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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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04 領の境目まで何かが出来ているらしい


 お父様の執務室へ入ると、お姉様もいた。

 いつの間にか居なくなってたなと思っていたけれど、お父様の部屋にいたのか。

 この二人が居るということは、そこそこ真面目な話かな?


 「お父様お呼びでしょうか?」

 「なんでそんな嫌そうな顔で言うんだいクリス…。パパちょっと悲しいんだけど」

 普段が普段なので諦めてください。


 コホンと軽く咳払いしてから真面目な顔をする。

 「実はね、先ほど報告があったんだけど、うちの領と隣のアンバーレイク領の境目に不思議なものがあってね、もしかしたらクリスなら分かるかもしれないとサマンサが言っていてね」

 そんな私万能じゃないですよ。分かるものしか分かりませんよ?


 お姉様が引き継ぐように朗らかに話し出す。

 「それでね、これからそれを見に行ってみようって話になったのよ」

 「今からですか?」

 「場所的には一時間弱くらいで着くからね。相手は公爵領だけど、うちの領の境目に作ったものに関して何の連絡も無いから、せめて早いうちに確認だけはしておこうと思ってね」


 「それと、帰りは街中でお父様が夕食をご馳走してくれるわ。好きなだけ食べられるわよクリス!」

 別にお姉様じゃないんだから、そんなに食べませんよ。この歳になると、量より質になってくるのよね。って、転生したから胃袋はまだそこまで凭れて(もたれて)ないから多少無茶しても大丈夫かな。

 でも、お父様の事だから、質や量より値段になりそうね。

 「いや、そこまでは言ってないんだけどな。それにサマンサの食べる量を鑑みるに破産してしまうよ…」

 「分かったわ。腹八分目で止めておくわ」

 「何一つ変わってない……」

 そんなやりとりをしながら馬車で現場へと向かった。


           *      


 「ここが領の境目ですか?」

 特に関所も無く、漠然と平原が広がっていた。ある一点を除いて。


 「これは…。線路ですかね?」

 「「「せんろ?」」」

 お父様とお姉様、一緒についてきたメアリーが同時に疑問を抱く。


 領の境目ギリギリまで作られた線路。そしてその横には資材がうず高く積まれていた。いつでもすぐに建設に移れますよってことだろうか?

 それよりも一番気になるのは、駅があることだった。

 【(仮)アンバーレイク・オパールレイン境目駅】と記載がある。

 これはもう、この世界に鉄道があるってことじゃないか。

 ご都合主義の世界だからたまたま出てきたのか。それとも……。



 「これは、線路と言いまして、電車とか汽車とか走らせるレールですね。で、あそそこに見える少し高くなっている所が駅で、人が乗り降りする場所ですね」

 「流石クリス。何でも知ってるね。でもどうしてそんなこと知ってるんだい?」

 ギクッ! 別に隠しているわけじゃないけど、何て言おうか。


 正直産業革命の起きてないこの世界で、蒸気機関とか何て説明したものか…。

 いや、まってトロッコならあるよね? 炭鉱くらいあると思うし、うちの領には炭鉱とかないけど、そこで使われてるのなら見た事ありますよね? で、説明できそう。


 「炭鉱で鉱石とか石炭とか運ぶのにトロッコとか使うじゃないですか。で、そのトロッコをスムーズに動かすに使うのがこの線路です」

 こんな感じの説明でいいかなと思ってお父様を見ると、顎に手をやって何かを思案している。お姉様も真似をしているのか腕を組んで目を瞑っている。

 「「トロッコって何?」」

 そこから説明しないといけないのか。面倒臭いなぁ…。



 「ふむ。つまり、これは人や物を大量に迅速に運ぶことが出来るものを走らせる道路みたいなものって認識でいいんだね?」

 「簡単に言うとそうですね。ただ、問題なのは何で勝手にここまで作っているのかってことですよ。これを使えば兵站の輸送も楽になりますよ?」


 現状、この駅の付近に誰も居ないので聞いて確かめることもできないが、明確に何らかの理由があって作られたことは明白だ。

 はぐらかされてしまうかもしれないが、これは作った本人に聞いた方が早いんじゃないだろうか?

 「アンバーレイク公爵に直接聞いてみてはいいんじゃないかしら、お父様?」

 お姉様も私と同じ結論に至ったようだ。ナンダカンダ鋭いのよね。

 「分かった。急ぎ公爵に手紙を出そう」


           *      


 ちなみに、その日の帰りに街で夕食をとったのだが―――――


 街中でお店を探していると、入り口のお店のメニューを険しい顔で見ながら。

 「こっちの店のが安くてメニューも多くていいじゃないか」

 「そこは先週行きましたので、まだ行ってないこっちのお店がいいですわ」

 そう言われて、入り口のメニューを見る。

 「サマンサ、もう少し安い店はないかい?」

 貴族とは思えない提案をするお父様。お金を使って下の方に循環させないといけないんじゃないですかね? って思ったけど、財布を両手で持ちながら、メニューと財布を交互に見つめてるお父様を見ると、悲哀を感じるわね。

 もしかして、自由に使えるお金がないのかしら? それとも別の事に使っていらっしゃる?

 何とか、ギリギリ行けそうだったのか、お父様が渋々了承して、お店へと入った。


 「ここからここまでお願いします」

 「ちょ、ちょっとサマンサ、それは頼みすぎじゃないかい?」

 「何を言ってますのお父様? ここからここまでが、全メニューの八割ですわよ」

 「腹八分目ってそういうことじゃないからね。しかも、金額の高いメニューが前半にあるから、すごい金額になるんだけど」

 その言葉に途端に不機嫌になるお姉様。眉間に皺を寄せて不満を漏らす。

 「えぇ…。だってお父様が好きなだけ食べていいって言ったじゃない!」

 「言ってない。勝手にサマンサが言っただけだよ」

 貴族と言えど意外とお父様ってケチよね。まぁこれはケチとかいうレベルの話じゃないんだけどね。

 お父様の敗因はお姉様を連れてきてしまった事よね。


 「あ、あのすいません。オーダーの方はまた後で伺った方が宜しいでしょうか?」

 ほら、店員さんも戸惑ってしまったじゃない。

 「仕方ないわね。では、このページから最後のページまででお願いしますわね」

 ニッコリと、これ以上は譲歩しないとお父様を睨むお姉様。

 「分かった……。それならまぁ、まだ…」

 内ポケットから財布を取り出し、中身とメニューを交互に見比べるお父様。

 お父様も大変ですわね。まさか、おこづかい制な訳ないですよね?


 あ、私は一番高いメニューにしたわ。それを選んだ時お父様の口から血の糸が垂れた気がした気がするけど気のせいよね。

 メニューの後半ってサラダや、スイーツ、おつまみメニューにドリンクがほとんどな気がするのだけれど、お姉様はそれで満足なのかしら?


 一番最初にお父様の頼んだものが来たけれど、きっとまた味なんてわからないんでしょうね。平常時なら悶絶しそうな位真っ赤っかな溶岩のようにボコボコ音を立ててる激辛料理なのに平然と食べているんですもの。

 というか、よくこんな真っ赤な激辛料理がメニューにあったわね。唐辛子何個使ってるのかしら?



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