕食前には帰ってきてね」

 「え、えぇ…」

 なんかそういうこと言われると気がまぎれるわね。


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