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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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28 久しぶりのメイド服


 パンをちぎって食べていると、サガさんが誰かを見つけたのか立ち上がり手を振りながら叫ぶ。大人しくできないのかなこの人。


 「おっ! おーい。プトラ! おーい」

 「ちょっとアンタ食事時は静かにしなさいよ」

 そのプトラさんとやらと一緒に来たウィラさんがサガさんを叱る。もっと言ってやってください。

 「もうなんなのにゃ」

 にゃ?

 顔を上げ見上げると、なんというか猫っぽい人がいた。


 「サガ…そんなに興奮してどうしたのにゃー…」

 語尾が猫ですね。

 「おぉ。ディンゴは既に知ってると思うけど、こいつは清掃担当の主任プトラだ。プトラ喜べ。今日からクリスがうちらのところに来るぞ。そしてディンゴも戻ってくるぞ」

 「おぉー…それは助かるにゃー……………」

 そう言いながらメイド長の両脇にプトラさんとウィラさんが座る。


 「そっかークリ坊もうちらの仲間かー」

 「クリスにゃん……あっ…唐揚げ姫の事にゃ」

 いつからクリ坊呼びに……。というか唐揚げ姫ってなんですかね。まったく次から次へと二つ名ばっかり増えて困っちゃうわ。

 そもそも、初日の胸肉の唐揚げはともかく、二日目のもも肉の唐揚げの材料はあなた達が用意したんじゃないの。頭まで下げてさ。

 

 という事で、久しぶりのメイド服なんだけど、やっぱりスカートはいいね。ずっとスカートばっかり履いてたからズボンは慣れなかったのよね。

 ルンルン気分で午後からの仕事場にみんなで向かう。

 やっぱり清掃と言ったらメイドの主たる仕事。故に担当している人が凄く多い。だからなのか、いくつかの班に分かれて城内のいろんな場所をそれぞれ担当しているらしい。

 そしてその取りまとめをしているのがプトラさん。ちなみにサガさんはこんなんでも班長らしい。


 「うぅ…。私の班にクリ坊を連れて行きたかったよ」

 「やっぱここはベテランの私のいるところじゃないとな。ちゃーんと可愛がってやるからなクリス!」

 「よろしくお願いします」

 「おう!」

 そのかわいがりはどっちの意味なんだろうね。まぁ、私は仕事をするだけだし。とりあえずやる事と、担当を覚えましょうかね。


 サガさん曰く、主に城内の廊下や部屋等一部を除いて午前中にやるのだそう。一部というのは王族の居住スペースや謁見用の広間や廊下等、貴族が来るかもしれないエリアを上級メイドが担当してやるらしい。明確に分けられているんだけど、なんだかんだ言って広間とか廊下とかはこっちに丸投げされていたりするらしい。

 なんでも上級メイドは貴族の子女だからだとか。

 午後は倉庫や水回りなどの掃除とゴミなど不用品の回収・分別・解体・廃棄とシメの作業になるらしい。


 「つーことで、今日からあたしが教育係だ。はっはっは」

 腰に手を当て大げさに言うサガさん。

 「はい。よろしくお願いします」

 「なんだよ。ノリ悪いなー……。ま、いいや」

 何というか凄くサバサバしてますね。


 「まぁ、午後だし、やる事っつっても集めたゴミの分別だな」

 そう言って連れてこられたゴミ置場なんだけど。

 「えぇ…なんですかこれぇ…」

 「いやぁ…寒いからさ。みんなそのまま突っ込んで放置しっぱなしなんだよ」

 ここに入る前に扉が少し歪んでいたから嫌な予感はしたんだけどね。

 「や、でも。生ゴミとかはちゃんと都度捨ててるから臭くないだろ」

 そういう問題じゃない。私の中の綺麗好きのゴーストが囁く。今すぐに分別するべきだと。

 そのあとの記憶はあんまりなくて、気付いたらきれいさっぱり片付いて空っぽのゴミ置場の前に立っていた。


 そういえばサガさんはどうしたんだろと振り返ると、あんぐりと口を開けて突っ立っていた。

 「く…クリス……すごいなお前…」

 「そうですか?」

 「あぁ。一年くらい溜まっていたものをこんな短時間でやっちまうなんて」

 今なんて? 一年? ここ数ヶ月の話じゃないの?

 「いやぁ。ここの掃除を任されていたんだけどさ。めんどくさくってつい溜め込んじゃってな。でもお陰で助かったぜ。あっはっは………ってクリス?」

 大らかなんじゃなくてただいい加減なだけだったのね。よくここまで放置していたわね。


 その後またもや私の記憶は曖昧なのだけど、どうやら正座させたサガさんを小一時間近く説教したらしい。何やってんの私。そんなのうちのメイドさん達にも……してたわ。めっさしてたわ説教。仕事そっちのけで遊んでるんだもの。そういえばみんな今頃何してるんだろうね。

 ゴミ置場を出る頃には空がどんよりと重く暗い色になっていて、今にも雪が降り出しそうだった。


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