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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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43 ソフィアはおかんむり


           *      


 それから一週間以上、止まない雪のため、街中のホテルに篭りっきりだった。

 そして、やっと雪が止んだので、ホテルに馬車の手配をして、早速クリスの家へ向かおうとしたんだけど……。


 「お客様、誠に申し訳ございません。現在。領内の至る所が連日の大雪で塞がっており、除雪しないと向かうことは出来ません」

 「そっかー…。じゃあ仕方ないわね。明日には行けそうかしら?」

 「えぇ、天気が崩れなければ可能かと思われます」

 「じゃあ、あと一泊するわ」

 「かしこまりました」

 そうよね。除雪しなかったら馬車どころか、徒歩でも行けないわよね。

 こんな大雪の中クリスは家で一体何をしているのかしらね? 寂しくて震えて泣いてたりしないかしら?


 大浴場でサウナにエステにマッサージ。遊戯室では三馬鹿と麻雀やビリヤードにエアホッケーにダーツと遊びまくった。お陰で体は調子いいし、肌も髪もスベスベ。三馬鹿にも勝って心も軽いし、賭けていたから懐も暖かい。

 「今日も出られないらしいから、また勝負しましょ」

 「はっはっは。ソフィア。何を言っているんだい? もう私達には賭けるものなんて無いよ」

 「ということで、先生お願いしますぞ」

 「……仇を……とって……」

 「どーんと大船に乗った気持ちで任せなさーい」

 あろうことか三馬鹿は股間を手で隠しサヴァに頭を垂れていた。


 「何? お兄様達は服まで賭けたんですか?」

 「そうだ。そして、今度は私達が勝ってソフィアの服を奪ってやる」

 「そうしてその服で愛しのクリスきゅんに会いに行くんですぞ」

 「……三着必要……」

 ごめん…。今回はマジで何言ってるか分からないわ。どうして勝つことと私の服を着ていくことが一緒なのかしら?

 「ふふ…。分からないって顔してるね」

 「分からないわ。馬鹿だ馬鹿だって思ってたけど、今回は本当に分からないわ」

 「つまりですな。クリスきゅんと一緒に女装していけば恋人同士になれる可能性が……」

 「ねーよバーカ!」

 「「「「!!!!」」」」

 「ちょ、ちょっとソフィアさん? そんな汚い言葉を使ってどうしたんですぞ?」

 「そ…そうだ。それにそんなに眉間に皺を寄せたら取れなくなるぞ」

 あまりにもバカバカしすぎて手で顔を覆って呻いてしまう。

 ここまで馬鹿だとは思わなかったわ。


 ………いいわ。分かった。引導を渡してあげようじゃないの。

 裸で徒歩で向かわせてあげるわ。

 ちなみに横で一緒に参加しようとしていたグリとグラが顔を引きつらせていた。



 翌日。久しぶりの青空。放射冷却のせいで逆に寒い。こういう時はちゃん温かい格好をして温かい馬車の中で温かい飲み物を飲みながら行くべきね。

 「ソフィア姉様、今日は一段と冷えますね」

 「メリーちゃんは体弱いんだから、ちゃんと温かくしてないよダメよー」

 「はいです」

 「よしよし」

 素直なメリーちゃんの頭を撫でる。猫みたいな糸目ですり寄ってくる。かわいい。


 「ソフィア様、メリー様、温かい紅茶がございます」

 「ステラありがとう」

 渡してくれたカップに口を付け、窓の外を眺める。

 すっぽんぽんの男が三人と、ほぼ紐のVストリングの水着を着た女が三人。流石に雪の上を歩かせるのは可哀想だったので、私の慈悲で、靴下と手袋。そして顔面にパンツを被るのを許してあげた。

 最初はマッパの予定だったのだ。これだけ譲歩したのだから感謝してほしいわ。


 「な……なんで…なんでこんな事に…」「ソフィアの逆鱗に触れてしまったのでは?」「………しぬ………」「流石に冬はきっつい!」「どうして私達まで……」「あぁっ! 布がずれるっ!」


 スケキヨ兄は、もともと運動が得意じゃないからか、何度もこけて雪まみれだ。

 悔しいことにグリとグラはある部分が溢れそうなほど揺れている。

 「ソフィア姉様?」

 「あぁ…ごめんごめん」

 その一点だけを見ていたら、カップを持つ手に力が入ってしまったわ。零さなくて良かったわ。

 「私の妹は鬼だったのか…」「いや悪魔かもですぞ」「……死神……」

 なるほどね。三馬鹿は私の事をそういう風に思っていたのね。


 「お兄様方ぁ~。寒くないですか~?」

 「寒いどころか冷たくて痛いぞっ!」「そうですぞっ! もういいのではないですか?」

 「あらぁ~、それじゃ罰にならないじゃないですか~。でもぉ、可哀想なので、少し施しをあげますわぁっ」

 ポットの中の熱湯を上から丁寧に掛けてあげた。

 「あっつぅっ!」「あちゃあちゃ」「~~~~~~~~っ」「あひぃっ!」「あっつ! かかった」「あぶなっ」

 グラだけかからなかったみたい。というか三馬鹿にしか掛けないつもりだったのにかかっちゃってごめんね。

 あまりにも熱かったのか、雪の中にダイブしていた。

 昔見たバラエティ番組みたい。ピコピコハンマーでも持って来ればよかったかしら?


 物凄く長く感じた道のりだけど、実際には三十分くらいしか経っていない。

 「つ……ついた……し……死ぬかと思た………」「もう…ソフィアを揶揄うのはやめにしましょうぞ兄者……」「………………………」「こ……こんなことなら一人で……雪の中くれば………よかった…………」「これはこれで……」「確かにいい……かも……」

 ここまで頑張ったのだし、流石にこのまま会わせるわけにもいかないので、コートを渡す。


 「ほら、これ着て」

 「裸コート………。捕まらない? 大丈夫?」

 「その時は他人のフリするから大丈夫よ」

 「それは大丈夫って言わないっす」

 もう。みんな文句ばっかり。ゲームに負けたのがいけないんじゃないの?


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