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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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46 ルイスお姉様/王家の食卓


 更に待つ事十分。

 「ごめんごめん。会議が長引いちゃって…」

 「おほーっ!」「ほほぅ…」「!」「素敵……」

 そういえば、お兄様達とメリーちゃんはルイス様と会うのは初めてなんだっけ?

 それにしてもうるさい。いつまで雄叫びをあげてんのよ。あと、どうしてルイス様は頬を赤らめてもじもじしているのかしら?

 それにしても、クリスとはまた違った美少女よね。男だけど。

 もう成人になろうというのに、長く青い艶やかなツインテールと、これまた改造したであろうゴスロリ風の制服がよく似合っている。

 先ほどの軍服ワンピース風制服やこのゴスロリ風制服を着たクリスが見てみたいわ。

 こんなにも入学が待ち遠しいなんて。何としてでもクリスを見つけないと。最早目的を見失ってる気がするけど、まぁいいわ。クリスに会えればなんか解決しそうだし。

 という事で、ルイスお兄様(お姉様)に聞いてみましょ。


 「そんな訳で、クリス様の居場所を知りませんか?」

 今度はサヴァが説明をする。

 「サヴァさんだっけ? 君が知らないのはおかしくない?」

 「えっ?」

 「夏休みにお父様の仕事の手伝いをしている時に見たんだけど、クリスに王城へ来るよう案内出してたよね。あの時はいろいろあって伝えてなかったようだけど、漸く踏ん切りのついたお父様がクリスに登城するよう指示したんじゃない?」

 「でも、クリス様が出かけたのと、私がこっちに来た間にズレがあるんですけど」

 「そこまでは知らないよ。でも何か見落としてるんじゃない?」

 「むむむむー………」

 頭を抱えて呻くサヴァ。


 もしかして、またトラブルに巻き込まれているのかしら?

 でも、可能性としては王城にいるらしいから、王城へ行けばいいのよね。

 「今日は遅いから、ホテルに泊まって明日会いに行きましょう」

 「いや、流石にそんな簡単に会えないよ。まず、謁見の許可を取らないと」

 「え? ダメなの?」

 「ダメですねー」

 ルイスお兄様《お姉様》が謁見の許可が必要だという。そういえばそうよね。うちやクリスのところがおかしいだけで、普通は先ぶれが必要なのよね。忘れてたわ。

 でも、にししと私を馬鹿にするように見るサヴァだけは許せないわ。


 「ちょ、やめてください。痛いですって」

 「ははは…。謁見は手紙で行う必要があるよ。今回は代わりに僕が出しておくよ」

 「お手数おかけします」

 「いや、いいんだよ。僕も知らなかったからね」

 サマンサお姉様と違って丁寧で対応がいいわ。クリスはこっちに似たのかしらね?

 「じゃあ、私達は帰ろうか」「そうですな。そこまで残る理由もありませんしな」「……うちが心配……」「私もやらないといけない事いっぱいあるし」

 「え? もしかして私だけ残る感じ?」

 「こういうのはソフィアのが慣れているだろう?」「そうですぞ」「……我が家が一番……」「応援してます」

 なんだろう。急にハシゴを外された感じがする。というか、勝手に着いてきておいて、勝手に帰るのは如何なものかと思うわ。


 でもステラだけは違ったようで…。

 「大丈夫ですよソフィア様。私とシフォンは残りますよ」「えっ!」

 シフォン……。あんたは頷いておきなさいよ。

 「じゃあ、私もその許可が取れるまで一緒にいますよ」

 ナイスアイデアとばかりに満面の笑顔でサヴァが提案する。

 「なんでよ。あんたは帰ればいいじゃない。近いんだし」

 「そんな急に冷たくしないでくださいよ。流石に私一人で戻っても気まずいですし」

 「本当は?」

 「ホテルでの生活が良すぎるので、もう少し贅沢していたいです」

 「素直でよろしい。帰れ」

 「まぁ、どうしてもっていうんなら帰りますけど、ソフィア様の要件がその時に通るか分かりませんがね」

 「仕方ないわね。もう少し居させてあげるわよ」

 「(ツンデレだな)」「(ツンデレですのぉ…)」「(……ツン……デレ……)」「(ソフィア姉様、私にももっとデレを…)」「(ソフィア様のツンデレ久ぶりですね)」「(ツンデレソフィア様かわいい)」「(でもツンの方が多くない?)「(これでいいのよ。ツンデレは…)」「(クリスのツンデレも見たいなぁ…)」

 どうしてみんなそんな目で私を見るのよ。なんでほっこりしているの?


