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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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75 飴と鞭


           *      


 あれから一週間。

 あんなに溜まっていた仕事は綺麗に片付いた。

 よくこの短期間で片付いたものだと関心するわ。

 ここまで上手くいくとは思わなかったけど、マックスさん達や件の部署の人達の働き方を見てやってよかったと思う。

 他の部署にいくつかの仕事の権限の委譲を行なったので、各々自分の判断で動けるようになったし、モチベーションも上がったそうだ。心なしか目がキラキラしている気がしたもの。

 お陰でここの仕事量も減ったし、重要な案件にだけ取り組めるようになった。まぁ、責任の重い仕事ばかりなのは変わりはないんだけどね。

 というか、下に埋もれていた一番古い書類が二、三年前のものとかあったんだけど、これが原因で地方の貴族が反旗を翻したんじゃないだろうか?

 そういうところがまだまだ中世なんだよなぁ…。


 そんな事を回顧していると、マックスさんがニコニコしながらコーヒーを淹れてくれた。

 「どうぞコーヒーです。閣下」

 まーた変な呼び名が増えてる。

 「御大、いただいたお菓子です。どうぞ!」

 「姉御、肩凝ってませんか?」

 せめて呼び名は統一してくれないかしら?

 というか、そんなに特別扱いしなくていいんだけど?

 まぁ、あの地獄のような日々が終われば私が女神に見えなくもないんでしょうけど…。あ、私女神も兼任してたんだっけ…。

 「もう…普通にクリスでいいから。変な呼び名つけないでよね」

 そう言いながらコーヒーを一口飲む。

 「あら! すっごく美味しいわね、これ。まろやかなのにコクと苦味のバランスがいいわね。ほのかにミルキーな感じがして私好みだわ」

 「豆にはこだわってますので」

 まんざらでもない感じで髭を触りながら照れるマックスさん。

 豆だけじゃなくて、焙煎具合と淹れ方が完璧よ。一朝一夕で身につくものじゃないわ。

 それとこのお菓子も美味しい。すっごくコーヒーに合う。

 「どうです? それ凄くコーヒーに合いませんか?」

 「とっても合うわ。このホワイトチョコと白あんかしら? アクセントの柚子ピールが最高ね」

 「ありがとうございます。それ自作なんですよ」

 「へぇー………ねぇ、うちのお店で働かない?」

 「ははは。ありがございます。でもそれクリス様のお店でも売ってますよね。真似て作ってみたんですよ」

 「だからこそよ」

 オリジナルのはもう少し違うんだけど、個人でこれを作れるなら是非とも戦力に欲しい。

 ぶっちゃけセオドアさんとうちのベルさんくっついちゃえばいいのにと思うくらい。

 「姉御! 姉御! 俺は?」

 「うーん。今はいいかな…」

 「あっ…そうですよねー……」

 まぁ、このくらいの扱われ方にはなれているから別にいいのよ。問題は……。


 「お陰で私の仕事も量が減って大助かりです。クリスは私のために改善してくれたんでしょう?」

 レオナルドが満面の笑顔で私の横に座っている。

 ルドルフさんの提案を断ったのはこれが理由だ。実際肩はほんの少し凝ってるんだけどね。

 そういうつもりではなかったのだが、結果的にそうなったのよね。ちなみに、兄のライオネル様からも感謝の気持ちでお菓子の詰め合わせをいただいたんだけど、食べきれない量を戴いたからメイドさんたちにあげちゃったのよね。ばれなければいいんだけど…。でも、部屋の三分の一が埋まるくらいの量はどうしようもないと思うの。

 「あの、レオ様近くないですか?」

 「何を言ってるんです? 僕の婚約者なんですから何も問題はありませんよね?」

 ひょいと私の手からマグカップを奪い口につける。これって間接キスでは?

 しかしブラックが苦手なのか、顔を顰めマグカップをテーブルへ置いた。

 吐き出すわけにもいかず、涙目で震えている。

 何とか飲み込むと、「ほろ苦い恋の味」とよく分からない感想を言っている。

 侍従の三人もちょっと気まずそうにしている。

 レオナルドはすっくと立ち上がると、手を差し出してきた。

 「随分と仕事も減りましたし、ダンスでもどうですか?」

 「いや…まだ結構残ってますので、今日は…」

 「おや…。この量で…ですか…。あなたたちで処理出来ませんか?」

 にっこり笑顔のまま三人に向き直るレオナルド。

 「「「お任せください!」」」

 これってパワハラじゃないかしら? まぁ、三人と言わず、一人で終わる量なんだけど、正直ここ最近のレオナルドと一緒にいると怖いのよね。


 「うぅ…疲れたぁ……」

 部屋に戻り、そのままベッドへダイブする。

 今日もメアリーはいない。一体どこに行ったんだろうか? 王妃様なら何か知ってるんだろうけど、「ひ・み・つ」としか言わないので何かさせているんだろう。

 それにしても、レオナルドってああだったかしら?

 そう言えば、ソフィアがメンヘラ入ってるとかないとか言っていた気がするけど、まさか本当だったなんて。

 あの後、休憩無しで三時間もレオナルドとダンスに付き合わされるとは思わなかった。

 流石の私も足がパンパン。

 「クリス様お疲れのようですね。マッサージしましょうか?」

 「!」

 起き上がり振り返ると、いつの間にかメアリーが立っていた。

 「メアリー! いつ戻ってきたのよ!」

 「今さっきです。もしかして、寂しかったですか? 寂しかったですよね?」

 軽く頷くとメアリーはにんまりと笑みを浮かべた。

 「ほら…。いろいろあって疲れてるから、軽くね」

 そう言うとメアリーはベッドに飛び込み、私を抱きしめた。

 「あぁもう…。こういうところがクリス様は可愛いんですよねぇ」

 「ちょ…もう少し優しくしてよ。疲れてるんだから…」

 「ふふふ…。素直じゃないんですからぁ」

 抱くのを許可はしたけど、それは一時的なものであって、こんなずっと抱いていいという意味じゃなかったんだけど…。

 その後、ベッドにうつ伏せになり、足をマッサージしてもらったんだけど、踊り疲れとメアリーのテクニックで微睡むような気持ち良さから、抵抗する気力もなく気づけば眠りに落ちていた。


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