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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章

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26 ポーカー大会開催


 一週間後―――――

 「ごめんなさいね、クリス。本当はお母さんも見に行きたかったのだけれど、あの愚鈍な騎士団長が仕事を手伝ってくれと言ってきてね。本当なら即断るのだけれど、王妃様にも呼ばれてしまったから、仕方なく。えぇ、本当に仕方なく行かなければならなくなったの」

 別に理由なんて聞いていないのに、抱きしめながら、そう言い訳をするお母様。

 アンジェさんとミルキーさんを連れて、王都へ後ろ髪を引かれながら出立した。

 「あぁ、心配だよ。本当に心配だよ」

 「そんなに心配なら一緒に行けば良かったのではないですかお父様?」

 「いや、そっちじゃなくて、今日の大会の方だよ」

 「あぁ…。大丈夫ですよ。お父様はうちで待っていてくれれば大丈夫です」

 「もしかして、私って邪魔なのかい?」

 「ネガティブすぎませんかね、お父様……」

 玄関で見送っていたお父様とたわいない会話をしていると、お姉様が準備万端とばかりに駆け寄ってきた。

 普段着ないような大きくて長めの姫袖のドレス。

 「お姉様、そんなに大きい袖だと、ケチャップとかソースとかくっついちゃいませんか? いつもの小さめの方が良いんじゃないですか?」

 「いいのよ。今日はこれで。というか、私そこまでアホの子じゃないんですけど!」

 多少は自覚があったらしい。

 「それより主催者が早く行かないとまずいんじゃない?」

 お兄様が今日も素敵にゴスロリ服を着こなしているんだけど、何故かいつもより生地が多くゆるふわな感じ。

 もしかして、みんな今日の晴れ舞台に張り切って、普段しないオシャレしてるんだな?

 まぁ、特に突っ込むこともなく、会場へ向かうため、玄関の前に止めていた馬車に乗り込もうとすると、門の方から一台の馬車が入ってきた。

 今日は来客の予定なんて無かったよね? と、お父様を仰ぎ見る。

 お父様も腕組みしながら思案する。本当に予定が無いようだ。

 お母様が戻ってきたとも考えづらいし、こんな早朝に一体誰が……。

 案の定、最近我が家へ入り浸っているレオナルドとウィリアムだった。呼んで無いんだけどなぁ……。

 「間に合って良かったです」

 「あの、レオ様。今日はちょっと用事がありまして…」

 「知っていますよ。ポーカー大会ですよね。僕も参加しようと思いまして」

 ほんっと、危機感の足りない王子様ですね。襲撃犯の残りを捕まえるために催してんのに、標的が参加してどうするの? 頭ハッピーセットメルヘンなのかな?

 「大丈夫だ。俺様が付いているからな」

 「あぁ、あなた居ましたの……」

 「おまっ!居ただろ! 普通に目あったよな。なぁ」

 ちょっと揶揄っただけですぐに涙目になるんだもの。揶揄わない理由がありませんわ。

 まぁ俺様系見習い護衛騎士様が付いていれば、無いよりマシですかね。

 そんなウィリアムとのやりとりを拗ねた目で睨むレオナルド。

 連れてこないでお城でちゃんと待ってた方が良かったんじゃないですかね?

 来てしまったものはしょうがないので、数台の馬車で会場へ向かうことにするのだが、どうして私はレオナルドと一緒の馬車なんですかね?

 「えへへ……。実はですねクリス。僕たちも大会で優勝を目指そうと思いまして」

 「僕たち?」

 「はい。僕とウィルの二人でクリスにかっこいいところを見せたいなと思いまして」

 何を言ってるんでしょうねこのバカ王子は。そもそもこの大会はレオナルドを誘拐しようとした残りの残党を誘き寄せようとして画策したのに。何で狙われた王子様ご本人が参加しようとしてるんですかね。ちょっと危機感が足りなさすぎませんかね?

