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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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60 後日談 ウエディングドレスは誰だって憧れるもの⑧


     *     *     *


 「まさか、クリスがこんな事を考えていたなんて…」

 お母様は涙ぐんだ表情で感極まったのか、両手で顔を隠してしまった。

 そんな事したら、折角のメイクが流れてしまうし、手袋が汚れてしまいますよ。

 ちゃんとティッシュがドレッサーの上にあるのでそれを使ってください。


 「しかし、中々に慣れないものだね」

 「お父様もよくお似合いですよ。普段が地味な分、よく映えます」

 「はは…そうかね。それは良かった…………今なんて?」

 「あら、あなたも中々に様になってるわね」

 「そ、そういうレイチェルも…その……とても…綺麗だ………」

 顔を真っ赤にしてそっぽを向いたお父様を愛おしそうに見つめるお母様。

 いやぁなんか新鮮でいいですね。


 折角教会を建てて、タキシードもウエディングドレスも作ったのだから、結婚式を挙げた事のない両親に今更ながら、結婚式を挙げさせてあげようと思って計画したのだけど…。

 なんというか、いつもと違って初々しい。

 夫婦になってもう何年も経っているはずなのに、見つめ合ってははにかんだり、顔を赤くしてそわそわしたりして、なんというか親にこんな感情を抱いていいのかわからないけど、とても愛おしい。


 お父様に関しては、普段はベージュやグレー、カーキとか地味な色のコートとか着ているのに、真っ白な服を着ると、こうも見違えるなんてね。

 普段からもう少し明るい色の服とか着ればいいと思うのよね。

 「しかし、こうして見ると、ホントに見違えるわね。お父様の普段の野暮ったさか皆無だもの」

 「はっはっは。サマンサは容赦が無いね。泣いてもいいかい?」

 「お父様もだけど、お母様もとても綺麗ですね」

 「あらぁ、ルイス、ありがと」


 そうなんだよね。本当に子供産んだの? ってくらい体のスタイルがいい。

 そしてそんな体を見せつけるかのように肩も背中も大きく開いたタイプのウエディングドレスを着ている。まぁ普段から露出の多いコスプレをしているからあんまり違和感無いんだけどね。

 そして、腰まであるヴェールに隠れてるけど、やっぱり薄っすらと傷が見える。

 元護衛騎士だったのだから、そのくらいあるんだろうけど、改めて見ると小さいのがいくつも見えるけど、こういうのを堂々と着るお母様ってやっぱり素敵だわ。

 

 「準備が整いましたので、こちらへどうぞ」

 「レイチェル様はこちらになります」

 「ふふふ。楽しみだわ。じゃあ、またね」

 案内人役の人が、それぞれお父様とお母様を案内していった。

 お母様はルンルン気分で部屋を出て行ったのに対し、お父様は無言で出て行ったな。気持ち顔色が悪いけど、まさかね…。


 「じゃ、じゃあ私達も行きましょうかね」

 「「待った」」

 両肩をそれぞれ掴まれ引き止められる。

 「な、なんでしょうか? 早く行かないと式が始まっちゃいますよ?」

 「まだ時間あるから大丈夫。それより聞きたいことがあるんだけど」

 「そうね。どうして私たちを呼ばなかったのかしら?」

 「何のことです?」

 「とぼけないでよクリス!」

 「態と呼ばなかったでしょクリス!」

 お兄様とお姉様が目の笑ってない笑顔で問い詰める中、お兄様付きのメイドのアリスとメタモが勢い良くがなる。


 「いやだって、お兄様もお姉様も学園で授業があったじゃないですか。やっぱり学生たるもの学業優先しないと…」

 「あんな所形式だけだよ」

 「そうよ。それに私としては授業なんかよりよっぽど重要よ」

 そんな身も蓋もないこと言わないでくださいよ。


 「それにロベルタはいたって聞いたよ?」

 「そういえばいましたね。嫉妬に駆られてましたけど」

 「それはそれで気になるけど、まぁいいや。僕だってお母様みたいなウエディングドレス着たいんだよ?」

 「そうよ。私だって着てクリスと一緒に写真撮りたかったわよ。その為ならいくらでもサボるわよ」

 そんな堂々と授業サボってでも来たいなんて言われても困るんだけど。

 それに、今日の結婚式の写真を撮れば、パンフレット完成だから、もうこれ以上は必要ないんだよね。


 「クリス様、私失望しました」

 後ろでボソッと喋るのは、当日来れなかったロザリー。

 「いや、あなたは仕事だって聞いたんだけど…」

 「聞くところによると、凄く素晴らしい催しだったと聞きます。これはもう一度行うべきでは?」

 「そうよ。明日…いやこの後やるべきよ」

 「そうだね。いつか僕も着るから、今の内に選んでおきたいね」

 「私も着たいわ」

 「私もクリスが着たやつを着たいわ」

 各々勝手な事を言うけれど、この後は、食事会やら後片付けがあるし、写真を撮る時間なんてないんだよね。


 「もうパンフレット用の写真は十分に撮ったんで、着たければ後で写真館の方に話を…」

 「パンフレット? だったら私の写真がいるじゃないの」

 「そうだね。僕とクリスのツーショットは必須じゃない?」

 「私もクリスと撮りたい」

 「アリスとメタモはサイズ的に着れないと思うよ?」

 「子供用を用意してよ」

 「そんなに体型変わらないんだから、クリスが着たやつでいいわよ。寧ろそれがいい」

 メタモが暫く会わない内に、変な方向に積極的になってる気がする。


 「ロザリー、パンフレットの輪転機止めてきて」

 「なっ!」

 「サマンサ様、まだ全部終わってないので止める必要がございません」

 「一度言ってみたかっただけよ…それよりねぇ、お願いお願いお願いよぉ。私も着たいんだけど、何とかしてよ。こんなの見せつけられたら我慢できないわよ!」

 まぁお姉様の言うこともわかるんだけどね。

 このまま続けていても平行線のままだし、何より式に遅れてしまう。

 アリスとメタモに関してはずっと私のドレスの裾を掴んだままだ。きっと頷くまで離してはくれないだろう。


 「はぁ…。分かったわ…分かりましたよ。一応、カメラの上手なグリさんとグラさんに予定を聞いて大丈夫なら明日やりますよ」

 「流石クリス話が分かるね」

 「全く初めからそうしなさいよね」

 これ脅迫っていうんじゃないですかね?


 「クリスとお揃いのウエディングドレス……」

 「クリスが着たウエディングドレス……」

 アリスとメタモが着れるサイズなんてあったかな?

 「ところでクリス様、スカート丈の短いものは当然あるんですよね?」

 「ないわよ」

 無言で頽れるロザリー。物凄い大きい音がしたけど足大丈夫?


 「じゃあ、もういいですね。行きますよ? アリスとメタモはトレーンベアラーをしてもらうから、本当ならお母様と一緒に行かないといけないのに」

 「あっそうね。すぐいくわ」

 「レイチェル様怒ると怖いもんね」

 怒られるのが嫌なら怒られないようにしないといけないんじゃないかな?

 「じゃあお父様とお母様の晴れ舞台見に行きましょうか」


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