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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第5章

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07 どうやら、王妃教育とはメイドの仕事の事らしい


 一つ二つと停留所に止まり、六つ目くらいの停留所に止まると、乗客は私達二人だけになった。

 そこから十分程だろうか。二つくらいの停留所を過ぎると、王城前の停車場へ入っていった。


 「はいよー。終点城門前だ。観光するにはもう遅いから泊まって明日にした方がいいぞー」

 気を使って言ってくれるのはありがたいが、私が用があるのは城の中なので、このまま行ってしまおうと思う。


 「おじちゃん、ありがとー」

 「あんがとー」

 馬車を降り、御者のおじちゃんにお礼を言って、停車場を出ると、城の前までは少し距離がある。

 まぁ、城門前にビタビタに止めるわけにもいかないものね。

 さて、私は王城に用があるのだけど、ディンゴちゃんはどこに用があるのだろう。

 途中から馬車の中でうたた寝していてどこに行くのか聞けなかった。


 「ディンゴちゃんはどこに行くの? もしかして乗り過ごしてたりしてないよね?」

 「だぁいじょうぶだぁ。おらもここに用があるだぁ」

 「そうなんだ。じゃあ一緒ね」

 「ほぉえー。こげなべっぴんさんもおらと同じなのかぁ」

 「ここで立ち話もなんだし行きましょ」

 そうして二人で城門前まで歩いて行った。流石城の前。雪が綺麗にかいてあった。

 夜になったら逆に凍結して滑りそうで危ない気もするんだけど、そもそもこの世界では夜に出歩くとか普通にないか…。


 一、二分くらいで危なげなく城門前まで到着すると、衛兵さんが近寄ってきた。

 「こんな時間に何の用だ?」

 まぁ、その反応はごもっともよね。

 よく考えたら、王城に来るのって初めてだわ。暗いからよく分からないけど、明るい時間に来たら綺麗なんだろうなぁ…。って、そんな事言ってる場合じゃないわね。

 『王妃様に呼ばれたんですけど』って言えばいいのかしら? あ、そういえば王家からの手紙って家に置いたままだったわ。持ってきてないわ。どうしましょう。


 本当の事を言っても信じてもらえないわよね。でも、話ついてる気もするんだけど、とりあえず本当の事をいいましょう。そう思った矢先、ディンゴちゃんが先に話し始めた。

 「お、おら、今日からここで働く事になったディンゴいうもんだす」

 「働くって事はメイドか…。お前何か聞いてる?」

 「あー、そんなような事聞いた気がする。ちょっと行って聞いてくるわ」

 「おう頼むわ」

 「あっ…」

 私が何か言う前に話しがトントンと進んでしまった。まぁいいか。その責任者の人が来たら話せばいいんだものね。


 少し待つと、先ほどの衛兵と執事っぽい格好をした中間管理職然としたおじさんが来た。

 「あー、話は聞いてるから、こっちだ」

 「だそうだ。通っていいぞ」

 「あっはい」

 話をする暇もなく流れでおじさんの後をついていく。

 城門をくぐり入ると、立派なお城が見えた。そのまままっすぐ行くのかと思ったら、左の方へ壁伝いに歩いていく。


 「二人も来るなんて言ってたっけかなぁ?」

 何かブツブツ言ってるがよく聞こえない。

 少し歩くと、3階建の建物が見えた。

 「ここが下級侍女使用人の宿舎だ。今寮監呼んでくるから待っててくれ」

 へぇ、王妃教育って言うから王妃様付きの家庭教師みたいな人とマンツーマンでやるもんだと思っていたけど、まさか下働きから始めさせられるなんて、ガチなやつじゃないですか。こんな厳しいと思ってなかったわ。

 でもまぁ、家でダラダラしてるより身体動かしてる方が性に合ってるから、まぁいいか。

 うちのメイドさん達を見てると楽そうに見えるけど、他は違うんだろうな。実際どのくらい違うのか気になってたのよね。


 「あんらぁ~、二人もぉ? 助かるわぁ…。ほーんと人出不足で困ってたのよぉ」

 なんだろう。場末のスナックのママみたいな感じの人って感じ。なんとなく世話好きそうな人だ。

 「じゃあ後は頼んだぞエタ」

 「ありがとね、マックス」

 そう言ってマックスと呼ばれたおっさんは振り返る事なく、手だけを上げて返し、去っていった。


 「お外寒かったでしょう?」

 「えぇ」「んだんだ」

 「こんな時間だから、お仕事は明日からにして、今日は部屋でゆっくり休んでね~。案内するわぁ」

 そう言って中に入り、部屋を案内される。

 王城の使用人ともなれば、下級でも建物はこんなに立派なんだな。もっと隙間風が吹くくらいボロいのかと思ってたわ。


 そうして三階の端っこの部屋を案内された。

 「じゃあここが二人の部屋ねぇ」

 「ありがとうございます」「ありがとうだす」

 「いえいえー」

 部屋に入ると、簡素なベッドとクローゼット、それと小さな机と椅子がそれぞれ一個ずつある。

 後は身だしなみ用の姿見が一つあるだけだ。

 まぁ使用人の部屋ならこんなもんだろう。


 「そういえばまだ名前聞いてなかったわねぇ」

 「クリスです」「ディンゴだず」

 「ふんふん。クリスちゃんにディンゴちゃんねぇ。私はここの寮監のエタって言うの。よろしくね」

 優しそうな人で良かったけど、明日になったら豹変したりしないかしら? ちょっと不安だわ。


 「えっと、サイズはぁ……」

 その後、変えと合わせて二着のメイド服を渡され、宿舎の設備や諸々の時間を案内された。

 その後、夕食の時間になり、先輩のメイドさん達に自己紹介をしたのだけど。


 「んー、ディンゴちゃんはちょーっと訛りがキツイ気がするから、まずは、標準語の練習しましょっか」

 「おら、そんなに酷いだべか?」

 否定できない。先輩の人達も皆目を合わせようとせず、そっぽを向いてしまった。

 「それにしても、ここまでよくクリスちゃんは分かったわね。私でさえ半分も分からなかったのに」

 別にそこまで難しくないと思うんだけどなぁ…。

 私としては、夕食が意外と豪華なのがびっくりした。


 「まぁ、あたしらの仕事って、体が資本じゃん? 体力がないと務まらないじゃん? 働いて食べて、よく寝る。これっしょ」

 右隣の先輩メイドのサガさんが男勝りな笑顔で説明してくれた。そして、骨つきの肉を豪快に引きちぎってムシャムシャ食べていた。すごい。


 「あんたも食べないと。そんなヒョロガリじゃやってけないよ?」

 左隣の先輩メイドのウィラさんも、いろいろ勧めてくる。ありがたいんだけど、私そこまで食べられないのよね。作るのは好きなんだけどね。それに、豪華だけど、味付けがちょっと大味というか雑というか……。


 そんな感じで歓迎会を含めた夕食は終わった。

 「まさか、クリスも一緒にメイドに募集してたなんてなぁ…」

 「んー、募集というか、成り行きというか…」

 「そうなんだべか?」

 「うん、まぁ…でも、こうなるのは決まってたのかな?」

 「?」


 こんな一からの修行だとどの位掛かるんだろう? 二年後には学園入学も控えてるから、二年間たっぷりやるのかな?

 というかお父様から、こういう感じだと聞いてなかったのよね。まぁ、考えても仕方ないし、明日から頑張りますか。


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