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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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80 恥じらいって大事よね


           *      


 所変わって王妃様の自室。

 普通こういうところに部外者は入れないものだが、そこは変わり者のエテルナ。

 自ら音頭をとって招き入れた。

 「さぁさぁどうぞどうぞ入ってー」

 王妃様の自室に招かれたのは、テオドール、エリー、スケキヨ、ソフィア。そしてお付きのメイドシグマだ。

 ラムダとサヴァはエテルナの命によりアンバーレイク領へ出立している。


 「…あの……僕どうなるんですか…なんでこんなところに連れられたんですか?」

 「それは勿論あなたが可愛いからよ」

 「…男なんですけど…」

 「知っているわ。よく見なさい。クリスちゃんはいないけど、ここにはこんなに可愛い男の娘がいるのよ」

 「もぉ…そんな紹介のされ方されたら嬉しくなっちゃうわぁ…」

 「この聖女様。なんと男の娘なのよ。どう? 可愛いでしょ?」

 「テオドールです」

 「……………………………………」

 頬を朱に染め恥じらうテオドールと憮然とするエリー。

 「……確かに……かわいい……はっ! いや…違っ……」

 「素直になりなさい。あなたは宝石の原石よ。磨けばもっと可愛くなれるわ」

 「…いや…いいです……ソフィア助けて…」

 妹のソフィアに助けを求めるが、にやけ笑いをしたまま動く気配がない。

 「盲点だったわ。確かに三バカの中では常識枠だったけど、まさか女装枠でもあったなんて…」

 「…ソフィア何を言って…」

 「王妃様、こんな兄ですがよろしくお願いします」

 「任されたわぁ。シグマ!」

 「はい」

 そうしてどこかへ引っ張られていくスケキヨ。ドナドナの牛のような瞳で睨みつけるスケキヨとニンマリ笑顔で手をヒラヒラさせるソフィア。


 「ラムダもなかなかどうして優秀なのかしら?」

 「私もここに連れてこられた時はどうしようかと思ったけど、メイド服を着させたあのラムダってメイドには感謝しかないわ。まさかあんな似合うなんて…」

 「そりゃあソフィアちゃんはクリスちゃんしか見ていなかったものね」

 「そっか…」

 視野が狭かったなと反省するソフィア。

 「さて、どうなるかしらね」

 「あの、王妃様…」

 「なにかしらソフィアちゃん?」

 「イデアさん捕まえに行くのでしたらクリスに私のお願いを伝えてもいいですよね? 約束通りメイドの仕事しましたし」

 「うーん…そうねぇ…。別に構わないし、話しても構わないけど、クリスちゃん嫌がらないかしら?」

 「それは……」

 今まではどんな大変な事もお願いすれば引き受けてもらえていたが、今回ばかりは命に関わるかもしれない。そこで逡巡する。

 お願いの内容は王妃様にも伝えていないし、伝えられる内容ではないのだ。アンバーレイク家の失態を晒す事が出来ない為、クリスに内密に対応してもらおうと考えていた為だが、今となってはそれも難しい。

 立ち尽くし俯いて考えるソフィア。

 まだ未然に防げる段階である。意を決して王妃様にも打ち明け、その後にクリスにも伝えて協力してもらおう。そう決意したソフィアだったが…。


 「あの…王妃様…」

 その時、奥の扉が開き、シグマに連れられたスケキヨを見て絶句してしまった。

 「やぁだ、スケキヨ兄様なんて可愛いの。まるでお人形さんみたいじゃない!」

 「…や……見ないで……」

 「はぁ…はぁ…。いいじゃない…。こんな逸材がまだいたなんて…」

 「全くですエテルナ様。少しメイクしてウィッグを被せただけでこれですからね。私も何度婚姻届を書かせようとしたか」

 この短時間でシグマは二桁に上る回数求婚していたが、それはスケキヨ以外は与り知らぬ事だ。

 「正直、うちの兄達は結婚できるヴィジョンが見えないのよね」

 「…ぼ…僕にだって……プランくらい……」

 「あるの?」

 「………ないです………」

 その言葉と同時に顔面に婚姻届を押し付けるシグマ。

 そしてその様子を見ていた二人もかわいいと褒めそやした。


 「私やっぱり思うのよ」

 「何をです?」

 「恥じらいよ。クリスちゃんを見ていてずっと気になる事があったんだけど、ようやく喉のつっかえが取れたわ。恥じらいよ!」

 「確かに男の子が女装して顔を真っ赤にしてスカートを下に引っ張る仕草は込み上げるものがありますものね」

 「そうでしょう? よくよく考えたら、エリーちゃんもテオドールちゃんもナチュラルに女装してるんだもの。なかなか気づけないわよね」

 「いや、テオドールは最初は恥じらってましたよ王妃様」

 「えっ、本当? 見たかったわ」

 本当に悔しがる王妃様。

 「でもこんなに可愛いのにスケキヨちゃんはないわよね」

 「そうですね。改名した方がいいですかね?」

 「うーん……。ディルちゃんとかどうかしら?」

 「あっじゃあ私はラサディー…………」

 「うわぁあああああああああっ!!!!!」

 顔を真っ赤にして泣きながら部屋を出ようと走り出すスケキヨ。

 だが、着慣れていないドレスの長いスカートに足を引っ掛け転んでしまう。


 「どうしよう。私今キュンキュンしてるんだけど」

 「私もです。恥じらい、現実逃避しようとするその姿。目頭が熱くなりますね」

 「ホントよホント。こういうのよ! これ! こういうの! そう! 求めてたのよ! 私は!」

 一人熱くなるエテルナ。そして転んで起き上がれないスケキヨの前に屈んで言う。

 「そんなに否定してはダメよ。あなたには無限の可能性があるんだもの。誇りなさい。そして立ち上がりなさい!」

 「…うぅ…」

 なんとか自力で立ち上がるスケキヨ。

 「そうよ。今日からは新しい自分になるのよ」

 「………はい……」

 「こうやって人って洗脳されていくのね」

 「僕も気をつける…」

 「スケキヨ兄様って結構流されやすいところあるからね。まぁ私としては面白いからオッケーよ」

 茶番を冷静な目で見ていた三人は、王妃様には気をつけようと決意したのだった。

 そして言われるがままのスケキヨは洗脳が解けるまで、延々着せ替え人形をさせられたのだった。


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