           *      


 「最近、新しい人を雇ったのかしら?」

 「確かにな。前よりも奥深い味わいというか、複雑な味わいだ。だが、とても美味しい」

 「あなた食べ過ぎは禁物ですよ? ここ一週間で随分とお腹周りが広がったのではなくて?」

 「うぐっ…。ほら、冬だから、冬のせいだから」

 「どうかしらね」

 王家の食事時。出された料理に舌鼓を打ちながら絶賛している。

 そんな中、一人涙を流す者がいた。


 「あら、レオナルドどうしたの? 辛かったの? 苦かったの?」

 食べながら涙を流すレオナルドを見てエテルナは驚き尋ねてしまう。

 「いえ、とても懐かしい味がしたもので…」

 「なつかしい?」

 隣に座る妹のルキナが訝しそうに問う。

 「えぇ。よく遊びに行っていたクリスの家の味に似てまして」

 「逆にこっちに嫁いできた人みたいな事を言うね」

 向かいに座る兄のライオネルがおかしそうに笑う。

 「もしかしたら、クリスの家に勤めていた人がうちに来てくれたんですかね?」

 「私も興味があるから後で確認してみるわ」

 ニコニコと笑顔でエテルナが返すと、レオナルドはこくんと頷いた。

 「でもまぁ、こんなに美味しいものが食べられるなら、街まで下りなくてもいいな」

 「あんたやっぱり……」

 「い…今のは忘れてくれ」

 「この後、お時間をくださいね?」

 「いや……その……」

 そんなデボネアとエテルナのやり取りを、子供達三人が三者三様に呆れた顔で見つめていた。


 食事も最後のデザートを残すだけになった。

 給仕係が置いたデザートを見てレオナルドは驚き、目を丸くする。

 「こちらフォンダンショコラでございます」

 未だ嘗て、こんな凝ったデザートが出てきた事はあっただろうか?

 「ほう…。これはなかなか………。いくらでも食べられそうだ」

 「ほんと……おいしい……」

 「なるほど…これは確かに……」

 「一体何人入ったのかしらね?」

 そんな中、レオナルドは一口食べるなり、無言で立ち上がる。

 「こら、レオナルド。はしたないですわよ。急いでも仕方ありませんよ」

 「ですが……」

 「レオナルド。王族たるもの、常に優雅でないといけませんよ?」

 どの口で言うんだと、デボネアとライオネルとルキアは思うのだった。


           *      


 食事が終わり、エテルナとレオナルドは調理課のある厨房へと足を運んだ。

 「こっ…これはこれは王妃様にレオナルド様、如何なされましたか?」

 後片付けがすべて終わり、厨房に一人残ったセブリングが恭しく頭を下げた。

 「あぁ、いいのよセブ爺。お疲れのところ申し訳ないのだけど…」

 「はい。なんなりとお申し付けください」

 「あらそう? 実はね、すっごく美味しかったのよ」

 「ありがとうございます。料理人冥利につきます」

 「だから、そんな頭下げなくていいのに」

 「はっ…」

 「ところで、ここ最近一気に料理のレベルが上がった気がするんだけど」

 「えぇ、新人が何人か入りまして。…いやぁこの歳になっても勉強になるもんですな」

 「あ、あの…。その新人さんってどんな人なんです?」

 「どんなって言われても……。まぁ、まとめると、ガサツで要領良くて気立てが良くて、かわいい大食いの意地汚いニャーニャー言ってる子かな」

 「えぇ……どういう事……」

 「クリスじゃない……」

 セブリングが一人一人の特徴を言わずにまとめて言ってしまったが為に、うまく伝わらなかったようだ。

 「それじゃあ、美味しかったとよろしく伝えておいて」

 「はっ。かしこまりました」

 エテルナとレオナルドが厨房から出て行って暫くして、セブリングはさっきの伝え方はまずかったかなと思い直したのだった。

 「別に間違った事言ってねぇよなぁ…」


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