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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章
27/454

27 表彰式で私ごと持って行かれる


 決勝戦はあっけなく終わった。

 ビーンとお姉様の他にいかにもな男が三人。紳士然とした糸目の男。ハゲ頭で右目に傷のある巨漢の男。チビでモヒカンみたいなチンピラ風の男。

 見るからに怪しいけれど、三人ともお父様の部下。信じられないけど、うちの使用人なんだよね。

 特に男の使用人は賭け事が好きらしく、空いてる時間によくポーカーとかやってるんだよね。勿論我が家での賭け事は禁止ですが…。

 今回の大会の参加者の半分はうちの使用人。あの人一倍野太い声を上げていたのがこの人たちだったんだけど、もしかして賞金より私のキスが欲しかったのかな?

 それぞれ良い勝負をするのかなと思っていたら、終始ビーンとお姉様の一進一退。

 あんなに仕事そっちのけでやってたのに手も足も出ないんだもん。この後の流れではちゃんと手も足も使ってもらいたいものね。

 最終的にはビーンが優勝したわけだけど、何か釈然としない。まぁ、元々の計画には支障はないし、こっちは計画を実行して捕まえるだけ。

 さてと、表彰式やっちゃいましょうか。


 「はーい。第一回ポーカー大会おつかれさまでーす。それでは、表彰の方に移ります。では、三位の方ーーーーーー」

 三位の巨漢さん。二位のお姉様。何でそんなに不満そうなんですかね? 目的、忘れてませんか?

 「ーーーーーはい。最後に優勝者の方に賞金をお渡ししたいと思います。優勝者の方どうぞー」

 「へっへっへ…。久しぶりだなぁ、おい。へへへへへっ」

 厭らしい笑いを浮かべてビーンが壇上に登ってくる。

 「あーそうですね。お疲れ様です?」

 「大好きなことやったのに疲れるわけないじゃんよぉ」

 「うーん。じゃあ、ごくろうさま……?」

 「ここは、おめでとうございます。だろうよ」

 おう。正論言ってくるのやめーや。まぁ、ここは一旦持ち上げてあげましょうか。

 「そうですね。おめでとうございまーす。こちら、賞金になりまーす」

 「へっへっへ。まぁ少ねぇけど、貰ったるわ」

 賞金の入った袋を手渡すその瞬間、ビーンの袖から数枚のトランプが零れ落ちる。

 ん?

 「げぇっ……」

 おかしいな。まだ仕掛けてないんだけど、こいつまじか。イカサマしてここまで勝ち抜いてきたのか。

 最後の最後でボロを出すなんて、やっぱりその程度だったんだなぁ。

 「あれれー、おっかしいぞぉ。なーんで袖からトランプが出てきたのかなぁ?」

 どっかの小学生みたいなおどけた口調で煽るお姉様。

 「ち、ちがっ…。こ、これは…」

 「これは何なのかなぁ? どうして弱い数字のカードばっかりなのかなぁ?」

 左の腕を掴み持ち上げると、さらにパラパラと零れ落ちてきた。

 狼狽え手を振りきり、二歩三歩と後ずさるビーン。

 せめてもっと巧くやれよ。態々、それ用のトランプ用意したんだぞ。そんなんだから顔が歪むんだぞ。

 会場ではイカサマ行為が大勢の参加者と聴衆にバレたため、批難の声が上がっている。

 お姉様に使用人がビーンを取り押さえようとジリジリと詰め寄っていく。

 それに併せて賞金の袋を戻そうとすると、ビーンに腕ごと掴まれた。

 「ちょ、ちょっと離しなさいよ!」

 「ふざけんな。おい、それ寄こせオラ! って、強えなクソ! 何なんだお前…」

 伊達に鍛えてませんからね。まぁ、筋肉全然つかないから見た目華奢だから分からなかったかしら?

 「クソッ! もういい!」

 諦めたか。と思ったのも束の間。視界が真横になる。

 まさか私ごと持っていこうっていうの? バカじゃないの? ホント頭悪いわね!

 「副賞ごと貰ってってやるぜぇ! あばよ!」

 副賞の事覚えてたんだ。って、今はそこじゃないのよ。

 私を小脇に抱えて聴衆の中にダイブする。

 「「「あっ!」」」


 一般の人が多いからか、いつもみたいに無茶できないのが仇になってどんどんと距離が開いていく。

 でも、上の方でメイドさん達が距離をとりながら屋根伝いに飛んできてる。

 何回か角を曲がり、人のいない裏路地へ辿り着く。

 「へへっ…。ここまでくりゃあ大丈夫だろ」

 ぜぇぜぇと息咳切らしながら右手を膝に乗せて休む。

 残念。ビーン上よ上。上に居るわよ。なーんて言ってあげないけどね。

 「おい、金よこせって……。おい、金はどうした」

 「そんなん会場で手離してきたわよ。もっと早くに気付きべきだったわね。ざまみろバーカバーカ」

 「お前ぇ、絶対に許さねぇぞ!」

 額に青筋を浮かべながら憤るビーン。

 それから少し入った先の店の扉を開けて入っていった。

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