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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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66 朝はいつだって忙しい


 「はい、終わり。……うん。我ながら可愛くできたわ」

 「ありがと。随分と上手じゃない」

 「まぁ、妹とかにやってたからね」

 「そっか」

 色々とあったんだろうけど、変に聞かない方がいいかもね。


 「しかし、クリスが王子様の婚約者だったなんてね…」

 「私も今だに信じられないんだけど」

 「どういう事よ、それ? まぁ、実際クリス可愛いから納得ちゃあ納得よね」

 まぁ、確かに可愛さだけで言ったら世界一位かもしれない。

 それにしても、ここまで騒いでも起きないメアリーってほんと凄いわね。

 ディンゴちゃんも同じ事を考えていたらしい。


 「ねぇ、クリスのところのメイドってみんなああなの?」

 「まぁ、そうだね。みんなおかしいね」

 「そ、そうなんだ」

 「その中でもメアリーはダントツでおかしいんだけどね」

 「でしょうね。でも、一体ナニをしたらこんなに起きなくなるほどつかれるのかしらね?」

 妙にニュアンスがおかしかった気がする。きっと訛っていたんだろう。

 「さ…さぁ?」

 「まぁいいわ。後でゆっくり教えてもらうから。そんな事より、さっき王妃様が言っていたことが気になるわ。お○ん○んをどこに落としたのかって…。ねぇどういう事? クリスは性別までも変えられるの?」

 おっと。随分とセンシティブな事を聞かれたぞ。しかし、女の子がそんな事をいっては行けないわよ。心のアレがビンビンにはなってはいるのだけどね。


 「まぁ…そのおいおいね…」

 「どうして濁すのよ。何か理由があるのね。それって、クリスのやってる事に関係しているの?」

 「ど…どうかなぁ…」

 なんか鋭くない? まぁ、性別云々に関しては、イデアさんが勝手にやった事だから関係無いのかな?

 「わ…私はっ! お…おお…おとっ! 男の子でも女の子でもオッケーだからっ!」

 とんでも無い事を言い出したので、驚いて振り返ると、真っ赤な顔を両手で隠して震えていた。

 「そこまでです。それ以上は、私が許しません」

 いつの間にか起きていたメアリーがディンゴちゃんの頭に手を乗せ掴んでいた。

 「いたっ! いたたたたたたっ!」

 「メアリー止めなさい!」

 「だって、クリス様は私だけのものなんですから、これ以上増えたら困ります」

 「言ってる意味が分からないけど、とりあえず、やめなさい。嫌いになるよ?」

 パッと手を離して、私の横に来て縋り付くメアリー。


 「そ、そんな事言わないで下さい。私の貞操ならいくらでもあげますから」

 「いらない。というか、もう少し抑えなさいよ」

 『嫌いになるよ』という言葉は抑止力はあるけど、効きすぎるのよね。狼狽え方が半端ないもの。

 しかし、いつもより顔が青い。そんなに衝撃だったのかしら?

 そう思ったら、口元を押さえるメアリー。

 「きもちわるい…………」

 「あっマズイ」

 急ぎメアリーを支えトイレに連れていく。

 トイレから出てきたメアリーは少し窶れているが、すっきりした顔をしていた。

 「いやぁ…すいません。昨日のお酒が残ってたみたいで」

 ほぼ水状態の酒でそんなになるかしら?

 昨日だって、キスの後に、吐きそうになるから介抱したのよ? トイレとお風呂間違えるわ、浴槽に落ちるわ、メアリーのした粗相を片付けて、挙句着替えてる最中に混乱状態のメアリーに抱きつかれたままベッドに連れ込まれて、散々だったわ。

 もうメアリーにはお酒は飲ませないって決意させた夜だったわ。

 一瞬何が起こったか分からなかったディンゴちゃんは、先ほどのメアリーの様子と脱ぎ散らかされた衣類を見て、更に顔が真っ赤になっていた。


 そんな時、扉の方から呆れたような声が聞こえた。

 「朝食持ってきたんだけど、お取り込み中だったかな…?」

 ノックをせずにドアを開いていたのはサガさんだった。

 「あ…ごめんなさい。でも、出来ればノックしてもらえると…」

 「十回くらいしたんだけど、反応ないから一言かけてから開けたんだけど…。それにしてもモテモテだねぇ」

 「気づかなくってごめんなさい。まぁ、これはモテモテとは違うと思うんだけど」

 「クリスがそう思うんならそうなんでしょ」

 どうしてそんな呆れた目で見られているのかしら?