 それに、ポーカーで優勝しても別にかっこよくない気がする。

 「あの、分かってます? レオ様を狙った賊を捕まえるのが目的なんですよ? また拐われたらどうするんです?」

 「大丈夫だ。俺がいるぞ」

 「そうなったら、またクリスが助けてくれるんでしょう?」

 「いや、そもそもそうならないようにって話なんですが…」

 「お、おい! 俺が居るから大丈夫だぞー…。おーい…。ねぇ、聞いてます? あの…。ちょっと…」

 「もう、次拐われたら助けませんよ?」

 「えぇ! それは困るなぁ。もう一回強いクリスが見てみた……」

 「おい! 俺を無視すんな! 無視すんなよぉ……」

 「あー、はいはい。レオ様には強くてかっこいい護衛騎士様がいるから、ぜんっぜん大丈夫ですねー」

 「あ、ははは。そうですよ。僕より強くて頼れる護衛騎士が居ますからねー。ははは…」

 ちょっと、話に入れないからって癇癪起こして泣くなよ。メンタル弱すぎじゃないですかね? 豆腐でももうちょっと形保ってますよ? 舞茸入れた茶碗蒸しくらいのメンタルかな?

 半泣きのウィリアムを宥めすかしながら、馬車は会場の裏手へ着いた。

 「では、僕たちは参加の申し込みに行ってきますので」

 レオナルドはぐずるウィリアムと数人の護衛と共に受付の方へ歩いて行った。

 「ねぇ、あの生意気な黒髪半泣きしてたけど、クリス何かしたの?」

 片手を口に当てながら、ニヤニヤしながら面白そうなことを見つけたとばかりに聞いてくるお姉様。

 別に面白いことなんて何もありませんよ。ただ、面倒なことが増えただけです。

 「そんなことより開会の打ち合わせとかした方がいいんじゃないですかね?」

 「アドリブでいいんじゃないかしら?」

 「………。アドリブでいいんですね?」

 「クリスって、変なところ真面目よね」

 お姉様が良い加減すぎるから、その反動じゃないですかね?

 こっそり裏から会場を見てみる。結構な参加者が入っている。あの男も参加していれば良いけれど。それにしても多いなぁ。味気ない開会宣言だけじゃダメよね。何か軽くスピーチしないといけないよね。


 「スピーチとスカートは短い方がいい! と言いますが、引きずるほど長いスカートが好きな私は一体どうしたら……」

 「待って! え、ちょっとクリス。そのスピーチはおっさん臭くないかしら? それに私は短い方が好きよ?」

 お姉様がアドリブでいいって言うから、おっさんばっかりの会場でおっさん向けのスピーチしているんでしょうが!

 「えーっと…。お姉様からこの長さでも止められてしまったので、第一回! チキチキ!ポーカー大会! 開幕でーーーーーーーーーす!!!」

 「「「「「「「わーーーーーーーーーーーーーー」」」」」」」

 うん。みんなノリが良くて助かるわ。会場は大盛り上がり。

 でも、ポーカーって静かにやるものなのよね。この落差大丈夫かしら?

 「因みに優勝賞金十万カラットですが、副賞としてクリスのキスが贈呈されまーす!」

 「「「「「「「うぉーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」

 めちゃくちゃ野太い声が波のように押し寄せる。

 え? 待って! 知らない、聞いてない、許可してない。何それ?

 「あ、あのお姉様?副賞の件聞いてないんですが…」

 「そりゃそうよ。だって今考えたんだもの」

 なんですと? 別にキスは初めてじゃないけどさぁ。知らないおっさん相手にしたくないんだけど。

 「じゃあクリス、私も参加してくるわね」

 「えっ?」

 そういってお姉様はステージを降りて行ってしまった。

 待って。私聞いてないんですけど。

 段取り通りにやってくれるのか。それとも独断で捕まえるのか私には全く予想できません。もしかして、捕まえるのそっちのけで優勝狙ってますかお姉様?


 それぞれ予選を一回、二回とやっいるんだけど、意外と白熱していますね。

 因みにレオナルド&ウィリアムペアは一回戦敗退です。

 レオナルドに関しては、キスの件があったからなのか、未だ嘗て見たこともない悔し顔で泣いている。

 ウィリアムは両手を後ろに組んであっけらかんとしている。少しは慰めてやれよ。

 それにしてもちゃんと参加していたんだなビーン(傘で殴った時に顔の形が豆みたいな形になったので勝手に命名。本名は知らない)。

 でも、残り二人の姿が見当たらない。警戒中のメイドさん達に視線を向けるが横に顔を振られるだけ。

 うーん。逃げたか参加していないかのどちらかなんだけど、これは最後まで泳がせないといけない感じかな?

 それにしても、お姉様も順当に勝ち進んでいる。これは二人とも決勝で当たるんじゃないかな?

 ちなみにお兄様も参加していたけれど、準決勝で敗退してカードを持ったまま呆然と空を見上げていた。

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