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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章

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03 クリストファー改めクリスティーヌ

 朝目覚めたら、子供になっていた。前世のような記憶はあるけれど、この世界での記憶や知識は一切ない。ドレスとか女の子物の服とか着るのは好きだし、鏡を見てこんなに可愛いのにそういう格好をしないのは勿体無いと、後半力説ぎみに話した。

 「まぁ、薄々おかしいなとは思ってました」

 「や、やっぱり。おかしい所とかあった?」

 「おかしい所しかないですよ。まず、朝は起きたくないといつも不機嫌ですし、基本的に会話していただけません」

 「えぇ…」

 「ヤダ、ムリ、うるさい、嫌い、大嫌い、断固拒否……。ここ最近はこれくらいしか聞いてないです」

 「そ、そうなんだ…。昔から?」

 そう聞いたら、目線を横に向けられた。おい。絶対にこうなる原因の一因はこの人にあるだろ。

 まぁ、その原因とやらは自分にとってはプラスなので否定はしないでおこうと思う。

 そんな会話をしているうちにお着替えは終わった様で、淡いピンクの大きめのフリルと小さめのリボンが随所に付けられたドレスを着させてもらった。

 うんうん。青系の髪にはピンク系って合うよね、なんて鏡を見ていたら。

 「本当に変わっちゃったんですね。そんなノリノリでポーズ取りながら姿見の前になんて立ちませんでしたよ…。でも、素敵ですクリストファー様」

 「クリストファー? それが私の名前?」

 「はい。そうですよ…。って、え? 名前も覚えてないのですね…」

 「そうなの。だから、色々教えてもらえると助かりますっ!」

 バッと軽く頭を下げてお願いする。

 「…おぅふ…。こ、こんな素直なクリストファー様が見られるなんて…」

 「どんだけ酷かったのよ?」

 「いえ、あれはあれで可愛かったのですよ。泣き顔が特に加虐心が擽られるというか…」

 この人信頼して大丈夫な人なのだろうか?

 とりあえず、現状この人しか頼れないので、変な性癖の手綱は握っておこう。

 「あ、あの、クリストファー様? そ、その一介のメイドがお願いするのもなんですが、その、抱きしめてもいいですか?」

 「勿論!」

 「ありがとうございます」

 「こちらこそ」

 秒で応えたよ。手綱? そんなもん手放したよ。この役得という名のビッグウェーブに乗るしかない。

 このメイドさん、言動とか仕草とか変なトコあるけど、美人だし可愛いのよ? 何より胸が大きい。抱きしめたいというのなら抱きしめられましょう。

 

 ぎゅーっ―――――

 

 転生して良かった。打ち明けて良かった。こんな経験した事ないもの。

 抱きしめられていると、このメイドさんの抱擁感で安心してきたのか、このまま二度寝してしまいそうになる。

 「あっ…、ダメですよ。起きてください。朝食に遅れてしまいますよ?」

 「あと、5分」

 「そんなまだ寝たいみたいな言われ方しても…」

 いや、ホントに安らぐのよ。暫く一緒に添い寝してもらおうか、何て考えていたら重大な事に気付いた。

 「朝食…。という事は、家族と一緒に食べるんだよね?」

 「そうですよ。いつも遅れてとっていますけれど」

 「どうしよう、家族の名前知らない…」

 「それは……、宜しくないですね」

 という事で、このメイドさんに髪を梳かされながら、家族の事を教えてもらった。

 まぁ、この時点で遅刻は確定しているのだけれど、普段通りなら問題ないよね?



 「……なるほど。この家はオパールレイン家門。ダイアモンド王国の南の方に位置するオパールレイン領を統治する伯爵家。父はジェームズ。母はレイチェル。兄と姉が一人ずついて、兄がルイス。姉がサマンサね。覚えたわ」

 と、ざっくり教えてもらった。やっぱり貴族だったのか。

 「そして、私がメアリーです。あなた様の永遠の従者メアリーです。お着替えから下の世話までお任せください。ちなみに本日のドレスは私の髪色と同じピンク色ですよ」

 急に忠誠度高くなって怖いんだけど。そこまで求めてないよ? トイレくらい自分で行けるよ。多分。それにちょっとヤンデレ入ってそうなのが気になる。

 「んー」

 「どうかしましたか?」

 「いや、この格好で行って、クリストファーですっていうのもおかしくない?」

 「そうですか? まぁ、家族からは愛称のクリス様で呼ばれてますよ」

 「クリスかぁ…。ねぇ、同じクリスならクリストファーじゃなくてクリスティーヌとかでも良くない?」

 「いやぁ、まぁ、確かにこんなに可愛らしいのですからアリかもしれないとは思いますが…。私の口からは何とも言えないです」

 「そっかー…」

 驚かせて済し崩し的に認めさせればいいのでは?