 「とりあえず、朝食持ってきたんだけど、セッティングしていいのかい?」

 「そうですね。そうだ。折角だし、一緒に食べませんか?」

 「私はいいけど、後ろの人はめちゃくちゃ睨んできてるから遠慮したいかな」

 振り返るとニッコリ笑顔のメアリー。

 「わ、わた…私はいいと思いますよ…えぇえぇ。クリス様がいいんなら」

 不服なのね。でも、暫くここに滞在するならもう少しコミュニケーション取った方がいいわよ。

 「メアリーもこう言ってるんで、大丈夫ですよ」

 「そうかい? じゃあ、厨房からディンゴの分と合わせて持ってくるから」

 そう言って踵を返し出て行ったサガさん。

 いなくなった途端に、私に抱きつき不満を口にするメアリー。

 「私と二人っきりの食事でいいじゃないですかぁ!」

 「どっちにしろ、後ろで控えるのよ。二人っきりな訳ないでしょ」

 「むぅ…」

 本当にメアリーはメイドの仕事理解してないわね。家に帰ったらアンジェさんに全部報告しておこう。ちょっと酷すぎるからね。


 暫くして、ティートローリーに食事を乗せてサガさんが戻ってきたんだけど、多くない?

 サガさんとディンゴちゃんがテーブルセッティングを始める。

 私も何かやった方がいいだろうか。そう思い立ち上がろうとすると、サガさんに静止された。

 「クリスはそのまま待ってていいぞ。メイドの仕事だからな」

 そっか…そうだよね。

 聞いてますかメアリー? 堂々と座って頷いているけど、うちでちゃんとやった事ある?

 ものの数分で準備が終わり、サガさんとディンゴちゃんが座る。

 「いただきます」の合図と共に、三人とも凄い勢いで食べていく。目の前に置いてあった大量のスクランブルエッグとベーコンとソーセージが一気に消えていった。大量のサラダはそのままだ。ちゃんと野菜も食べないとダメよ?


 「改めて思ったけど、ホントにクリスはいいとこのお嬢様なんだね」

 「え、どうして?」

 「いや…食べ方がホント綺麗なんだよ。もう教会の宗教画のような感じで神々しい」

 「そんな褒めてもソーセージしかあげられませんよ?」

 「いや、思ったまま言っただけなんだけどな…。まぁ、クリスのソーセージはありがたく貰うけどさ…」

 納得いかないと言った顔でソーセージを頬張るサガさん。

 別に普通に食べてるだけだと思うんだけどね。

 チラとメアリーを見ると、口の周りに食べかすをいっぱいつけている。

 「もっとゆっくり食べなさいよ。ほら」

 ナプキンで顔の周りを拭いてあげると、嬉しそうな顔をするメアリー。ワザとやってないでしょうね?

 そしてそれを見ていたディンゴちゃんが、慌てて口の周りにケチャップを塗っているけど、対角線に居て遠いから拭けないわよ?


 食後の紅茶を啜っていると、またぞろメアリーが不満げな顔をしている。量が足りなかったのかな?

 「私はとても不満に思っている事があります!」

 「藪から棒になによ…」

 「あなた達はクリス様を何と仰っていますか?」

 「え? クリスだけど…」「そりゃあクリスでしょ。他にあるんか?」

 「違います。クリス『()』でしょう?」

 「「あっ……」」

 ハッとした表情をして、申し訳なさそうに私を見る二人。

 そういえばそうか。慣れてたから意識した事無かったわ。

 「ごめんなさい。つい、慣れで呼び捨てにしてしまったわ」

 「確かに。ちょっと慣れないな…」

 「そこは慣れてもらわないといけません!」

 メアリーのくせに珍しくまともな事を言っている。今日の天気は吹雪ね。


 「いいですか? こういうのはコツがあるんです」

 ん? なんかおかしい事言い出すんじゃないでしょうね?

 「クリス『様』だと、言いづらいかもしれません。ですが、クリスサマという名前だと思って言えばいいんです」

 「いや…それは……」

 「逆に失礼…」

 二人が正しい。

 「メアリーはずっとそういう感じで呼んできたのね?」

 「いいえクリス様。私はルビにダーリンと付けて呼んでました」

 「知らんがな…」

 ここまでくると清々しいわ。もういっそメアリーはバカなままでいいんじゃないかしら? ペット枠という事で…って、動物のがもっと忠誠心高いわよ。

 「な、なるべく善処するよ。クリス…サマ」

 「そうね。クリスサマー」

 ディンゴちゃんの発音的には夏じゃないかしら?


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