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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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85 視察に行こう③


           *      


 「これは一体………」

 エーレクトロン駅に到着し、駅の改札を出るなり王妃様が一言呟き絶句した。

 正直私もビックリしている。

 駅舎も豪華だし、出た瞬間丸の内かな? って思ったもん。グランドセントラル駅並みに高層ビルが屹立してなくて良かったわ。そこまでビルが建ちまくっていたら発展具合に恐怖するところだわ。まぁ、現時点でも相当発展しているんだけど。

 王妃様だけでなくみんな上を向いてポカーンとしていた。

 その周りを地元の住民がスタスタと通り過ぎていく。何ていうか上京してきた田舎者感があるのよね。


 「お嬢様、お迎えにあがりました」

 みんなが上を向いていた時に、正面の方から声が掛けられた。

 みんな一斉にそちらを向くと、アンバーレイク家の執事レオーネさんが立っていた。

 「時間ちょうどね」

 「ねぇソフィア?」

 「どうしたのクリス?」

 「どうやって呼んだの? 王都からここまで距離あるよね?」

 「何って携帯で連絡したに決まってるじゃん」

 「あぁ……なるほど」

 なるほどね。そりゃあ時間ちょうどに迎えにこれるわよね…………。うん?

 「ねぇ、何かお願いがあったって言ってたじゃない?」

 「うん」

 「携帯で連絡すれば良かったんじゃない?」

 「あ………」

 たまーにソフィアって抜けてるのよね。

 「そうよね……そうよね………………ねぇ、クリスは携帯持ってきてるの?」

 「あ………家に置きっぱなしだわ」

 「ダメじゃない。人のこと言えないじゃない」

 「ねーえ、『けいたい』ってなぁに?」

 ソフィアと話していたら、王妃様が携帯に興味を持って話しかけてきた。

 「えーっと………」

 言っていいのかな?

 「遠くの人と連絡が取れる物ですわ」

 「へぇー……そんな便利なものが…………レイチェルは持ってるの?」

 「あるけど?」

 「私も持ってます。まぁ、うち(オパールレイン)は大体持ってますよね? ジェームズ様以外は大体使えてますよね?」

 「そうね。うちの夫は機械関係全部ダメだし」

 「知らなかったわ。ねぇ、それ私にもくれない?」

 「いいですよ。でも、電波が届かないと使えないので、アンテナ基地局作ってもいいですか?」

 「いいわよ」

 早っ! 王妃様深く考えないで答えたんじゃないだろうか? それが何か質問すらしてないし。でも確か王都近くまでは電波が入るはず…。まぁ、下手に言わないほうがいいよね。ソフィア的には合法的に作れるビジネスチャンスかもしれないものね。

