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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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18 後先考える人と考えない人


 「あんたやるじゃないの」

 声の聞こえる方を探すと、それは城の上だった。

 その声の持ち主はそのまま勢いよく飛び出し、一回転して着地した。


 余分なスカートの裾を片手で掴んでバサバサさせていた。まるで、フラメンコでも踊っているかのよう。片腕上げているしね。薔薇の花でも咥えてたら完璧だったわ。

 掴んでいたスカートの裾を無造作に放り、ランウェイでも歩くのかといったような感じで近づいてきた。


 「いやぁ、すまないねぇ。直ぐに止めさせようと思ったんだがね、中々どうしていい動きをするじゃないか。ついつい最後まで見てしまったさね」

 あの高さから飛び降りてピンピンしているとは、恐れ入ります。でも見ていたなら止めて欲しかったわ。


 そんなグレートさんは、両腰に手の甲を当て、考える仕草をする。

 「うちの孫の嫁に貰いたい位だねぇ」

 「は…はは…」

 「おや、脈なしかい。残念だね」

 随分とサバサバした方ですね。苦笑いしただけで諦めてくれるなんて。


 その時、城の方から大勢の人が走ってくるのに気づいた。

 「お、おふくろ!」

 「あんた遅いよ」

 「飛び降りるなんて聞いてないぞ」

 「言ってないからねぇ」

 「危ないだろ! もう歳なんだから無理するなよ」

 「全くこの子は心配性だねぇ。あたしじゃなくて、そういう心遣いは部下に分けてやんな」

 いや、あんなところから飛び降りたら、誰だって心配するわよ。


 「そんな悠長な事言ってないで、ほら、縛っちゃいなさいな」

 「あ、あぁ。そ、そうだな。おい、お前ら!」

 そうして地面とおねんねしていた副団長派の騎士達は、縛られて何処かへと連れて行かれた。


 「まったく。本来ならあんたが管理して教育しないといけないんだよ? それをあんな男に付け込まれるなんて恥を知りな!」

 「返す言葉もない」

 「あんたに団長はまだ早かったかねぇ」

 もうその辺にしてあげてくださいよ。

 かわいそうなくらいシオシオになっている。心なしか頭も寂しく感じる。


 「そんな事よりあんた。こちらのお嬢さんに何か言うことがあるだろう?」

 そう言われて、イオ団長は私とサミットさんの前に立つと、深々と頭を下げた。


 「この度は、危険な目に合わして、大変申し訳なかった。こんな謝罪で許してはもらえないだろうが、今後はこのような事が起きないよう努めて……」

 「あんた。もっと素直に謝れないのかい?」

 「いや、おふくろ…こういうのはただ謝ればいいってわけじゃ…」

 「はは…いいですよ。受け入れます。俺ぁ、それだけで十分です。それに、ぺこぺこしてたら部下がついて来ませんぜ」

 よっこらせと立ち上がり、イオ団長を起こす。


 「こりゃあ、どっちが団長か分からないねぇ。あっはっはっは!」

 豪快に笑い、それに釣られてイオ団長もサミットさんも笑い出した。

 「しかし、嬢ちゃん。よくあんなに動けたな。あんなんでも一応うちの騎士だぞ?」

 いやぁ…弱かったです。たまに出没する変態とか、盗賊の方が強いくらい。


 「そうだねぇ。よかったらあんた騎士団に入らないかい? 今時の騎士団は女も多いさね」

 「ごめんなさい。私は今のままでいいので」

 「ありゃま。振られちまったねぇ」

 「そうだな」

 「まぁ、何か困ったことがあったらいいな。まぁ、あんたならそんな事ないだろうがね。はっはっは」

 「はは……」


 グレートさんは、私に脈が無いのを悟ると、あっさりと踵を返して、笑いながら去っていった。

 その後、イオ団長が、今回壊した足場の撤去と補償を引き受けるとの事。最初はサミットさんも遠慮していたけど、ほぼ全部新しく購入する事を考えて、申し訳なさそうに承諾したのだった。


 まぁ、腹いせに壊したのは副団長派の団員達だから、弁償するのは当たり前よね。

 もしかしてだけど、こうやって王城内の問題を解決させようとしてるんじゃないわよね? 本当に王妃教育ってこういうのなんですかね? 

 正直、王妃になんてなりたくないので、そろそろ『失格』と書かれたでっかい看板出していいんですよ?


 ある程度話がまとまり、ぺこぺこ頭を下げながらイオ団長は城の方へと小走りで去っていった。

 「なんか、大変な事に巻き込んじまってすまねぇな」

 「いや、慣れてるんで、大丈夫です」

 「その歳でそんな達観できるなんてすげぇな」

 「そんな事よりも、足場が崩れたときに出来た傷どうするんです? あれが邪魔で作業出来ませんよ」

 「それなんだがな。明日から部下達が復帰出来るらしくてな。親方から教えてもらった方法をあいつらにも教えてやりたいんだ」

 「じゃあ、私は今日でお役御免ですね」

 「正直ずっと居てもらいたいくらいなんだがな」

 「じゃあまた何かあったら呼んでくださいよ。次はどこに移動になるか分かりませんけど」

 「普通はそんなに移動しないんだけどな。まぁ、その時は頼りにしてるぜ親方」


 サミットさんと固く握手をし、その日はもう何も出来ないので寮へ戻る事にした。

 昨日はお風呂に入れなかったので、今日は早めに入ってゆっくりしたい。でも、こんなお昼前からお湯が入ってるわけないのよね。勝手に入れたら怒られるかしら?

 そもそも下級メイドが勝手にそんな事して許されるのかしら?

 とりあえず戻って判断を仰ぎましょう。


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