 もしかしたらそのお父様に怒られるかもしれないけれど、どうせなら名前も可愛い方がいいよね。

 ちなみに、メアリー曰くお父様はちょろいらしい。

 


 食堂の場所が分からないので、メアリーに手を繋いで連れてってってお願いしたら、暫く放心してしまった。

 「私、今日死ぬんですか?」

 なんて言い出したりして情緒不安定だなぁと思う。

 そんなこんなで、メアリーと手を繋ぎながら屋敷の廊下を歩いていると、使用人が皆が皆、振り返ってこっちを見ている。

 「ついに諦めたか…」とか、「やっぱり可愛いですわ」とか、中には「記憶なくなったのか…」なんて惜しい事言ってる人もいた。

 そうこうしているうちに食堂についた。結構距離あったわ。この体だと歩くのが時間がかかって、結構大変。

 扉の前に着いたのに、メアリーが手を離してくれない。

 見上げると、どうやら笑顔のまま気絶していた様で、よくその状態でここまで連れてこれたなと感心する。

 「メアリー、メアリー手を離して欲しいのだけれど」

 「はっ…。あ、すいません。クリストファー様。今、名前を呼んでもらった事で更に意識を失いかけました」

 この娘どうしちゃったのよ?

 「とりあえず、行ってくるからね?」

 「いってらっしゃいませ」

 なんて言いながら扉を開けるメアリー。

 扉を開けると、四人の男女がいた。

 お誕生席に座るのが父親だろうか、燻んだ濃いめの青い髪をしている。その向かって右側には綺麗な濃い青い髪の少年。その向かい側には同じく綺麗な濃い青い髪の少女。隣に座る母親らしき人は綺麗な金色の髪色をしていた。

 「やぁ、遅かっ…、た…、ね…、ク…、クリス?」

 恐らく父親だろう人が戸惑っているので、ここは一気呵成にミッションをこなしてやろう。

 「おはようございます。お父様、お母様、お兄様、お姉様。遅くなり申し訳ございません」

 と、スカートを摘み片足を後ろにして軽く膝を曲げるカーテシーのポーズを取りながら、朝の挨拶をした。(後に母と姉そして、後ろで見ていたメアリー曰く、それはそれは完璧なカーテシーだったそうな)

 「あ、あぁ…。おはよう…」

 おぉ。流石お父様。二回目は固まりませんでしたね。

 お兄様は……、固まってますね。

 「あら、ついに着てくれたのね。ふふ…。良いわよ」

 「やりましたわね。お母様!」

 と、ハイタッチする母娘。貴族はやらないイメージだったんだけどな。

 そして近づいてくる二人。

 「おはよう。なんて可愛いんでしょう」

 「おはようクリス。やっぱりこっちの方が似合うわよ」

 絶賛するお母様とニマニマするお姉様。

 そうでしょうとも。そうでしょうとも。ふふふ。

 では、より期待に添えるとしましょうか。

 「あの、今後はずっとこういう格好を続けていこうと思うのです。それで、名前もクリストファーからクリスティーヌに変えようと思うのですが、どうでしょうか? 愛称も同じクリスのままですし」

 「ええいいわよ。ね、あなたもそう思うでしょう?」

 「あ、あぁ…。そうだな…。い、いいんじゃないか…」

 まさかの即答!

 お父様はお母様の尻に敷かれてるんだな。駄目押しにお父様にニッコリと笑顔を向ける。

 「今日からクリスは、クリスティーヌと名乗りなさい。その方が自然だろう」

 流石、お父様ちょろいですね。

 照れてるのか、顔が赤く目線を横にお姉様の方へと向けた。

 「ふぅ…。サマンサを見ると落ち着くな…」

 「それはどういう意味かしら? お父様」

 「いや、意味なんてないさ。さぁ食事にしようか…」

 無理矢理に話を終わらせ朝食をとり始めた。

 ちなみにお兄様は朝食の途中まで固まっていて、横にいる私に気づいて狼狽えていた。

 よく見ると、お兄様も女装似合いそうなんだけどなと思いながら朝食を済ませた。

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