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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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21 お花屋さんは見てるだけでも楽しい


 「へぇ、こんなお店があるんだね」

 王城から一番近いお店にやってきた。近いといっても、駅の方が近いのだけれどね。正直、他の支店の場所なんてうろ覚えだし。

 ちなみにこのお花屋さんはうちの商会、ラピスラズリのラズリの方で管理しているお店だ。主に高級品で貴族向けがラピス。庶民向けがラズリという位置付けだ。


 「こんにちはー」

 「はい。いらっしゃいませー……って、クリス様じゃないですか。そんな格好でどうしたんです?」

 「「クリス…様?」」

 お店に入るなり、私と面識のある店長のディアマさんが様付けで挨拶をしてきた。

 まずい。いや別にまずくはないんだけど…。別に隠す理由もないんだけど、なんと言ったものか…。


 「あぁ、うちはすべてのお客様に様付けしているんですよ」

 グッジョブ。時給100カラット上げるよう言っておくわね。

 というか、そうよね。普通にお客様だもの。様付けするわよね………。いや、普通はさん付け止まりか………。いや、今はそんな事考えても仕方ないわね。


 「あぁ…なるほど…。それにしてもいろんな花が売っていますね」

 「そうでしょう。うちは王都中のお店の中でも一番の品揃えですよ。本日は何をお探しで?」

 「あ、はい。実は………」

 代表してタロンさんがお花以外で必要なものを数量合わせて注文していた。


 「はい。こちらは在庫ありますので大丈夫ですね。いつまでに必要ですか?」

 「えっと、明日って大丈夫ですか?」

 「明日ですね。はい。どちらに納品ですか?」

 「ディアマンテ城になります」

 「えっ……お城にですか……ちょっと確認しますねー…すいませんー……」

 そう言って私の手を取って奥へ連れていく店長。私と店長が奥でこそこそ言い合っていたらおかしいでしょう?


 「あのクリス様、今回は一体何をやっているんです?」

 「何って…何かしらね。多分王妃教育?」

 「どうして疑問系なんですか? それより王妃教育ってこういう事やるんですか普通?」

 「それが分からないのよねぇ…。でもまぁ、体動かせてるから私的にはオッケーよ」

 「クリス様がそれでいいんならいいですけど、遂に結婚する決意ができたんですね」

 「いや、それとこれは別よ」

 「えっ? 結婚する気ないのに王妃教育してるんですか?」

 「いや、なんかお父様が行けって言うから…」

 「じゃあ何か意味があるんじゃないですか?」

 「ホントにそう思う?」

 「否定しきれないです」

 そんなやりとりをしていると、後ろからタロンさんが声をかけてきた。


 「あの何か問題でも?」

 「いえいえ、大丈夫です。明日納品させていただきます」

 「そうですか。ありがとうございます。ところで、店長さんとクリスさんは仲がいいんですね」

 「え、えぇ…そうですね。懇意にさせていただいております」

 まぁ間違っちゃいないけどね。

 ニッコリと爽やかイケメンスマイルを向けるタロンさんに、一瞬たじろぐ店長。


 「タロンさん、お花はどうします?」

 「うーん。僕あんまり詳しくないんだよね。ちょっと見てみてもいいかな?」

 「はいどうぞ。苗に関しては、そちらの建物にあります」

 「分かった。ありがとう」

 お礼を言って種苗の置いてある建物の中へ入っていった。

 そういえばディンゴちゃんずっと静かだなと思っていたら、いつの間にか苗を見ていた。早いね。ちなみにディンゴちゃんが見ているそのお花根っこに毒があるやつよ?


 「あの人凄いイケメンですね」

 「あれ、ディアマさんもやっぱりイケメンが好きなんだ」

 「そりゃあまぁ、私だって女ですからね。でも、私はクリス様の方が好きですよ」

 「そ、そう……」

 ホント、うちの人はブレないね。でも、一瞬イケメンスマイルに圧倒されていたよね?


