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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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67 番外編12 プリンの恨み〜名探偵サマンサと助手メアリーの犯人探し〜①


 ようやくあのうるさいのが帰ってくれてホッとするわ。

 いくらなんでも長すぎるでしょうよ。まぁ、百歩譲って滞在するにしても勝手にし過ぎだと思うの。

 ロベルタはいい。キャロルもまぁ、たまにハメ外すくらいだからまだマシ。

 問題はあの二人よ。アンとクライブ。

 もう思い出すだけでも嫌。


 はぁ…。疲れた。こんなにストレスが溜まっているときは甘いものを食べてゆっくりしましょ。

 確か冷蔵庫に一昨日クリスが作ってくれたプリンが二個残っていたはずよね。

 厄介払いできた事とプリンを食べる事への期待で自然とスキップしてしまう。


 プリンがあるのは第二調理場だ。第一の方はロザリーのバカが勝手に自分の部屋にしてしまった為、現在は少し手狭な第二の方で我が家の食事を作っている。

 まぁ、私自身は料理作らないから、こんなに広くなくても良くない? とか思ってしまったりするんだけどね。


 そんな第二調理場もメイド達がよくたむろしているんだけど、今日は誰もいない。

 ついでにお湯を沸かして紅茶かコーヒーでも淹れてもらおうと思ったんだけどね。

 まぁ、プリンだし、牛乳でもいいかな。

 第一の方から持ってきたロザリーのパンツでも眺めながら食べましょうか。

 そう思いながら冷蔵庫の扉を開けると、中は空っぽだった。


 「あれ? おかしいわね。ここにしまったはずなのに…」

 間違って冷凍庫や野菜室の方に入ってるかもと思って開けてみるが、無い。

 もしかしてメアリー(あの泥棒猫)が食べたのかしら?

 「あれ、私のプリン食べました?」

 後ろから覗き込んでいたであろうメアリーがそんな事を言う。


 「メアリーが私のプリンを食べたんじゃないの?」

 「なんでそんな喧嘩を売るような事するんです? 私だってちゃんと名前を書いた付箋をつけたプリンが二個残っていたんですよ」

 なるほど。つまり間違って食べたという事は無いわね。だって、冷蔵庫の中には私のプリンを含めて四個入っていたのだから。


 「分かったわメアリー」

 「何が分かったんです?」

 「これは窃盗事件よ」

 「窃盗事件!」

 「つまり私たちのプリンを食べた不届きものがいるという事よ」

 「それは許せませんね」

 「でしょう? と、いう事でまずは、捜査の前に着替えましょう」

 「え?」



 ひとまず捜査の為には()()()()()()()を着て捜査に当たるのだと、以前クリスが言っていたので、茶色ベースのチェック柄のワンピースとケープ風のマントに前後のつばが長い帽子を着用する。

 正式な名前があったはずだけどイン……インなんとかコートにデ…………ディ? ディなんとかハット…。

 ダメね。思い出せないわ。こうも暑いと頭が働かないわ。

 そうそう。探偵には小道具も必要ね。

 前にクリスがやっていた時、マドロスパイプを持っていたのがかっこよかったのよね。

 だから私もそれを真似して持ってみる。

 一応姿見の前で全身を合わせて見る。なかなかに様になっているじゃないの。私の有能さが溢れ出しているわ。


 「どうかしらメアリー」

 「どう…とは?」

 「いやこれよ。この格好よ」

 「特に……ないですね」

 このメイドは…。クリス以外の事となると、てんでポンコツなんだから。

 そんな助手であるメアリーは、私の衣装と同じ茶色のチェック柄。違うところといえば、ケープじゃなくてロングコートっぽい服をボタン一つだけ留めているのと、スカート丈が短いって事くらいかしらね。


