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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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67 王妃様は面白がってるだけかもしれない


           *      


 朝食を済ませ、王妃様の執務室に一人で足を運ぶ。

 当然、メアリーは食後のおやすみだ。ホント自由だよね。

 ノックをすると「どうぞ」と返事があったので、部屋へ入ると誰もいない?

 「あれ?」

 その瞬間後ろから抱きつかれ持ち上げられてしまう。

 「うわっ!」

 「ふふふ〜ん。捕まえちゃったわぁ」

 中から声がしたのに、どうして私の後ろにいるんですかね? 結構この人も謎が多いよね。

 そのまま抱っこされたまま執務室内のソファに座る王妃様。図らずも抱っこされたままだ。恥ずかしい。

 「クリスちゃん教えてくれるんでしょ? どこに落としてきたの?」

 変に誤魔化しても後々大変な事になりそうなので、イデアさんの事を話した。


 「……本当に女神様がいたなんて……」

 衝撃だったのか、余裕の表情が崩れている。

 「デルタ! いる?」

 「はい。なんでしょうか」

 さっきまでいなかったのに急に現れたラムダさん。やっぱりこの人も何か特殊な訓練を受けているんだろうな。

 「至急シグマを呼び戻してちょうだい」

 「いいんですか? まだ有給休暇中ですが…」

 「いいのよ。どうせお見合い全敗中でしょうからね。これ以上やっても無駄よ」

 あのクールビューティーさんお見合いでいなかったのか。どうりで見ないなと思ったんだよね。あの人がいたらもう少しスムーズに話が進んだんじゃないだろか?


 「エテルナ様、流石にそれは酷いと思いますが…」

 おっと。ラムダさんが苦言を呈した。思うところがあったのだろう。

 「泣く時間も必要じゃないでしょうか?」

 あっ…、お見合いが失敗するのは既定路線なんだ。この人も酷いな。

 「泣くようなタマじゃないでしょ。どっちかというと放心状態になってるんじゃないかしら?」

 王妃様も酷い言いようだ。

 「そうですね。そっちですね」

 半笑いで納得するラムダさん。

 「では、今日中に連絡を出しておきます」

 「うん。そうして。いじる相手がいないと退屈だもの」

 「そうですね。ところで、理由はどういたしましょう」

 「いいお相手が見つかった。で、いいんじゃないかしら?」

 「承知しました」

 そう言って震えながら、恭しく礼をして出て行った。必死に笑いを堪えていたわね。

  

 「じゃーあ、クリスちゃん始めましょっか」

 「お…お手柔らかに……」

 「あらあら〜。そんなに畏まってどうしたの?」

 「いえ、なんでもないです……」

 王妃様の膝の上で、この流れだと一体どうなっちゃうんだろうか…。

 「大変だと思うけど、王妃教育始めましょっか」

 「え? あ…あぁ…あ〜そうー……ですよねぇ…あはは。王妃教育ですよね。はい」

 「あらあら〜? 何を想像したのかしら〜? 私とぉっても気になるわぁ…」

 「いえ、私の口からはとてもとても…」

 分かっててそういう言い方しましたね。でも王妃教育かぁ…。やりたくないなぁ。

 王妃様はずっと耳元で、囁いてくるし。

 ここは話題を変えて逃げましょう。


 「そ…そういえば、レオナルド殿下はどうなされましたか?」

 「レオちゃん? レオちゃんねぇ……」

 物凄く悲しそうな声を出す。そんなに重篤な状態なんだろうか?

 「鼻血の出しすぎで貧血気味だから、あと数日もすれば元に戻ると思うわよ」

 「あ…そうですか…」

 心配して損したわ。

 「でも、クリスちゃんが女の子になってるんなら、なんの障害もないわよねぇ…」

 「いえ、そろそろ元に戻ると思うので……」

 「そうなの? じゃあ女神様を捕まえて、また変えてもらわないとね」

 明るい声で怖い事を言う王妃様、イデアさん逃げてー。


 「それにねぇ、昨日ここに勤めてる人達にアンケート取ったの」

 アンケート? 唐突になんの話なんだろうか?

 「クリスちゃんがレオちゃんの婚約者に賛成か反対か」

 王妃様の膝の上でズコッと前のめりにズッコケてしまった。

 昨日? 仕事が早すぎないですか?

 ウッキウキの王妃様が早く答え言いたいみたいな雰囲気なので、続きを促す。

 「ふふん。それでね、賛成が八割反対が二割だったわ」

 意外な結果だ。てっきり王妃様のことだから十割賛成かと思ったわ。…ってそんな十割打者みたいな結果になるわけないよね。

 ちょっと自惚れていたわ。

 「ちなみに反対の二割は、自分が結婚したいからって回答だったわ」

 実質賛成十割じゃないか。

 「面白い結果になったから、改めて反対派の意見を賛成派にも伝えたのね」

 ただ面白がってやってるだけじゃないかこの人。いちいちつっこむのがバカバカしいわ。


 「そしたら、なんと反対が七割になっちゃったのよぉ」

 『なっちゃったのよぉ』じゃないよ。意図して誘導してるじゃない。

 ただ、それでも三割が賛成のままの理由が知りたい。

 「残念な事にね、既婚者だからとか、孫と同い年はちょっととかそんな理由だったわ」

 わぁ…。常識人が少ない。この城大丈夫なんだろうか?

 「でも、実質賛成十割じゃない?」

 「見方によってはそうですね」

 「つまり、クリスちゃんの性別さえなんとかなれば解決するのよ」

 おっと。外堀まで埋められていたと思ってましたが、城壁を崩されて内堀まで埋められてる感じですかね? そろそろ天守閣が燃やされそうです。

 正直、王妃様は私の事どう思ってるか分からないのよね。

 ただ面白がってやってるだけな感じもするし…。

 少し思いにふけっていると、私を抱きしめる力が強くなった。


 「まぁそれはそうと、折角の機会だから聞いちゃうけど、レオちゃんって他所ではどうなの?」

 後ろから覗き込むようにレオナルドの事を問われた。

 「そう…ですね。とても社交的な紳士って感じですよ。理知的で物静かで頼り甲斐があります」

 「あら! うちではそんなところ見た事ないわ。教えてくれてありがとね」

 その後、呟くように「どうしてうちではあんなに幼くなるのかしら? 不思議ね」と言っていたけど、確かに謎ですね。正直別人と言った方がしっくりくるわ。



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