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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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09 あれ? 思ったよりキツくない


 という事でサトリアさんと一緒に城内の担当ルートから洗濯物を回収して回る。

 かなりの量だ。これを毎日かぁ…大変だなぁ。


 「クリスさん? あの…重くない?」

 「まぁ、重いと言えば重いですが…」

 「そ、そう…よくそんな華奢な腕で持てるわね…」

 「まぁ、このくらいなら」

 「何かやってたの? まぁ、詮索はしないけど関心だわ。今時の新人はみんな根を上げちゃうんだもの」

 まぁ、普通の女の子にはキツいよね。毎朝訓練していて良かったわ。


 そうして、回収して、洗って、乾燥させて、アイロン掛けして、畳んで戻してを繰り返していく。

 間にお昼休憩と二回のおやつ休憩を挟んで十六時前には終わるが、労働時間長いな。

 「まぁ、こんな感じて一日やるわけだけど、クリスさんは、筋がいいから洗濯機で洗えないドレスとかの洗い方を教えてもいいかもね」

 そういえばそういった服は無いなとは思っていたけど、別部署だったのか。

 そうよね。王妃教育だもの。楽なワケないのよね。自分が着た物の洗い方を覚えるのは当然よね。


 その日の夜。

 自室でディンゴちゃんと初日の仕事について語り合う。

 「どうだった?」

 「オラは城内の掃除しながら、言葉遣いの勉強だぁ」

 一日で結構マシになってる気がする。方言みたいのは仕方ないけど、イントネーションはほぼ完璧だ。一日でこんなに修正されるもんなんだろうか。


 「クリスは、どうだったの?」

 「私は肉体労働かな」

 「そんな華奢な腕で大丈夫かぁ? 折れてないだか?」

 「大丈夫よ。鍛えてるもの」

 ニッコリ笑ってそう返すと、何故か頬を赤らめる。寒いから体調崩しちゃったのかな?

 「じゃあそろそろ寝ましょうか」

 「え、もうだか?」

 「だって顔赤いから、風邪ひいたらまずいでしょ?」

 「どうしてそんな話になってるだか」


 翌日、一通りこなした後。

 「凄いわね。昨日よりスムーズじゃない。大体の子は筋肉痛になるのに…」

 「え、あのくらいで?」

 「それ他の子の前で言ったら怒られるわよ…」

 という事で、今日はドレスを洗う方に回されたんだけど……。


 マジか。これドライクリーニングじゃん。絶対水での手洗いだと思ってたよ。

 入った瞬間ムアッという熱気が襲う。今の一撃だけで背中とか結構汗ばんでいる。

 「冬はいいんだけどね。夏は灼熱地獄だから大変なのよ」

 そう言いながら、絶対に水で洗ったら縮んだりしそうな高そうな服が山のように積まれていた。

 「あの、これ全部ですか?」

 「そうよ。王妃様は勿論、上級侍女や官僚達の服もここね」

 この量をこなさないといけないのか。

 「流石に最初から王妃様のドレスとかは任せられないからね。まずはこっちの服から」

 恐らく上級侍女の服だと思うんだけど…まぁ高そうな生地ですね。これを水洗いしたらクレームに発展しそう。


 横でサトリアさんが、まずは、ポケットの中身を確認して、付属品とかの有無を確認し、ボタン等外れそうなものが無いかを確認。そしたら染抜きやらシワ伸ばしなどのやり方を教えてくれた。

 「そうそう…。とても筋がいいわね。ねぇ以前にやった事あるの?」

 「いや、似たようなのはあるんですけど……」

 「そうなんだ。正直私より上手いまであるわ」

 「そんなワケないじゃないですかぁ」

 そんな感じで何着か処理していく。


 「あの、ここなんですけど、こういう感じにやるとよくないですか?」

 「あら、ホントね。そっちのがいいわね………って、絶対に経験者でしょ?」

 「まさかぁ…」

 「でもこれなら明日はドレスも任せていいわね」

 そんな感じで、冬なのに汗だくになりながらランドリーメイドの職務を一週間続けていった。

 室内がめちゃくちゃ暑いので、休憩時に外に出ると寒さが丁度いい。冬の間はここでいいかな。


 「クリスさん、入って一週間で主任になるなんて凄いわね」

 「いや、あの…」

 正直予想外です。何で入ったばかりの私が最終確認任されるのかしら。

 「もう私から教える事は無いわ。卒業よ」

 いやいや…。卒業って。別の担当部署に移動って事ですかね?


 「クリスさん仕事早いから、すごく助かってたんだけど、メイド長がいろいろやらせた方がいいって言うから……仕方なく……うぅ……仕方なく………」

 最後は絞り出すように語るサトリアさん。

 その言葉と同時に、一緒に働いていた他のメイドさん達も涙ながらに拍手を送ってくれた。

 「いつかまた一緒に仕事しましょ」「うちの娘と同じくらいなのに立派よ」「絶対に戻ってきてね」「期待の新人だぁ」

 等と褒められまくる。ちょっと照れくさいな。

 その日は普段より1時間以上早く仕事を終ららせたのだった。

 

 その日の夜。最近顔が赤いディンゴちゃんと担当部署が異動になった話をした。

 「流石だね。あ、あたしも明日から別のところに異動になるだ……なるのよ」

 「へぇ、じゃあ大体一週間でどこが適正か見るのかな?」

 「いや、普通は異動とかあまり無いらしいよ」

 「そうなんだ」

 そういえば、ディンゴちゃんの方言や訛りも一週間で大分改善されてきた。

 前の方が牧歌的で良かったんだけどな。なんか都会に出た田舎の女の子が都会に染まってしまった感じがする。

 でも、ここまで早く言葉遣いを正せるって事は、仕事も優秀なんだろうね。

 最近は起こさなくても起きるようになったし。まぁ、低血圧なのか朝は結構不機嫌だったりするけどね。


 「あ、ずっと言うの忘れてたんだけど、ちゃん付け止めない?」

 「何で? かわいいのに」

 「いや、クリスの方がかわいいし、それに一緒に働く仲間なんだし、片方だけちゃん付けはおかしくない?」

 「まぁ…そうかな…」

 「そうよ。それか、私もクリスちゃんって言うわ」

 「あー……。呼び捨てにさせていただきます」

 「ふふっ…。じゃあよろしくねクリス」

 「えぇ、よろしくディンゴ」

 寒いはずなのに何か心があったかい気がする。今日はよく眠れそうな感じがする。


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