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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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38 新しいお手伝い


 翌日。調理課の朝も早い。

 王族の朝食を作る為、朝の六時には整列していたが、五人しかいない。

 「あぁ、クリスは何も言われずに呼ばれたんだね」

 女性の料理人の人が丁寧に教えてくれた。

 なんでも。王族とはいえ、朝早くからそんなにいろんな種類の料理は食べないので、朝食は分担制なんだとか。

 パンを焼く人、スープを作る人、メインの料理を作る人、副菜を作る人。そして、監督する人と五人だ。

 ゲストがいる時はもう少し多いのだそう。

 そして、何回もあくびをしている料理長の朝礼が終わると、各自それぞれの担当に取り掛かった。


 「じゃあ、クリスは最初だからな。副菜を頼むわ」

 「分かりました」

 副菜って事はサラダとか和え物よね。目の前に置かれた材料で、サラダに使えそうなのはレタスにトレビスに水菜とカブかな。

 朝からそんなに重いのはキツそうだものね。

 ということで、すぐに出来てしまったわ。一応見栄え良く飾ってみたんだけど、どうかしら?

 「料理長出来ました」

 「おう。早いな……って、なんだこれ」

 「えっ! 盛り付けダメでしたか」

 「いや、俺より全然綺麗に盛り付けてあるから、びっくりした。なるほどな。こういう盛り付け方もあるのか…。ところで、この白いのなんだ?」

 「これですか? これはカブのドレッシングですね」

 「ほう…。じゃ出す前に味見を……。甘い中にもほんのり苦味と辛みがあっていいな。後で作り方教えてくれや」

 「はい。それはいいんですけど、全部食べちゃいましたね」

 「わりぃ…、もう一回作ってくれ」

 「あっはい……」

 毒味で一口食べるのは分かるんだけど、全部綺麗に平らげるのはどうかと思うのよね。

 そんな感じで、滞りなく調理は終わり昼食の準備へと移っていく。


 九時を過ぎる頃にはみんな集まり、この広い厨房が人で溢れかえる。

 「おはようクリス。初日から朝当番か。大変だな」

 「そうでもないわよ。いつも早起きだし、作るものも凝ってないし」

 「そう言えるのは慣れてるからだよなぁ。俺もそういう事言ってみてーぜ」

 「まぁ、確かに慣れよね」

 「俺なんて、朝親父とばーちゃんと一緒に稽古してからここに来るけど、なかなか慣れねーぜ」

 そういえばいつの間にかうちに朝練来なくなってたのよね。

 私に勝つんだなんて言ってたけど、今でも頑張ってるのね。

 朝早くから剣の訓練して、料理の修業もして大変ねぇ。

 「おし。じゃあ今日はクリスとウィリアムの担当は…」

 料理長が担当をそれぞれ決めていく時、入り口の方から大きな音がした。


 みんな一斉に振り返ると、三人重なって倒れていた。

 「何やっているんです?」

 「お…あぁクリスか。どうだ、大変じゃないか?」

 そんな事を言うのは、一番下敷きになっているサガさん。

 「別に大丈夫ですけど、こんなとこでなにやっているんです?」

 「いやー、人手が足りてないと思って、手伝いに来たんだにゃ」

 「プトラさん、掃除の責任者ですよね。勝手に抜けていいんですか?」

 「猫の手も借りたいと思ってるんじゃないかと思って、他の人に任せてきたにゃ」

 「はぁ…。そうですか。それで、ディンゴはどうしてここに?」

 「いや、やる事なくて…」

 「そうなのにゃ。綺麗すぎて、ちょっとやるだけで終わってしまうのにゃん」

 「そうなんですか?」

 三人とも倒れたままブンブン首を振っている。

 そんな三人の前に料理長が不機嫌な顔でやって来た。


 「何言ってんだお前等。どうせ味見したくて来たんだろ?」

 「なっ…ななな何を言っているのかなー? 人手が足りないって嘆いてたのはセブ爺だろ? 皿洗いでもなんでもやるからさ」

 「そうにゃ。片付けとか全然手が足りてないって聞いたにゃ。手伝うにゃー」

 「プトラ、お前はよく皿割ってたよな」

 「そ、そんな昔の事いつまで引っ張るにゃ」

 「三ヶ月位前の話だぞ?」

 「うぐっ…」

 「いいんじゃないですか料理長。実際人が足りてないのは事実ですし」

 「副料理長が言うならいいけどよぉ。こいつら大丈夫か?」

 「まぁ、皿洗いとか皮むきならいいんじゃないですか?」

 「じゃーいっか。おっし。お前等、ビスタ副料理長が責任持つそうだから、後の事は副料理長に聞いてくれや」

 「えっ!」

 副料理長が鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まっていた。助け舟を出したつもりが、一緒に沈んだ形なのかな。


 サガさんとプトラさんはともかく、ディンゴちゃんは巻き添え食っちゃった感じかな?

 でも実際ディンゴちゃんは、そここそ料理出来るからいいけど、この二人はどうなんだろう?

 「(やったな。これでクリスの料理つまみ食いできるな)」

 「(ふっふっふ。こんな美味しい仕事はないのにゃ)」

 「お前等聞こえてるぞ。ちゃんと仕事すれば食べさせるけど、邪魔ばっかりしてたらすぐに追い出すからな」

 「「はいっ! 肝に銘じます!」」

 「どうだかな」

 「私来るとこ間違えたかも…」

 ディンゴちゃんも付き合う人考えたほうがいいわよ。


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