25 組み合わせを考えている時が一番楽しい
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翌日。
頼んでおいたお花や低木に高木と五台の荷台に積んであった。
大量のお花がところ狭しと積んであり、いろんな香りが充満している。ここだけ香水売り場のようね。
とりあえずこれを中庭まで運ぶのが重労働ね。これだけ昨日の第二騎士団の人達にお願いすれば良かったわ。まぁ、お願いしたら満面の笑みで最後まで居座る可能性もあるのよね……。
そうしてある程度運び終わったので、どのお花をどのあたりに植えるかを決めて苗のポッドを置いていく。
そしてタロンさんと打ち合わせ…といっても私が一方的に言っているだけなんだけど…。
「これはどうしてここなんだい?」
「やっぱりある程度色を統一したほうが綺麗に見えるんですよ」
「へぇ。なるほどね」
「でも、全部おんなじ色にするとボヤけるんで、アクセントになるものも必要ですね。ほら、ここにこれとこれを置くと一気にそれっぽく……」
「なるほど」
「それでこっちの方は、お花だけだとごちゃってしちゃうんで、お花を少なくして、リーフ系を多めに入れる事で、鮮やかな色が際立ちますね」
「ふむふむ」
「コンビネーションが重要ですよね。お花と葉っぱの。大きさや長さも重要ですし」
「勉強になるなぁ…」
「で、中央の辺りは、王妃様がお茶を飲むとの事なので、逆に華やかな感じにすれば…っと。まぁざっと軽く置いてみましたけど、こんな感じでどうですか?」
「今から師匠と呼ばせていただいても?」
「お断りします」
「そんな! これだけ知識とセンスを持っているのに」
「いえいえ、タロンさんが責任者なんですから、ポッと出の私が師匠なんておこがましいです」
「最初の方にも言ったけど、僕はセンスないからね。これからは師匠の元で勉強していきたい」
なんでいつもこんな事になるのかしら? 今度は師匠って一体私はどれだけ肩書きを貰えばいいのかしら?
その後、状況をよく分かってないディンゴちゃんが参戦し、二人を宥めるのに、無駄な時間を使ってしまった。
「はぁ…。疲れた…」
「大丈夫かい?」
一体誰のせいだと思って。全然進んでないのにいっつも精神的に疲れるのよね。
まぁいいわ。植えて植えてストレスを解消してやるわ。おほほほほ…。
そう思ってスコップを持った辺りで声を掛けらた。
「あれ、クリス?」
こえのする方に振り向くと、なんとテオドールたんがいた。
「クリスー、クリスー」
まさに花が綻ぶような笑顔で小走りに近寄ってきた。
そしてそのまま抱きつこうとするので、慌てて制止した。
「あっ、ダメですよテオドール様。折角の衣装が土で汚れてしまいますよ」
「むぅ〜。そんなのいいのにー」
拗ねた顔もかわいいっ。
改めて見ると、冬仕様の聖女服に身を包んでいた。かわいいしあったかそうだね。ちょっと私も着てみたいわねそれ。
おっと、癒されている場合じゃないわね。
「それでクリスはここでなにやってるの?」
「私ですか? 今からお花を植えていくんです」
「えぇいいなぁ。僕もやってみたいな」
その格好だと難しいですね。
「テオドール様どうかされましたか?」
私が苦笑いしていたら、後ろから弾んだ声でタロンさんがテオドールたんに声を掛けた。
「あっ…その…。僕もクリスと一緒にお花を植えたいなって思って。ダメかな?」
「そんな、とんでもございません。大歓迎ですよ。是非!」
「本当に! ありがとう。じゃあ…」
「あっ、ダメよ」
「えぇ…なんで?」
満面の笑顔から一瞬で悲しそうな顔になる。
「その格好じゃ汚れちゃうから、汚れてもいい格好じゃないとダメですよ」
シュンとしたのも一瞬で、すぐにいつもの表情に戻る。
「わかった。パ……お父様に聞いてみる」
そう言ってパタパタと小走りで走っていく。かわいいなぁもう。
タロンさんもそう思ったのか、顔がにやけてだらしなくなっている。
とりあえず、テオドールたんが来るまでまだ時間はかかるだろうから、出来るところからやろうと振り返ると、ムスッとした顔のディンゴちゃんが睨んでいた。何で?
高木だけは重いので、タロンさんに植えてもらって、残りの低木やカラーリーフにお花と植えていくだけにした。
そうしてテオドールたんを含め四人でそれぞれやっていく事になったんだけど、意外な事に、テオドールたんをタロンさんが教えながらやっていた。大変じゃないといいんだけど。
そしててっきりタロンさんと一緒にやると思っていたディンゴちゃんは私と一緒にやっている。
なぜかテオドールたんに対抗意識を燃やしているようだけど、まぁ私には関係ないしいいか。




