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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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68 番外編12 プリンの恨み〜名探偵サマンサと助手メアリーの犯人探し〜②


           *  

    

 「あっはっはっは……。私が犯人の訳ないじゃないですかー」

 涙を流しながら大笑いするこの女をはたいても怒られないわよね?

 「あー……ははは…。おかしー。ふひひ…」

 「そんなに笑うとこ?」

 「そりゃそうですよー。だって後々めんどくさいですし、こうしてトラブルに巻き込まれてるんですもの。そんな自殺行為みたいなことしませんって!」

 その言い方は非常に腹立たしいが、確かにそうだなと思うわ。


 「じゃあ一体誰が私のプリンを食べたのよっ!」

 「知りませんよ、そんなの。それを調べるためにそんな格好してるんでしょ? 暑くないんですか?」

 まぁそうよね。料理を作るのが生き甲斐のベルシックがそんな事する訳ないのよね。食べたくなったら自分で作るタイプだし。

 腕組み上を向きながら考えていたら、ベルシックが素晴らしい提案をしてくれた。


 「まぁ、犯人は分かりませんけど、代わりにプリンを作りのは出来ますよ。何個食べたいんですか?」

 「あなたって女神だったのかしら?」

 「はっはっは…。ただのメイドですよ」

 最初からこうしてれば良かったのでは? いや、人の物を勝手に奪う悪い奴には鉄拳制裁をしないといけない気がするのよね。


 「そうやって恩着せがましくして…」

 「あら、メアリーはいらないのね」

 「いりますいります。いらないなんて言ってないじゃないですか!」

 「じゃあ、変な事言わない事ね」

 やっぱりベルシックの方が一枚も二枚も上手よね。というか、メアリーが考えなしに脊髄で考えて喋るから悪いのよ。


 「じゃあ、そうね……。普通のを三個と、抹茶一個、チョコ一個、イチゴ二個ね」

 「では私は普通の二個と、クリームブリュレ二個、今限定のマンゴー一個、レモン一個、塩プリン一個でお願いします」

 「何その期間限定って…。私もそれ一個ずつ追加で!」

 「まぁ…はい。作るとは言いましたけど、よくそんなに要求しましたね。まぁいいですけどね…」

 「ベルシック、お願いがあります。追加で食べられてしまった焼き菓子もお願いします」

 「………………………いいけど、さ…。いいけどちょっと食べすぎじゃない?」

 「頭を使うと甘いものが必要になるのよ」

 折角持ってきたマドロスパイプを咥えビシッと決めてみる。


 「そうです。甘いものは乙女の動力源ですから」

 メアリーも両手を腰に当て胸を張る。

 「乙女……ねぇ……」

 「何か?」

 「いえいえ何でもないですよ。じゃあちゃっちゃと作っちゃいますんで…」

 「分かったわ。他の容疑者のところに聞きに行きましょう」

 マドロスパイプから煙を出しながら部屋を後にする。


           *   


 第二の容疑者フィジー。私付きのメイドの一人だ。

 大抵ロザリーと一緒にいるけれど、ロザリーはあれでも男だからね。男が入れないところはフィジーにお願いしている事が多い。

 まぁ大抵は私のおやつを調理場へ取りに行ったりしているのがフィジーなのよ。


 ロザリーは何かとカレー味のお菓子とか、やたら香辛料のキツイお菓子ばっかり持ってくるから、おやつに関してはフィジーに一任している。

 そんなフィジーが一番怪しいと睨んでいるのよ。

 フィジーの大好物はプリン。私以上にプリンにうるさい。そして私付きのメイドは舐めた口を聞くヤツが多い。

 つまり、私のプリンだと知った上で、敢えて食べた可能性があるのよ。


 「という事で、洗いざらい全て吐きなさいな」

 「そうです。サマンサ様の物だけならともかく、私の物にまで手を出したのは許せません」

 「…あの……、いったい何を言っているんです?」

 庭のガゼボで他のメイド達と談笑していたフィジーを見つけ、現在尋問中だ。

 かっこつけるため、マドロスパイプを咥え、シャボン玉を出す……。あれ、さっきと違う………。

 咥えたマドロスパイプから出るシャボン玉を見て呆然とする一同。


 「と、とぼけたって無駄よ! ネ、ネネネ…ネタは上がってんのよっ!」

 動揺して噛んでしまった。

 「え? え? えええええっ? な、なんで私責められてるんですか?」

 「しっらじらしいわねぇ…」

 「役者にでもなったらどうですか?」

 「だから、何なんですか?」

 「私のプリン食べたでしょ!」

 「ぷ…プリン?」

 「そうです。そして私のプリンも食べましたね?」

 「えぇ…。こんな事で犯人扱いされてるの私………」

 ドン引きしているフィジーが他のメイド達に助けを求めるかのように振り返る。


 他のメイド達が、ただ事の成り行きを見守っていたが、一方的すぎただろうか?

 その中の一人、苦労人のイノがそっと手を上げる。

 「何イノ? 庇い立てするつもり?」

 「いえ、その発言していいのでしょうか?」

 「いいわよ」

 イノだけは他のメイドと違って礼節を重んじているのか、軽々しく口を挟んだりしない。別にそんなのいいと思うんだけどね。


 「失礼を承知で言いますが、いつごろプリンは無くなったのですか?」

 「そうね。一昨日クリスが作って、今日の朝はあるのを確認したわ」

 追加でそんな状況だったかを補足する。

 顎に手をやり考えるイノ。うちで一番貴族令嬢っぽいメイドって言われるだけあって、かなり絵になるくらい美人よね。最近アリスとメタモのお守りで、少し老けたようにも見えるけど…。

 フィジーが両手を握って「食べてません食べてません」と念仏のように言っている。


 「…うん。やっぱりフィジーは犯人ではありませんよ」

 「どうして言い切れるのよ」

 マドロスパイプの先端をビシッとイノに向ける。

 「朝の掃除からさっき屋敷に戻るまで私達とずっといましたから。それに…」

 「「それに?」」

 私とフィジーに声が重なる。


 「こんな面倒くさい事になるんですから、我々使用人一同サマンサ様の名前が書いてある食べ物には手をつけません」

 「まぁ…そうだよね……」「だよねぇ……」「こうなるって知ってるものね」

 傍観していたミホ、モワ、プトマが相槌を打つ。

 「本当に食べてないのね?」

 「食べませんよ。人の物を勝手に食べるのはサマンサ様だけですって!」

 「そうね」「まぁサマンサ様ですし…」「私も勝手に食べられたんですが、大人なんで黙ってました」「サマンサ様の場合、名前書いてても無意味なんで」

 フィジーがぶっちゃけると、他の四人が勝手にあれこれ言う。

 「サマンサ様の普段の行いが悪いってだけじゃないですか?」

 メアリーがそんな事を言うけれど、あなたも大概よ?


 「わ、悪かったわよ…」

 居心地の悪さを覚え、足早にその場を後にする。


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