50 問題あるよ
「くぅおらぁあっ! 出てこい駄女神!」
普段冷静なクリスさんでも怒る時は怒る。
前もって教えてくれればいいものを、勝手にやったら怒るでしょう?
ということで、絶対にこいつしかいないであろう犯人に理由を聞くべく訪れたのだけど、当の本人はのほほんとお父様の書斎でアイスを頬張っていた。
そのアイスの棒を思いっきり押し込んであげましょうか?
「なによ、そんなに乱暴に。暑いのは分かるけど、丁寧に開けないとドアが壊れちゃうでしょう?」
全くもって見当違いの事を言う駄女神。
「ちっがーう! 違う違う! そう言う事じゃないのよ!」
「なによ……。あ、このアイス? ごめん名前書いてあったんだけど、食べちゃった…」
「そんなんどうでもいいのよ」
「えぇ…じゃあ何よ」
めんどくさそうな顔で、尚もアイスを頬張る駄女神。
「あんた、私の性別変えたでしょ」
「うん。喜んでくれた?」
「うん。正直、ひゃっほいって思ったわ。ありがとう。でもね、前もって知らせてくれないと不安になるでしょうがっ!」
「いや、サプライズ……」
「こういうのはサプライズって言わないのよ!」
「ごめんて…。でもクリスちゃんも悪いのよ?」
「なんでよ?」
「私の事女神だって信じてないでしょ?」
「まぁ…はい……」
全然信じてませんでした。いまこの瞬間まで八二くらいの感覚で信じてなかったです。
「だから、ここは例外的に、私が女神だと信じられるように、限定的に女の子にしてあげたのよ」
「あぁなるほど………。待って、え? 限定的? 恒久的じゃなくて?」
「そりゃそうよ。今回のはお試し。女神の力をそんなほいほい使えるワケないじゃない」
そうなんだ。寝起きにソフィアが変な事言うもんだから、戸惑ってたけど、今はもう感謝しかないわ。
「そんな不安そうな顔しなくてもすぐに戻るわよ」
いや別に不安そうな顔してないし、戻さなくてもいいのに。
ちなみにどのくらいで戻ってしまうんだろうか?
「別に戻さなくてもいいけど、どのくらいで戻っちゃうのよ?」
「えっとー…………、だいたい六ヶ月くらい?」
「なんで、そういうとこ曖昧なのよ。しかも微妙に中途半端」
六ヶ月ってメーカー保証にしても微妙な期間よね。
期限切れた時が怖いんだけど。反動とか…。
「いや、深く考えてなくて…、でもいいじゃん。時限的でも女の子なんだから、楽しんだら?」
「そうもいかないのよ!」
「なんで?」
「私、王子様の婚約者になっちゃってるのよ。だから本当に女の子になったらお姫様にならなくちゃいけないじゃない」
「別に問題ないじゃない」
「あるわよ。大有りよ! …………………いや、問題はないのかな……」
そうだわ。私が男だからバレたらまずいって話であって、女になったら問題ないからそのまま結婚してしまえば………。
「いやいやいや…。やっぱあるわ。大有りよ。だって半年たったら戻るんでしょ?」
「そうね」
「結婚後に男に戻ってバレてみなさいよ。国中大騒ぎ。国王様も王子様もブチ切れて、打ち首獄門はい終了ってなるじゃない!」
「そんな事にはならないと思うけど……気にしすぎじゃないの? 愛があれば乗り越えられるわよ」
「甘い甘いわ! 楽観的すぎるわよ。ねぇお父様!」