 「ちなみにこういうことも出来るわよ」

 お母様とメアリーが操作方法を教えている。なんか新鮮な光景だ。

 「えっ! えっ! 何これクリスちゃんの精巧な似顔絵……嘘! こっちは動いてるわ!」

 「似顔絵じゃなくて写真よ。それでこっちは動画ね」

 「なんでもっと早くに知らなかったのかしら」

 「いや私達もつい最近だし」

 ソフィアやメリーちゃんに携帯貰った初日を思い出すわ。

 「あ、そうだ。クリスに電話掛けたのに家に置きっぱなしなんだもの。ちゃんと出かけるときは持って行きなさい」

 「はい……」

 そうだね。連絡取れる手段があるのに持ってなかったら意味ないよね。

 そんな光景を他の面々が興味津々で見ていた。

 「じゃあうちに着いたらお渡ししますわ。レオナルド殿下にもね」

 「感謝しますよソフィア。いやぁ持つべきものは友達ですね」

 汽車の中でバチバチやっていたのが嘘のようににこやかだ。


 「あぁ、ソフィアちゃんの家に行くのが楽しみだわぁ」

 「では、こちらで移動しますのでどうぞ」

 「流石にこの人数だと多いから二台用意したわ」

 そう言って案内された場所には黒塗りのリムジンが二台停まっていた。

 それはもう前世で見た車そっくりだ。

 「あらぁ、懐かしいわねぇ…これ」

 ギガさんが、何の気なしに言う。

 「乗ったことあるんですか?」

 「うん。まぁ、こういうパリピがなるようなやつじゃないんだけど、よく乗ってたわ。最期の時は乗る前にやられたわねぇ…」

 聞かなきゃ良かった。

 私とソフィアが気づかないフリをしつつリムジンの方へ歩いていく。


 リムジンの前には三人の人が立って控えていた。

 「お帰りなさいませお嬢様」

 ステラさんのメイド服のスカートにボフッと突っ込み抱きつくソフィア。突っ込んだ勢いでスカートが波打って揺れる。

 「あらあら…たった一週間程でホームシックですか?」

 「いいじゃない。大変だったんだから」

 「お疲れ様です」

 ポンポンと背中を優しく叩くステラさん。

 こういうのいいよね。私はそういうの無かったし。振り返るとバツが悪そうな顔で明後日の方向を向くお母様とメアリー。

 「あの…お嬢様? シフォンもいますよ?」

 「あんたは王妃様に帰っていいって言われて速攻で帰ろうとしたじゃない」

 「うっ…。でも王妃様の命令は絶対……」

 「はいはい。そういう事にしとくわよ。……じゃあ行きましょうか。あ、二手に別れる必要があるわね」

 「一号車は私レオーネが。二号車はレガシィが担当します」

 レガシィさんと呼ばれた人もなかなかのイケオジだわ。じゃあこっちに乗りましょうかね。

 「ちょっとクリスどこ行くのよ」

 首の所をぐいっと掴まれる。

 「いやあっちに」

 「いや私と乗るのよ」

 「クリス様。私は悲しいですぞ」

 「いやぁだって運転荒いし…」

 「あれは非常事態だったからでしょう」

 「分かったわよ」

 ちなみにレオナルドはシレッと二号車の方へ行った。止めないのはそういう事なんでしょ。


 「あのソフィア様見慣れない方がおりますが、あの方のお名前は…」

 「あぁあれ、スケキヨ兄様よ」

 「「⁉️」」

 まぁ驚くよね。主人が女装して帰ってきたらそりゃあ驚くわ。

 「…や……見ないで……」

 「前々からやったら可愛いのにと思っていましたが、とてもお似合いですわ」

 「えぇえぇ本当に。一体どういう心境の変化です?」

 「自然な流れでさせられたのよ」

 「その方にはお礼を差し上げないといけませんね」

 「そうですわね」

 「あれ? 先に来てない? ラムダさんて言うんだけど…」

 「あの方が…」「そのような趣味をお持ちとは見受けられませんでした」

 「…うぅ…」

 「とにかく今夜は赤飯を炊かないといけませんね」

 「えぇ、今夜はお祝いです」

 「……やめ……」

 「まぁまぁ、スケキヨ兄様改めスケキヨ姉様、諦めてくださいな」

 「………………」 

 そんなスケキヨさんを無理矢理リムジンに押し込みながらソフィアも乗り込んだ。

 そんなソフィアに倣ってみんな車に乗り込んでいく。

 乗り込んでドアが閉められた瞬間、ソフィアが座ったと同時にゲンドウポーズを取る。

 「ようこそ、ベルベ………」

 「はーいそこまでよ。怒られるから止めなさい」

 「誰に怒られるっていうのよ」

 ソフィアがやたら高い声を出してモノマネをしそうになったので慌てて止める。

 「え、別に止めなくてもいいのに。何て言おうとしたの?」

 「えーっと、ベルベット生地が好きです……」

 「ふーん…」

 王妃様がそんな事を言うが、すぐに横に座らせたスケキヨさんに興味を移す。


 「中々発進しないけど、何かトラブルでもあったの?」

 「王妃様、既に発進しておりますわ」

 「えっ! あ、本当だわ」

 王妃様を始め乗っていた面々が驚いている。

 「凄いわ。揺れないし、お尻も痛くない」

 「馬車より早いわ」

 「シートも座り心地がいいわね」

 「ねぇ、これうちでも欲しいんだけど…」

 確かに車に乗っちゃったら、馬車には乗れないよね。でも導入するにはいろいろ課題がある訳で…。

 窓の外を見ると、スムーズに景色が流れていく。馬車は全く見かけないがいろんな種類の車が走っている。

 飛び乗ったら分解しそうなクラシックカーはソフィアの趣味として、このリムジンは誰の趣味なんだろうね。


 「そういえばいつの間にか馬車の数が減ってるけどどうしたの?」

 「車がビュンビュン走ってる中で馬車がゆっくり走ってたら危ないじゃない?」

 「まぁ…」

 「交差点とかで事故が増えてるからこの辺では禁止になってるわよ」

 「へ…へぇー…」

 「あと、ほらLRTとかバスとか走ってるから接触とか起こされたら危ないでしょ?」

 「発展しすぎでは?」

 「便利だからいいじゃない」

 世界観がメチャクチャになってるけど、近代的な街中で中世風の服着た人達が歩いているのを見るとなんかグッとくるね。とてもエモいわ。

 しかし、道の真ん中を走ってるLRTはなんで水色なんだろうね。アクセントに青い線が走っている。灰色の街中でとても映えるわね。

 「なぁにあれ。乗ってみたいんだけど」

 「LRTですね。機会があったらどうぞ」

 「へぇ…ねぇあの黄色い箱型のはなぁに?」

 「あれはバスですね」

 「へぇ…。なんでバスは黄色でLRTは水色なのかしら?」

 「た…たまたまじゃないですかねー」

 「ふふ…そう言う事にしておきましょうか」

 時折、王妃様が車窓から気になるものをソフィアが答えていた。降りて確認したいと言うのをシグマさんが止めているので、今のところ滞りなく進んでいる。

 前はこんなでもなかったと思うのだけど、威圧するほど屹立したビルも低くなり、やがて長閑な郊外へと出た。

 ソフィアの家まであともう少しというところでそれは起こった。


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