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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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56 遠距離は人をメンヘラにするらしい


 王妃様が「やっとめんどくさい事終わったわー」と言いながら、私に近づいてきて抱きしめようとする。が、いつもと違って鉄壁のメアリーがいるのだ。

 あっさり抱っこされ王妃様と距離をとるメアリー。王妃様にも容赦がない。


 「ちょ! メアリー何するのよ」

 「それはこちらのセリフです。王妃様、クリス様に何をしようとしていたのですか?」

 外の寒さに負けないくらい冷たい声を出すメアリー。

 「そんなの決まってるじゃない! 心身疲れてヘトヘトの体にクリスちゃん成分を補給するのよ」

 王妃様の私に対する評価高すぎじゃないですか?

 その言葉にウンウンと頷き同意を示すうちのメイドに対して、ディンゴちゃんはさっきまでの出来事が嘘のように呆れた表情で見ていた。まぁ、気晴らしになってよかったのかな。これを王妃様が意図してやったかは分からないけど。


 「むぅ…。こんな事になるなら、余計な事せずに先にやっておけばよかったわ」

 こっわ。一体何をしようとしていたんですかね。

 しかし、みんなからの視線が気になったのか、軽く咳払いをして話題を変えた。

 「こほんっ……。えっと、じゃあいろいろあったんだけど、ディンゴちゃんでよかったのかしら?」

 「あっ…はい」

 「あなた、私の専属メイドにならないかしら?」

 「えっ!」

 王妃様の急な提案に驚き固まるディンゴちゃん。

 まぁ、無理もないかな。暗殺しようとした相手に専属メイドにならないかと問いているのだ。


 「で…でも私は……」

 「あぁ…気にしないでいいのよ。あなたはやらされていただけ。そうでしょう?」

 その言葉にこくんと頷く。

 「それにあなたクリスちゃん並みにいろいろ出来るでしょ?」

 「いや……そこまでは…」

 「ふふ…謙遜しなくてもいいのよ。一応、武器とかの扱いには慣れてるんでしょ?」

 「⁉️」

 「ふふふっ…。決まりね」

 何でもお見通しの王妃様はディンゴちゃんの両手を握りしめて微笑んだ。

 それでも俯いたままのディンゴちゃん。

 ふと、顔を上げ私を見る。いや、私に助けを求められても……。


 「あらぁ。仕方ないわねぇ。じゃあ、お仕事に慣れるまでは最初に言ったように、クリスちゃんの専属メイドをやってもらってもいいかしら?」

 「えっ…」

 頬を朱に染め、王妃様を見上げるディンゴちゃん。

 そこに水を差すバカが一人。

 「ダメです。ダメ! ダメに決まってます! クリス様の専属は私一人で十分です!」

 メアリーがずかずかと王妃様の前まで行って、胸を張り上げ抗議しながら、横のディンゴちゃんに対抗意識を燃やす。


 「あなたはうちのメイドじゃないでしょ? ここではうちのメイドをあてがわないと。それにあなたうちでの仕事出来るの?」

 「うっ……」

 そりゃあ、メアリーは仕事全然出来ないもの。王城(ここ)じゃただの足手まといよ。素直に諦めなさいな。

 「それに帰るんでしょ?」

 「いいえ。帰りません。クリス様いるとこに私ありですから」

 「いや、ここには優秀な人がいっぱいいるから、仕事しない人はいらないわよ」

 「何てこと言うんですかクリス様! 私がどれだけクリス様を好いているか! いない間どれだけ一人で慰めていたか……」

 そこまで言った瞬間にビシューとロココがメアリーの口を塞ぐ。

 「バカ…何言ってんよ」「そうよ。それも王妃様の前で……」

 流石の王妃様も顔が引きつっている。


 「……はぁ…。分かったわ。みなまで言わなくていいわよ。じゃあ一応客人として扱ってあげるから」

 「分かりました。当然ですね。それで折れましょう」

 王妃様相手に一歩も譲らないなんて、一体どういう育ち方をしたらそうなるのかしらね?

 「やった! 勝ちましたよ。クリス様!」

 「いや、メアリーは帰ってもらっていいんだけど!」

 「酷い! 私の事一生養ってくれるんじゃなかったんですか?」

 「そんな約束はしていないわよ」

 ほら見なさいな。周りのみんなが呆れた顔で見ているわよ?


 「メアリーが残るなら、私も…」「えぇそうですね」

 「後は私がやっておくので、ビシューとロココは帰っていいですよ。いろいろと報告もあるでしょうし、後の事はお任せします」

 「お前……、お前ホント自由だな」「そうやって、好き勝手に決めて……後で覚えておきなさいよ……」

 恨みがましい目つきでメアリーを見るビシューとロココ。多分、この一月くらいメアリーに振り回されていたんだろうな。

 「クリス様、いつでも戻ってきていいですからね」「メアリーは置いてきていいですからね」

 ビシューとロココがメアリーにも聞こえるように言って、部屋を出て行った。よっぽど溜まっているものがあるんだろうなぁ。


 「ふっふっふ。これで邪魔者は減りましたね」

 後ろから私を抱きかかえるメアリー。もう誰にも渡さないぞと言った気持ちが強く出ている気がする。

 「もう、クリス様はほっておくと、新しい女を作るんですから」

 頬をぷくっと膨らませて不貞腐れた顔をするメアリー。

 「女って…。同僚よ?」

 「いいえ。メスの顔してました」

 メアリーってこんなに嫉妬深かったかしら?

 「遠距離恋愛中に新しい女を作るなんて、私許しませんよ」

 「そんな彼女みたいな言い方しないでよ。めんどくさいわね」

 「えぇえぇ。私はめんどくさい女ですよーだ」

 一月以上会わないだけで何でこんなにめんどくさい事になっているんだろうか。王妃様、笑ってないで助けてもらえませんかね?


 王妃様、デルタさん、ディンゴちゃんが生暖かい目で見ている。大体体感で十分くらいだろうか? この後もいろいろやらなければいけない事がたくさんあるのだ。

 そろそろ、解放して欲しいのだが……。

 「あの…メアリー? そろそろ離して欲しいんだけど」

 「ダメです」

 即答!

 「な、なんでよ?」

 「これだけ長い間離れていた事なんてありませんでしたからね。クリス様成分が枯渇していますので、暫くこうして補給しないといけないのです。ご理解ください」

 『ご理解ください』じゃないわよ! メアリーってこんなにメンヘラ感強かったっけ? 愛が重いし体も重い。何でどんどん体重かけてくるのよ。

 「今までだって結構離れていた事あったでしょ?」

 「えぇ…。今更ながらに気づきました。絶対に離さないと、と……」

 あぁ、これは今日は何言ってもダメなパターンね。きっと、興奮して思考回路が麻痺しているんだわ。一晩寝ればリセットして忘れるんじゃないかしら?

 「今日は無理そうね」

 王妃様が頬に手を当て、困惑している。

 「うちのメアリーが勝手して申し訳ございません」

 「いいのよ。今日は順番待ちしても順番が回って来なそうだからね。明日楽しみましょ」

 「え……」

 もしかして、明日からは別の意味で休まらない感じでしょうか?



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