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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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30 雪が降る前に


 怪しい光が点々とつく暗い研究室。

 その室内に五人の人物が培養槽の前で立ち尽くしていた。


 「……これ…やばい…かも……」

 「そう…よね…。というかこれってあれよね」

 「アレだね」

 「ねぇ、どうしてこんな事になっているのよ?」

 「そんな事聞かれても分かりませんぞ!」

 ムックが培養したであろう細胞片に何らかの遺物が混入したのが原因なのだろう。


 「そもそも排出の要求を受け付けないので、現状このまんまなんですぞ」

 「…機械…点検…したけど…異常なかった……」

 「これが何かしてるって事?」

 「…そう…かも…しれない…でも…違う…かもしれない……」

 想定外の事態に五人はただ黙る事しかできなかった。


 「そういえば、オパールレインの人なら何か出来るんじゃないかい?」

 「どういう事よ、シド兄?」

 「いや、あそこなら大抵の事は力技で出来るだろう? 僕らは頭脳派だからそういう事には慣れてないし」

 「ただの頭でっかちの間違いでしょ。でもまぁそうね。クリスのところなら何とか出来るかもしれないわね」

 「じゃあ行こ……」

 「じゃあ、私が行ってくるわ。久しく会ってないもの」

 「いや、私も……」

 「ソフィア姉様が行くなら私も行きたいわ」

 「あら。じゃあメリーと二人で行くから、ここの留守番よろしくね?」

 有無を言わさない圧に三人は屈し、ただ頷く事しか出来なかった。


 「あ…でも…早く行った方がいい…天気予報だと…この後大雪…高確率で……」

 「あら、それは大変ね。じゃああったかい格好して早く行きましょ」

 「ソフィア姉様。車でも行けますわよ?」

 「大雪が降ったら、例え四駆でも立ち往生しちゃうわよ。北陸とか東北並みの降り方してるもの」

 「(私は立ち往生してもいいのに。密室でソフィア姉様とラブラブ…)」

 ちなみに、車が普及し始めたエーレクトロンの街中でも雪の影響は大きく、至る所でスタックし立ち往生したり、事故で道を塞いだりと交通機関が麻痺していたりする。

 鉄道ではラッセル車を走らせている為、通常運行しているが、今後の大雪では除雪が間に合わない可能性がある。

 つまり、大雪で汽車が止まる前にオパールレイン領へ行かなければいけないのだ。


 「まぁ、最悪大雪で動けなくなったら、向こうで泊まって、美味しいお鍋でも食べて待ちましょ、メリー」

 「はいです」

 「あっずるい」「ずるいですぞ!」「…ずるい…」

 三馬鹿がそれぞれに『ずるい』と非難の声を上げる。


 「あんたたち三人ともご飯に興味ないでしょ」

 「最近は日本食が恋してくてね…。何でもっと食べておかなかったのかと悔やむ毎日なのだよ」

 「そんなの知らないわよ…」

 「いいや。食べ物のありがたさを教えてくれたのはソフィアとクリス嬢ですぞ」

 「よし、感謝の意も含めてみんなで行こう」

 シドが『名案だ』といった表情で提案する。


 「ここはどうするのよ」

 「この大きさならまだ大丈夫だろう。そんな事より、私も鍋が食べたい。カニ鍋を要求する」

 「ほっほっほ。何を言っているんですかな兄者は。水炊きこそが至高ですぞ」

 「……ミルフィーユ鍋……」

 「まったくこいつらは…」

 呆れてこめかみを抑えるソフィア。

 「あの…ソフィア姉様…」

 「あぁ、ごめんねメリー。馬鹿なお兄ちゃんたちで…」

 メリーの目線に合わせるように屈むソフィア。

 「私はちゃんこ鍋がいいです」

 「……………」

 食い意地の張ったソフィアも、流石に呆れるしかなかったようだ。

 しかし、ソフィアは内心何の鍋を食べようかと思案し始めるのだった。



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