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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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72 黒いレオナルド


 そんな三人が部屋を出ようと扉を開けたらレオナルドが泣きそうな立っていた。

 「あら、レオちゃん」

 「母上ー。クリスは…クリスはメアリーと結婚するんですか?」

 あっ…さっきの聞いてたんだ。

 「そうですよー」

 ドヤ顔で嘘を言うメアリー。

 「!」

 泣きそうな顔が今にも決壊しそうだ。

 「そんな事無いから安心して。メアリーの世迷言だから」

 「そうです。メアリーは一生独身ですよ。そもそもこんなのが結婚出来るなら私が先にしています」

 「なっ!」

 「ホントにホント?」

 「ホントです!」

 「メアリーが言うとややこしくなるから黙ってなさい」

 まぁ、いつものメアリーを知っているレオナルドなら、こんな嘘に騙されないと思うんだけどね。

 「ですよねー。ははは…ホントメアリーさんは冗談がお好きで…」

 「だからちがっ…」

 王妃様とシグマさんが一斉にメアリーの口を塞いだ。

 「お母さん達は用事があるからこれで失礼するわねー」

 そう言って足早に部屋を出ていった。出て行く前と違って、王妃様とシグマさんがメアリーを連行する形で。

 「それより、レオ様はどうしてこちらに?」

 「ふふん。クリスがダンスレッスンをしていると聞きましてね」

 「その通りでございます。レオナルド殿下」

 ヴィサージュさんが恭しく肯定した。

 「しかしながら殿下、まだクリス様はペアでのレッスンが出来ておりません」

 「なんと」

 二人ともワザとらしいなぁ。

 「それは大変ですね。ねぇクリス」

 「えっ! えぇと……そう……ですねぇ…」

 「あぁっ! どなたかクリス様のペアをしてくださる方がいればっ。私では身長に差がありすぎますぅ…」

 「ならば仕方ありませんね。私がクリスの練習相手になりましょう」

 初めからそのつもりだったんでしょ? それで、部屋の前に待機させていたんでしょう? 予想外だったのはさっきの茶番だったわけで。

 シグマさんが暴走しなければ、そのままレオナルドとのダンスのペアを組ませようとしていたんだろう。


 そんなレオナルドは、泣き腫らした顔がいつの間にか元に戻っていた。

 そしてレオナルドは紳士っぽく、手を差し出していた。

 「では、クリス一曲踊ってはくれませんでしょうか?」

 いいけど、音楽なんてないわよ? って、そんな野暮な事言っちゃいけないわよね。

 「えぇ、よろしくお願いしますわ………」

 正直、私振り付け知らないわよ?

 足踏んじゃったらごめんね。

 そう思いながら、レオナルドの手を取る。

 暫く無言なので、どうしたのかなと顔を覗き込むと、目をぐるぐると回しながら、ゆでダコのように真っ赤な顔になっていた。少し湯気も見える。

 「く……くり……くりしゅのおてて………」

 さっきまでの紳士然とした姿はどうしたのだろう? 初めて声をかけられた男子高校生みたいな反応をしている。

 「あの……気分が悪いなら……」

 「い………いえいえ…大丈夫です! ちょっと気分が高揚していただけです」

 「そ……そうですか…」

 そして、調子を取り戻したレオナルドはさっきと打って変わってキリッとした表情を作って、キメ顔で問いかけた。

 「クリスはこういうのは初めてですか?」

 「そうですね。確かに初めてかもしれないです」

 「そうですか。では、私の足は沢山踏んでも構いませんからね」

 「寧ろ…」と言ったあたりで、ヴィサージュさんが声を被せた。

 「私の自慢の弟子です。そんな事はありえませんよ」

 「ははは……それだと困るんですがね……」

 一体何が困るんだろう? まぁ、練習中に足を踏むなんて事は良くあるけど、なるべく踏まないように足元にも神経を集中して踊りましょう。


 それから暫くはレオナルドとダンスレッスンをしたのだが…。

 「流石! 流石レオナルド殿下とクリス様ですね。息がぴったり。まるでずっと付き合っていた恋人のようですわ」

 「いやぁ照れますね」

 顔を真っ赤にして満更でもない顔で喜ぶレオナルド。

 しかし、何か不満があったようで、私に顔を近づけ小声で囁いた。

 「クリス、どうして踏んでくれなかったんですか?」

 「え?」

 何でそんな怖い事言うの?

 すぐにさっと顔を離して、いつものレオナルドに戻る。

 「でもこれで、春のパーティでクリスを紹介することが出来ますね?」

 「パーティ?」

 何それ初耳なんだけど。というか、そういったものに参加したことないからどういったものかよくわからないのよね。

 しかし紹介するって…嫌な予感しかない。

 「あ…でも、私王妃教育終わったら帰りますので参加は……」

 「何言ってるんですか?」

 「え?」

 「クリスはずっとここで暮らしていくんですよ?」

 真顔でとんでもないことを言うレオナルド。怖い。

 「邪魔者がいますが、そこには目を瞑りましょう…。大丈夫です。何も心配する事はありませんよ。ヴィサージュ、引き続き私に相応しい振る舞いができるようお願いしますね」

 「承知いたしました」

 ニコニコと笑顔を浮かべているけど、物凄くどす黒いオーラが見えるけど、気のせいじゃないんだよなぁ…。帰りたい。帰ってベルさんのお菓子を食べながらだらだらしたいなぁ……。


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