 「そっちのが涼しそうね」

 「この暑い時に、わざわざこんな格好する必要あります?」

 「様式美ってやつよ。まずは格好から入らないとね」

 「そうですか?」

 「そうよ。そもそもこれはクリスが考えた服よ?」

 「最初からそう言ってくださいよ! これすっごく素敵ですね。かわいいです」

 こいつは……。

 まぁいいわ。今はそんな事より、私のプリンを食べた不届きものを捕まえ成敗する事が大事だ。

 「サマンサ様、探偵は調査するのが主な目的ですから、私的な制裁はご法度ですからね?」

 「い、言われなくても分かってるわよ」


           *      


 「さて、犯行現場に戻ってきたわけだけれども…」

 何にも分からないわね。

 「他に怪しいところは無いかしら?」

 メアリーの方へ振り返るといない。いや、棚のところをゴソゴソと何かを探していた。


 「あなた何やってんのよ」

 「いや、もしかしたら他にもやられてるかなと思いまして…」

 「他?」

 「あぁっ! やっぱり無い! 私が隠しておいたお菓子が全部無くなっています」

 何箇所かの棚の中を引っ掻き回したメアリーは力が抜けたかのようにその場にへたり込む。

 なるほどね。メアリーはああいうところにお菓子を隠しているのね。これはいい事を知ったわ。


 というか、ただ単に掃除の時に片付けられただけの可能性もあるんじゃないかしら?

 ……………掃除?

 なるほど。ゴミ箱の中に何かヒントがあるかもしれないわ。

 冷蔵庫横のゴミ箱を引っ張り出し、手を突っ込む。


 「サマンサ様、()()にあるお菓子はちょっと…」

 「ちっがうわよ! もしかしたら何か手がかりがあるかもしれないでしょ?」

 「あっ、そうですね」

 「……って、あったわ」

 「え?」

 そこにはくしゃくしゃに丸められた私とメアリーの付箋とお菓子が入っていただろう包み紙が数枚。


 「これはビンゴね」

 「犯人許すまじ」

 私はともかく、メアリーは隠していたお菓子まで食べられているのだから、その怒りは当然だろう。

 「ここの調理場に出入りしている人が犯人ですかね?」

 「そうね。そうなると自ずと犯人は絞られるわね」

 「あのうるさかった人達の可能性ってないですかね?」

 「それは無いわね」

 「どうして言い切れるんです?」

 「貴族は基本料理しないわ。それはあの四人も例外じゃないわ。それに基本こういうところには出入りしないわ。うちにいる間もお付きの使用人が世話していたもの。あんなのでも一応貴族よ」


 そうなのよね。あんなに馬鹿みたいに騒いでいるのに、基本のところは忠実に貴族らしい振る舞いをしているのが小憎たらしいわよね。

 「でもクリス様がいたら入ってきたりしないんですかね?」

 「これは単独犯の犯行よ。誰かいる状況で盗みをすると思う?」

 「まぁ確かにそうですね。人前でやっていたら流石に誰かに咎められたりしますものね」

 「それにね、わざわざそんな事する理由が無いのよ」

 「どうして言い切れるんです?」

 「それはね、これよ」

 くしゃくしゃの付箋とお菓子の包み紙を示す。これ以上の証拠は無いわ。


 「これがですか?」

 「そう…。これ以上の証拠は無いのよ。この付箋にはね私とメアリーの名前が書いてあるの。それを態々(ご丁寧に)剥がして丸めて捨てているのよ」

 「つまり、これが私たちの物であるという事を知っていて犯行に及んだという事ですか?」

 「そうなるわね。そして、こっちの包み紙。メアリーが隠しているであろう事を知っていて食べたという事は…」

 「私のファンですか?」

 「そんなわけないでしょ!」

 何を言い出すのかしらこのポンコツメイドは。そんなの存在するわけ無いでしょうに。まぁ、私なら分かるんだけどね。

 喜びながら言ってたけど、即否定したらシュンとなってしまったわ。なんでそんなにガッカリするのよ。

 しかし、すぐに気持ちを入れ替える所は見習うべきね。

 すぐに顔を上げ疑問を投げかける。


 「で、どういうことなんです?」

 「つまり、私達二人をナメているって事よ。でなきゃ後々面倒になる事を知っている人には出来ないわよね」

 「それこそ外部犯の可能性が高いのでは?」

 「プリンはともかく短時間でメアリーのお菓子を探し出すのは不可能よ。とりあえず、調理場に出入りしている人物に話を聞きましょうか?」

 「そうですね」


 早速行動に移ろうとしたところで、ベルシックが調理場に入ってきた。

 彼女も容疑者の一人ではあるので、話を聞いておきましょう。

 「あら、二人ともこんなところにいるなんて珍しいですね。お腹でも空いたんですか?」

 「この舐め腐った態度、犯人では?」

 「私に対してフランクすぎるのよね。一理あるわ」

 「え、な…なんですか? その格好と何か関係が?」

 「あるわよ」

 という事で、()()()()()のベルシックに事情を聞く事にする。


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