10 これ、メイドの仕事じゃないよね?
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翌日。朝食が終わり、朝礼後、私とディンゴちゃんの移動の話があった。
私は洗濯からまさかの城の補修要員に回された。それもうメイドの仕事じゃないですよ。どう考えても男性の仕事では? まぁ、今は女の子になってるからあれだけど、中身が男だとバレたのかしら。
朝礼中、他のメイドさん全員がざわざわしたくらいだもの。
メイド長も申し訳なさそうにしていたけど、たまたま欠員が出て緊急で人出が欲しかったのだそうだ。まぁそれなら仕方ないか。
しかし、入って一週間のメイドを補欠要員でだすのだろうか? まぁ、考えても仕方ない。上の方で決めた事だし、今の私はそれに従うだけだ。
という事で、メイド服から作業着に着替えて指定された城の東側にやってきた。
西側よりもやたら広い。騎士団が訓練するのに使えるくらいの広さだ。
よく見ると、地面の芝生が所々剥がれているし、少し離れたところは地肌が露出している。
「おう。お前が新しい小間使いか。俺は修繕課のサミットつーもんだ。よろしくな坊主」
「あ、はい。よろしくお願いします。クリスと申します」
坊主って言われたけど、まぁ、子供全般にそういう言い方してるんでしょうね。って、悪かったわね。子供みたいな身長で。伸びないんだから仕方ないでしょ。
あれだけ牛乳飲んでいるのに背も胸も大きくならないのよ。
でもまぁ、それでも飲み始めの頃に比べれば結構伸びたと思うのよ。一応150はあると思うわ。多分。
「そうか。でも、てっきり男を寄越すもんだと思ってたけど、まさかこんな小さい子供とは思わなかったぜ。まぁ、そんな大変な事はやらなねぇから安心しな」
悪気はないと思うんだけど、結構言葉遣いが荒いわね。まぁ、そっちのが肩肘張らなくていっか。
うちの使用人くらいの口の軽さだから、自然体でやっていけるわ。
「しっかし、お前さんそんな格好してるのにどこからどう見ても女だな。普通、こういう格好して帽子被ってりゃ少年っぽくなるのに、不思議だなぁ…」
サミットさんは上から下まで何回も視線を動かしながら確認する。
まぁ、私としてもホント不思議に思うのよね。醸し出す美少女感が邪魔するのね。
「こんな子怪我させたらやべぇな」
「お気遣いいただきありがとうございます。でも、鍛えてるんで大丈夫ですよ?」
「ははっ…。鍛えてるねぇ…。そんな華奢な体でか? まぁ、いないよりはマシか……」
あぁ…これ戦力として見られてないわね。まぁ、仕方ないっちゃあ仕方ないけどさ。
多分、修繕以外の雑用全般をやってもらおうって感じなのかな? で、何をするんだろう。
「じゃあ、今日からここの壁一面の補修なんだが」
「えっ! この量を二人で?」
「だから言ったろう? 他の奴ら全員風邪で寝込んじまった。一週間は来られないんだとよ。上からはこの隙間風なんとかしろって言われてっけど、今やる内容じゃねえんだよなぁ」
「何でこんな事になってるんです?」
「年末に騎士団のバカ共が訓練中に穴あけちまったんだとよ。そしたら、そこからヒビが入るわ、老朽化したところが崩れるわ…と、まぁそんな感じだ」
これは大変だわ。結構上の方までいってるもの。綺麗に足場を組んであり、崩れ落ちたであろう破片とかは綺麗に回収され、代わりのレンガなどの資材が積まれていた。
「今日に至るまで準備をしてきたんだ。そしたら、寒さと疲れからなのか、部下全員が風邪ひいちまってな。足場は組んであるんだが、流石に俺一人でこの量はきつくてな。今の所、騎士団が郊外の広場で訓練してるんだが、遠くて大変だと愚痴られてな。応急処置的な感じでもいいから早く埋めろって言われてるから、そんなに気負う必要はねぇ。とりあえず、教えながらやってくか」
「はい」
「おう。元気があっていいな」
意外や意外。まさか、普通に補欠要員として修繕に加わるとは思わなかったわ。私でいいんだろうか。普通に返事しちゃったけどさ。
その後は気をつけるべきところを説明され、教わった通りに補修をしていく。
「中々筋がいいな。以前やっていたのか?」
「いやぁそんなには…」
確かにうちでも手伝いでやっていたりしたけど、ここまで本格的なやつは初めてだ。
「あー…」
「どうした?」
「いや、私が提案するのもなんですが…」
「そんなの気にすんな。言ってみろ」
「あ、はい。ここのやり方なんですけど……」




