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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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53 後日談 ウエディングドレスは誰だって憧れるもの①


 あれから三ヶ月程たった。

 季節は十二月上旬。木々は葉っぱを落とし一面冬支度に入ろうかといった景色だ。

 温暖な地域の筈なのに、西側に聳えるダイアモンドダスト山脈のせいで結構な量の雪が降り一面を銀世界へと変える。

 今はまだギリギリ木枯らしが吹く程度で雪はまだ降っていない。


 九月に入り、お姉様も学園への入学との事で、お兄様と一緒に王都へ行ってしまった為、家が凄く静かになった。

 未来へ帰ったロボットに思い馳せる少年の気持ちが少し分かった気がした。

 まぁ、そんなセンチメンタルに浸っている余裕はないんだけどね。


 夏の終わりに、宰相からお父様経由でそのまま丸投げされた教会建設の件だが、ソフィアの家と共同で建設する事にしたのだが、流石はアンバーレイク家の技術力だなと思ったわ。

 この世界基準の作り方をしていたら百年経ったって完成しないでしょうね。

 それをたった三ヶ月半で完成してしまうなんて、現代の技術ってすごいわね。


 「シド兄様が言うには震度7の地震が来てもビクともしないようにしたって言ってたわ。崩れないから避難所にもなるとも言ってたわ」

 「それはすごいね。お姉様が暴れても大丈夫だね」

 「サマンサお姉様はゴジラか何かなの?」

 「当たらずも遠からずって感じかな」

 「そ、そうなんだ…」

 今回のビジネスパートナーであるソフィアと現場視察に来ているのだけど、いやぁ…ホント凄いね。

 王都にあるあの大聖堂より大きくて荘厳だ。

 建物が完成し、あとは内部の装飾の仕上げをし、家具等を搬入する段階になっている。


 うちの領にある湖沼地帯。

 うちからも街からも近い場所にあり、その中でも湖なのに海よりも青く綺麗で、他よりも一際大きいエロマンガ湖。

 名前の割にめちゃくちゃ綺麗なこの湖の畔に作る事にしたのだが、ただ教会だけ作っておしまいにするつもりはない。

 こんなに風景の良いところだもの、いろいろ整備すれば結構いい収入になると思うのよね。

 それに、季節や時間帯によって湖の色も赤やピンク、オレンジに黄色といろんな色に変わるので、とても神秘的だったりする。

 名前さえよければいい場所なんだけどなぁ…。

 これを機に変えちゃおうかな? でも変に変えると、何で変えたのか突っ込まれそうだし悩むところだわ。


 「ねぇ、なんでこの湖の名前、エロマンガ湖って言うの?」

 「しらない…」

 「本当に? てっきり、クリスモチーフの同人誌がいっぱい売れたから、そういう名前になったのかなと…」

 「そんなわけあるわけないでしょ! だって他の湖の名前はホワイトクリフとかライトニングリッジとかだもん。たまたまよたまたま」

 「そっかー」

 急に興味を無くすのはやめなさいよね。

 「まぁ名前はともかく綺麗よねぇ…」


 そんな場所に教会を建設するのだけど、ただ祈りの場を設けるのが目的ではない。

 この世界での夫婦の大半は結婚式とか挙げないのよ。

 まぁ、現代で挙げない方の人が大半になってきているけれど、ここは異世界。

 つまり、そういうイベントを知らなかった人達が大半って事。新しい価値観って重要よね。

 上手い事街の人に魅力が伝われば、結婚式を挙げるカップルも増えるし、何よりそれに付随した事業も儲かるってわけよ。


 という事で、アンバーレイク建設に環境アセスメントから設計・建設までお願いしたのだけれど、本当に素晴らしい働きだわ。

 教会は勿論の事、教会の周辺に街までの道。

 そしてホテルにレストラン。それに並んでホールに写真館。あと湖周辺の散策路と観光に関しての整備も完璧だ。

 「いやぁ、ホント助かるわ。ソフィアのところには頭が上がらないわ」

 「別にお金は出してもらってるし、うちとしても新しい技術とか試せるから…。まぁ、シド兄様は死にそうになっていたけどね」

 「いやぁ、ホント申し訳ないね。たまに現場に来た時に声を掛けると、『膝枕してくれたら全然大丈夫なんで』っていうから毎回膝枕してあげたんだけど、よくあれでバリバリ働けるよね」

 「何それ初耳なんだけど。あとでとっちめないとダメね」

 ここまで頑張ってくれたんだから大目に見てあげてくださいよぉ…。


 「でも…さ、クリスの目的ってさ、ウエディングドレス着る事でしょ?」

 「そうだよ。で、ソフィアはウエディングドレス姿の私が見たいんでしょ?」

 「そうよ。当たり前じゃない」

 向かい合って握手をする。お互いに心が通じ合った瞬間だ。


 「まぁ実際、クリスが教会以外の建設計画を言った時にピンときたけどね」

 「流石ソフィア分かってるじゃないの」

 「伊達に長いこと一緒にいないわよ」

 「これからも頼りにしてるわね」

 「く…クリスったらもう…。こんなところでそんな事言うなんてぇ…」

 「?」

 「どうしてそこで分からなくなるのよ…」

 イマイチソフィアが言ってる事がたまに分からなくなるんだよね。主語とかないし。


 「でもさぁ、ウエディングドレスってそんなにいいものかしら? あれってただの白い布でしょ?」

 「あんたバカァ? 何言ってんの? ウエディングドレスを着るって事はね、男の娘にとっては憧れそのものなのよ?」

 「わ、悪かったわよ…。そんな怒らなくても…」

 「いいえ、分かってないわ。あれがどんなに素晴らしいものか教えてあげるわ」

 女装男子や男の娘が、ウエディングドレス含め、そういった服を着たい理由をソフィアには改めて一から教える必要があるわね。


 「視察はここまでにして、一回帰りましょ。そこで勉強会をします」

 「えぇ……。でも、それぞれクリスが着て教えてくれるんなら…」

 「もちろんちゃんと着るわよ。ソフィアもね」

 「うへぇ…」

 何故だ。何でいろんな服を着るよって言っただけでこんなうんざりした表情をされなくてはいけないのだろうか?

 あぁそうか。冬だもんね。寒いから冷たい服着るのが嫌なのね。


 「大丈夫よ。ちゃんと部屋を暖かくしておくから」

 「そういうことじゃないのよ」

 「分かったわ…。ちゃんとお菓子とジュースも用意するわ」

 「ねぇ、クリスって私の事どう思ってるのか一度話し合ったほうがいいわね」

 どうしてそこでソフィアが逆ギレするのだろうか。

 いつも通りの事をしているだけなのに……。


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