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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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37 オムライス


 「すいません。遅れました!」

 「遅いぞ。たるんでるんじゃないのか?」

 「ほんっとすんませんっ!」

 そう言って頭を上げた少年はぽかんとした顔でこっちを見た。


 「クリス何やってんだ?」

 「そういうリアムこそ、ここで何やってるのよ」

 「俺はここで修行させてもらってるんだ」

 「何だウィリアム。知り合いか?」

 「はい、料理長。こいつは俺に料理の楽しさを教えてくれた師匠です」

 師匠って言う割には呼び捨てなのね。別にいいんだけどさ。


 「ほう…」

 料理長の目が妖しく光った。

 「ウィリアムが言ってた子がこの子か。なるほどなぁ…」

 なぜかニマニマする料理長。

 そしてやっと降ろしてもらえたのも束の間。料理長は腕組みし怖い顔で微笑む。

 「よし。じゃあ何か作ってみろ」


 何を作ればいいのかの指示もなく、漠然と作れと言われた。

 ……なるほどね。つまり、私が戦力になるかどうかのテストというわけね。

 ここで右往左往しているようじゃ、ただの足手まとい。臨機応変に対応できるのかというのも見られるわけね。やるじゃないの。

 ウイリアムが目をキラキラさせながら期待に満ち満ちた目をしている。弟子にした覚えはないけれど、料理好き仲間として、久しぶりに私の腕を見せてあげようじゃないの。

 しかし、一体何を作ったものか。調理場の料理人達も値踏みするように見ている。

 作ると言っても、時間や手間のかかるものは論外。簡単で手短に出来るものがいいのかな?

 調理台の上には、最近王都でも広まっているお米があった。しかも炊いて暫く経ったやつだ。他にも使えそうな具材があるわね。


 「あの、料理長、これ使ってもいいですか?」

 「ほう……いいぞ」

 「ありがとうございます」

 コンソメスープがあったので少し使わせてもらおう。本当は顆粒とかのがあればいいんだけど、うちじゃないからないのよね。

 簡単すぎても良くない気がしたので、程よく工程がある料理にしよう。


 鶏肉は胸肉があるね。これを小さく切って、玉ねぎをみじん切りにして、マッシュルームを薄切りにしていく。

 コンロに火をつけ、フライパンに油を入れ火をつけ温める。

 この間に卵を三個ほど割って溶いておく。

 温まったフライパンに鶏肉を入れて炒める。火が通ったら、玉ねぎを入れしんなりするまで炒める。次にマッシュルームを入れ火が通ったら、塩胡椒をする。

 ケチャップを入れて酸を飛ばし、ご飯を入れてよく混ぜながら炒める。

 少し味見をする。………うん。こんなもんかな。

 別のフライパンに一かけのバターを入れ、焦がさないように溶かしあったまったら卵を入れる。

 半熟状態で先ほどのチキンライスを入れ被せていく。これがコツがいるのよね。卵が焼けすぎていたらくるまないし、固まってないと、ご飯が見えちゃうし。

 卵を寄せるようにして包んで……完成。

 あとは、さっき使っていいって言ってたコンソメスープを使って簡単なデミグラスソースを作りましょ。

 フライパンに赤ワインを入れて煮立たせる。そこにケチャップとコンソメスープを少し入れてとろみがつけば、なんちゃってデミグラスソースの完成。

 これをオムライスの横にかけて、卵にケチャップをかければ……完成。どうよ。


 「なんだこれは…」

 「オムライスだよな」

 「そうよ。よく覚えていたわねリアム」

 「オム…ライス…」

 「熱いうちにどうぞ」

 スプーンを取って、ひとくち口に運ぶ料理長。その瞬間膝から頽れる。痛そう…。

 「なんだこれは…。なんなんだこれはー!」

 再び立ち上がり、パクパクと食べ続けていく料理長。お腹空いてたのかな?

 米の一粒も残さずに平らげ、満足そうな顔をする料理長。


 「うまかった」

 「お粗末様です」

 「副料理長でいいか?」

 「はい?」

 「いや、役職だ。こんなうまいもんをパパッと作っちまうなんて、流石だ」

 「ははは。遠慮しておきます。本当の副料理長さんが睨んでますよ」

 「副料理長が何人いてもいいだろう」

 いいわけないだろう。

 「やっぱクリスはすげぇや」

 一番誇らしそうな顔をするウィリアム。それに続くように私の頭や肩に背中を叩いてくる料理人達。痛いからやめてね。

 そして、物欲しそうに私を見てくる料理人達。


 「あの…何か?」

 「俺達もそれ食べたいんだが」

 「お前ら作り方見てたんだから、自分で作ったらどうだ?」

 「料理長たけずるいですよ」「そうですよ。先に一人だけお昼食べて」「もう私の口はそれですよ」

 あぁなるほど。料理長が上手い事お昼を作らせたって事ね。

 そして収集がつかなくなったあたりで、ニッコリ笑う料理長。

 「おっし。じゃあテストとして人数分作れ」

 なんという無茶振り。さっきのがテストではないの?

 料理長の言葉にキラキラした目で見てくる料理人達。嫌だと言える雰囲気ではないわね。

 「はぁ…。分かりましたよ。でも、人数分だと時間かかりますよ?」

 「かまわん」「構わないわ」「待つよ」「時間はあるから、気にしなくていい」

 そう言う事じゃないんだけどな。まぁいいや。うたうだやっていても仕方ないから作りますよ。

 はぁ…。もっと簡単なのにすればよかったわ。


 そして、人数分のオムライスを作り終えた。大丈夫かしら? 明日腱鞘炎にならないわよね? あのフライパン結構重いのよ。

 「クリスって言ったったけ?」

 「あ、はい」

 副料理長がこっちを、真面目な顔で見つめ、頭を下げた。

 「脱帽だ。今日からお前さんが、副料理長だ」

 「遠慮しておきます」

 本当に笑えない冗談だわ。


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