 その後、寄せ植え用のお花を三人で見ていたんだけど、タロンさんもディンゴちゃんもどれがいいのか分からないって感じだ。

 それに一月も後半となると数も種類もそれほど多くない。


 「クリス、葉っぱばっかりだね」

 「そうだね。でもこの葉っぱが寄せ植えには最高なのよ」

 「これが?」

 ただの雑草じゃないの? みたいな感じで疑うディンゴちゃん。

 「そうよ。カラーリーフって言うんだけど、よく見て。緑、赤、紫、白、茶色、黄色と。お花みたいにいろんな色があるでしょ」

 「確かに」

 「それにね、緑と言ってもいろんな色があるし、他にも混色だったり、斑らだったり、(ふち)が白かったりするし、形も細長かったりギザギザしてたりいろいろあるでしょう? それを組み合わせるのよ」

 「へぇ…。クリスはなんでも知ってるのね」

 「まぁ、これは趣味みたいなものだし」

 「それでも凄いよ」

 「そうかな?」

 「そうよ。ねぇ、もっと教えてくれない?」

 「いいわよ。じゃあ、これヒューケラっていうんだけど、これだけでもこんなに色があるのよ」

 「ほぇー…」


 そんな感じで、いろんな種類のお花を見て回り、途中からタロンさんも混じり、三人で一通り見て回った。

 途中からディンゴちゃんがタロンさんを見る頻度の方が増えていったのはいただけないわね。

 「クリスさんは本当に詳しいんだね。僕なんて刈りやすい木の種類しかわからないよ」

 「いやぁただの下手の横好きですよ」

 「そんな謙遜する必要ないんだけどなぁ…。ところで、どういう感じにするんだい?」

 「そうですね。まぁ、こういうのはある程度色を統一した方がまとまって綺麗にみえるんですよね。……例えばこのハボタンなんかをこうして……やると………どうです?」


 たまたま目の前にあったハボタンを丸いプランターに入れただけだけど、これでもそれっぽく見えるでしょう?

 ちなみにハボタンはドレス感あって好きなのよね。

 「確かに…僕にはないセンスだ」

 「ドレスみたいね…」

 あら。ディンゴちゃんとは感性が合うのかしらね?


 「もしよかったらなんだけど、植えるお花を選んでもらえないかな?」

 「えっ、私が?」

 「うん。だって僕にはこれを上手く組み合わせられる自信が無いし、どれがどれだけ必要か皆目見当もつかないよ」

 「そうですか…。ちなみに予算は?」

 「今回は急ぎだし、王妃様案件だからこのくらいだよ」

 両手の指を開いて見せた。

 「それは金貨ですか?」

 「白金貨だよ」

 「「えっ!」」

 私もディンゴちゃんも驚いてしまった。まさかそこまで予算がついてるなんて思わなかったわ。


 でも最初に必要な物……レンガとか土とかウッドチップとかを頼んでいたのよね。それも見直さないといけないわね。

 「分かりました。じゃ、ちょっと店長と話してきますね」

 「うんお願いね」

 そうして店長のところへ行き、必要なものを伝える。


 「レンガとか芝生とか柵とかは全然問題ないですけど、苗や低木なんかは揃えられるか分かりませんね…。時期が時期ですし…」

 「でもこれでちゃんと納品できれば王室御用達になるんじゃない?」

 「分かりました。明日は難しいですが、明後日なら王都中の支店や倉庫から集めてきます」

 変わり身が早い。まぁ、商人らしくていいんだけど、ちゃっかりしてるわね。


 「頼んだわよ」

 「ちなみにクリス様からは何かご褒美貰えないんですか?」

 「うーんそうねぇ…」

 何かないなかなとポケットに手を突っ込んでみるが何もない。

 「あの…そういんじゃなくて…」

 「そうよね。私ったらいやだわ。あはは…」

 そうだよね。ポケットの中のものなんていらないわよね。どこかの飲食店の割引券でいいかなって思っちゃったわ。財布の中にはあるかもしれないけど、先に制されてしまった。


 そうね…。今度プレナイトピーク領にスキーリゾート作る予定があるのよね。ロベルタさんとそんな話していたのを思い出した。

 「じゃあ、今度、王都の従業員全員二泊三日の旅行券出してあげるわよ」

 「え、本当ですか? じゃあ張り切って最速でやりますね」

 現金だなぁ。でもまぁ、これで必要数は揃うわけで、あとは残り三日で終わるかどうかよね。


 「あ、レンガとかは明日の朝一でお願いね」

 「もちろんです」

 上手く話ついたよ。と、二人に話そうと戻ったらちょっといい感じになっていたので暫くそのままにしておいた。


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