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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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69 番外編12 プリンの恨み〜名探偵サマンサと助手メアリーの犯人探し〜 ③


           *      


 結局空振りに終わったわ。

 普段調理場で調理担当する使用人全員に聞いたが、皆が口を揃えてベルシックと同じ事を言うんだもの。

 途中で会ったお母様とお兄様も否定していた。


 お母様は確かメイド達と打ち合わせをしていて、調理場には行っていないと言っていた。

 お兄様も、あのやかましいのと一緒にいて、調理場に行く余裕すらなかったと言っていた。

 私のかわいいクリスがあんな事をしでかすとは思えないし…。

 激辛好きのお父様が食べるとも思えないし……。

 ……待った。お父様は激辛好きだけど、甘いのが嫌いという訳でも無いのよね。


 「メアリー、一人容疑者が浮かんだわ」

 「それは誰なんです?」

 「お父様よ」

 「えぇ…、それは無いですよ」

 「いいえ。これは普段私に言い負かされているお父様のささやかな復讐だと思うの」

 「そうですかねぇ?」

 「まぁいいからついてきなさい」

 「…絶対に違うと思うんですけどねぇ…」

 メアリーにしては随分と否定的ね。この名探偵の推理を否定するだなんて。


 勢いよくお父様の書斎の扉を開け放つと、ビクッと驚くお父様。

 もう少し、一家の主として堂々としていればいいいのに。どうしてうちではこんな風なのかしらね。外では人が変わったように堂々としているのに…。


 それはそうと、もう一人意外な人物がいる。

 確か、教団と一緒にいた女ね。自称女神とか言ってたっけ。

 まぁ、私も女神で名探偵な訳だけど。

 「今度はサマンサか…。一体何の用だい?」

 「単刀直入に聞きますね。私のプリン食べました?」

 バンッとお父様の執務机を両手で叩く。痛い。


 「は?」

 「可能性があるのはお父様だけなのです。いつ食べたんですか? 昼ですか? 今さっきですか?」

 「た、食べてないよ…」

 「本当に?」

 「本当だとも」

 目が泳いでいるけれど、これは普段のお父様ね。お父様は嘘をつくときはまっすぐに正鵠を射るような目をするもの。だからこれは本当。ホント天邪鬼みたいな人よね。

 という事は……。


 「あなたが食べたのね?」

 マドロスパイプを自称女神に向ける。

 「え、えぇええええっ! わ、私ぃ?」

 「白々しいわね。どうも最初から怪しかったのよ」

 「サマンサ様、それはもう探偵じゃないです。どっちかというと、憲兵隊の取り調べが近いです」

 「いいじゃない別に」

 「まぁ…はい。そうですね」

 「いやいや諦めないでよ。私知らないわよ。私ここに来てから紅茶しか飲んでないもの」

 「()()()()は?」

 「本当よ。ずっとジェームズちゃんといたもの」

 「そうなんですかお父様?」

 「そうだねぇ。途中サマンサも一緒にいたじゃないか。それに彼女が来たのは今日だよ? その間にその…プリンだっけ? それを食べるのは不可能じゃないかな?」

 「そうよ。本当よ。信じて。ね?」


 そう言われれては引き下がるしかないわね。

 メアリーが「ほら言ったじゃないですか」と、小さく独り言ちる。

 どうしましょ。これで振り出しに戻ってしまったわ。


 「その…サマンサはプリンを食べた犯人を探してるのかい? メアリーと…」

 「えぇ、そうですわ。残念な事に捜査は振り出しです」

 「そうなんだ」

 「……お父様何か知ってますわね?」

 「え、いやぁ何も知らないよ。ねぇイデア様」

 「え、えぇそうね。私に振られても困るけど、全然知らないわよ」

 こっちの女神は知らないだろうけど、今堂々と知らないと言い切ったお父様は何か知っているわね。

 チラとメアリーを見ると、プイッとそっぽを向いてしまった。

 なるほど。お父様は犯人ではない。だけど、容疑者は知っているのね。


 「お父様…、私悲しいです。お父様が私に隠し事するだなんて……」

 「そ、そんな隠し事だなんて…」

 「いえいえ、いいんですよ。お父様があのお店で何をしているのか全部お母様にチクりますから」

 決めポーズをとるようにマドロスパイプを咥え息を吐く。

 「ピー……」

 「……………」

 何で今度は音がなるのかしら?


 「さ…サマンサ様、その辺で…」

 「あら、メアリー。もしかしてメアリーは犯人が分かったというのかしら?」

 「い、いえ…分かりません。私は何も…」

 必死に笑いを堪えようとしているのか、尻すぼみになっていく。

 「そうよね。じゃあ行くわ。さよならお父様」

 踵を返して部屋を出ようとすると、消え入りそうな声で何かをつぶやく声が聞こえた。


 「何ですかお父様? はっきり言ってもらわないと聞こえませんよ」

 「くっ…。べ、別に庇い立てするつもりはなかったんだが、彼女達にサマンサが危害を加えないか心配になってな」

 「彼女達?」

 「……先ほど帰ったが、昨日ソフィア嬢とマーガレット嬢、そしてエリー()が来ていたんだよ。クリスを訪ねにね。あとはアーサー君とテオドール君もいたが、その二人はそんなに滞在していなかったから、もしかしたら…」

 「みなまで言わなくていいですわお父様」

 「殆ど言ったよ」

 「で、クリスはどこにいるんですか?」


           *      


 まさかアンバーレイク領に行っているだなんて知らなかったわ。

 しかしお父様も押せば簡単に負けてしまうなんて、それはそれでどうなのかしらね?

 今日はもう遅いので明日行く事にして、ベルシックが作っておいてくれたプリンをメアリーと一緒に調理場で頬張っている。


 「あぁ…おいしい………。仕事を頑張ったご褒美って最高よね」

 「そうですね。まぁただ振り回されていただけですけどね」

 「メアリーは…さ、犯人が誰か知っていたでしょ?」

 「まぁ、途中から……はい」

 「ねぇ、そろそろ夕食の準備するからあなた達二人出て行ってくれない?」

 ベルシック含め調理担当の使用人達から邪魔者扱いされる。


 「そんな、どこでプリンを食べろっていうのよ!」

 「部屋で食べなさいよ。時間を考えなさいよ!」

 「まだ一個しか食べてないのよ?」

 「じゃあ、付箋に名前でも書いて冷蔵庫にしまっておきなさいよ」

 確かに夕食前にプリンを食べきってしまうのは順番的にアウトよね。

 渋々従い部屋を出る。


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