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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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27 それは食べられません


           *      


 ついに今日で最後かぁ。楽しい事は時間が過ぎるのが早いね。

 まぁ、最後と言っても殆ど終わってるので、あとは確認するだけなんだけどね。

 

 昨日は散々な目にあった。

 寮に戻るなり、大量の鳥もも肉の唐揚げを作らされるというね。暫くは揚げ物は見たくもないよ。

 まぁ、メイドさん達が好きそうなレシピを書いてエタさんに渡しておいたので、あとはなんとかなると思う。

 という事で、気を取り直して中庭がどうなってるか見に行きましょうかね。

 昨日は暗い時に見たので、私はそこまで良く見えなかったのよね。


 寮を出て中庭の方に歩いていると、タロンさんが待っていた。

 タロンさんが私とディンゴちゃんを見ると、満面の笑顔でやってきた。

 「お、おはようございます」「おはようございます」

 「おはよう。それより、凄いことになっているよ」

 えぇ…。もしかして、また荒らされてたりするのかな? でも、そしたらこんな笑顔にはならないか。


 早く早くと急かされながら中庭へ到着すると、一瞬で目を奪われた。

 暗い時に見るのと違って、明るい時に見ると言葉では言い表せないくらいに綺麗だった。朝早いのもあるのかもしれないけど、淡く光っているようにも見える。

 昨日テオドールたんが言っていたけど、本当に妖精とかが飛んでいるようにも見える。そのくらい幻想的で綺麗だった。

 しかし、この時期に咲く花の数が少ないのによくこれだけ鮮やかになったわね。

 自分でやっておいてなんだけど、ちょっと信じられないわ。


 暫くそのまま眺めていたんだけど、これでいいかを含めて中庭を歩いて回りながら確認していく。

 組み合わせとかは別に問題ないんだけど、ちゃんと植わってなかったり、土が足らなかったりと些細な修正をして、ゴミを片付け、掃除をする。

 うん。これでいいんじゃないかな。私の趣味全開で申し訳ないけど、まぁ三日でやったんだし、王妃様も納得してくれるでしょ。


 中央に配置したプリムラもいいアクセントになってるし、パンジーやビオラもカラーリーフとの組み合わせでめちゃくちゃお洒落になっている。

 葉牡丹にクリスマスローズといい感じね。

 一人楽しんでいたら袖をつんつんされた。この感じも懐かしいわね。

 「なぁにソフィア…あっ…ごめんディンゴだったね」

 「……うん。いや…まぁ…はい……」

 凄く気まずい。そりゃあ袖つんつんする人なんていっぱいいるわよね。

 「それで、なぁに?」

 「あ、うん。これなんだけど」

 ディンゴちゃんが指し示したのはチェッカーベリーだ。これがどうしたんだろう。


 「これって食べられるの?」

 ふふ…。いやしんぼさんめ☆

 「これは観賞用だから食べられないわよ。多分鳥さんとかしか食べないんじゃない?」

 「そうなんだ」

 なんかがっくりきてるわね。

 「じゃあさ、じゃあさこれは」

 そう言って指し示していくペルネチア、シンフォリカルポス、センリョウとみんな観賞用のものね。食べてもおいしくないし、毒もあるわよって言ったらがっくりしていた。

 「あ、でもでも、ほらこのパンジーとビオラ。あと……えーっと……あそこのノースポール。あれは食べられるわよ」

 「えぇ…お花を…」

 一応エディブルフラワーと言って、食用になるんだよね。ケーキとかゼリーに飾る用のお花。まぁ、ここに植えてあるのはそう言った用途で育てられてないけど、さっきの実に比べたら全然食べられると思うわ。


 「ねぇクリス。私そこまで意地汚くないわよ」

 「あっ…そうよね…」

 そうね。私の周りには食べられればなんでもいいって人ばっかりだったから、つい……。

 そうして中庭を散策していると、パタパタという足音が聞こえてきた。

 「わぁーきれいー」

 この声はテオドールたんですね。

 声のする方に行くと、いつの間にかタロンさんが荒い息を吐きながら傅いていた。

 そんな息切らせながら急がなくてもいいと思うのよね。


 「わぁ。凄くきれいなお庭だねっ!」

 この中庭とテオドールたんの聖女服が凄く合う。つまりめちゃくちゃかわいいって事ね。

 見ているだけで日々の疲れが取れて癒されるわ。

 その後、テオドールたんを含め四人で庭を見て回り、お昼前に解散した。

 またあのテオドールたんの独特な料理は暫くはいいかなって思ったのもある。


 「今回は本当にありがとね」

 「いえいえ。こちらも楽しくできたので良かったです」

 「そう言ってもらえると僕も助かるよ」

 「私は、このままずっとここでもいいかな」

 「ディンゴ、それはさすがにまずいと思うよ」

 「ぐぅ…」

 「ははは。また機会があったらお願いね。大体春くらいに」

 これはまたお願いされるパターンかな?

 「えぇ是非!」

 ディンゴちゃんは前のめりで食いついている。

 まぁ私もいつまでここにいるのかは分からないけど、春になったらまたお手伝いに来てもいいかもしれないわね。


 そんな感じでタロンさんと別れ、寮の食堂へ向かった。

 お昼には少し早かったかなと思ったんだけど、既に結構な人数が食事をしていた。

 ディンゴちゃんと二人で今日のランチを受け取り席に着く。

 「あれ、クリスにディンゴ。今からお昼かい?」

 「えぇそうですよ」

 同じくトレーを持ったサガさんが私の横に座る。

 「なんかクリスが昼食ってんの見るの久しぶりだな」


 食べ逃したの多いですからね。まぁ、小食ですけど燃費いいんでそこまで気にしてはないんだけどね。

 「ここ宜しいですか?」

 「はいどうぞ…ってメイド長」

 「げっ…」

  慌てて立ち上がろうとしたところで制される。

 「構いません。寧ろこちらがいろいろお願い事している側なので…。それよりもサガ。げっとは何ですか。げっとは…」

 四人同時にいすに座ると、メイド長がサガさんを軽く睨む。

 「いやー別にぃ……ははは…」

 「はぁ……ところで中庭の方は終わったのですか?」

 軽くため息をついて私とディンゴちゃんに問いかけるメイド長。


 「はい」「はい。先ほど終わりました」

 「そうですか。それは良かったです。という事はこの後は特に仕事は入ってないのですね」

 「そうなります」「そうですね」

 「では、折角なので午後からは清掃のお仕事でも構いませんか?」

 「あっはい。大丈夫ですよ」「問題ないです」

 「おっ! ついにクリスもうちの部署かぁ」

 私の頭をわしゃわしゃしながら喜ぶサガさん。髪の毛が乱れるからやめてほしい。


 まぁ、了承せざる得ないじゃない? あぁでも今日の午後は自室でだらだら出来ると思ったんだけどな。世の中そう都合よくいくわけないか。


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