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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章
23/430

23 新キャラのショタに戦いを挑まれた


 昨日のお茶会でいつも以上にお菓子を食べてしまったので、今日は午前中から剣の修行で食べた分を減らさないとね。

 他の面々も同じ考えだったのか、お母様とお兄様。そして、いつもは居ないお姉様と、メイドさん達が何人か居る。

 まぁ、メイドさん達も普段から試食と称してお菓子食べまくってるものね。

 特にミルキーさんはここ数ヶ月でより胸のあたりが大きくなった気がする。

 ミルキーさんがお兄様を後ろから軽く抱いてるんだけど、大きなものがお兄様の頭の上に乗っかっているけれど、お兄様はよく理性が保てているわね。

 そんな感じでウォーミングアップをしていると、門の方からガチャガチャと音を立てながら屋敷の方へ騎士の行列が向かっていった。

 昨日の賊を連行するのに来たんだな。朝早いのにご苦労様です。

 と、思っていたら集団の中から二人小さい人物がこっちへ向かってきた。

 金髪の小柄な少年はレオナルドですね。いつも見ているから分かりますが、もう一人の黒髪は誰だ?

 更にその行列の先頭に居た、一際屈強な人がそれに気づいたのか指示みたいのを出している。その人以外は屋敷へと向かったが、その先頭の人は悠然とこっちへ歩いてきた。

 歩幅が違うのか、ほぼ同時に到着したのだが、間近で見るとめちゃくちゃでかい。

 もうビルくらいの大きさがあるんじゃないだろうか? 普通に子供なら怖くて泣いちゃうんじゃない? え? 私は泣かないのかって? 精神年齢アラサーのおっさんがおっさん相手に泣くわけないじゃん。仕事のミスで責められてるわけでもないのに。

 「えへへ、僕も来ちゃいましたよクリス!」

 朝から元気ですね。ただ、あの列から一人抜け出してここまで来たのは王族としては減点ですね。危機感が足りません。まぁ、それをこっちの黒髪ショタさんが窘めてくれるんでしょう?

 「レオ! こいつが前言ってた街でばったばった悪い奴ら倒したっていう女か?」

 なんだこいつ、口悪いな。

 後ろの空気が急に冷たくなった気がする。もう夏になるっているのに。

 「リアム!そういう言い方はダメですよ! 彼女は僕の婚約者なんですから。ねークリス!」

 「そうだぞ、ウィリアム! 女性に対する口の利き方がなってないぞ! すまんなクリス嬢。剣の修行ばっかりやらせていたら口調まで粗暴になってしまってな。すまない」

 「あ、いえ、大丈夫です。男の子なんてこんなものですし、大きくなるにつれて言葉遣いも考え方も変わっていくと思いますよ?」

 目を見開き驚く大男。

 「ふむ…。うちの子だけが幼く感じてしまうな…」

 そんなこと言うと黒髪ショタが拗ねますよ?

 「うるさいなぁ親父はー。いいじゃん別に強ければさぁ! おい女!」

 「な、何よ…」

 「お前強いんだろ? その手に持ってるのは木剣だよな? 俺と勝負しろよ!」

 えぇ……。別にいいけどさぁ…。

 朝から血気盛んすぎませんかね。

 というか、そちらの方は息子さん止めなくていいんですかね? 女の子相手に勝負挑んでるんですよ? 顔を見ると、顎に手をやり興味津々な表情。あ、これ止める気ないやつだ。

 レオナルドも「クリスは強いですよ」と、止める気がまったくない。

 チラッと後ろを見る。

 お母様は魔王みたいな表情で軽く頷く。

 「いいわ、ケッチョンケチョンのボッコボコにしてやりなさいクリス!」

 握った右拳を天に突き上げて煽るお姉様。

 「これはお仕置きが必要かな?」

 お兄様もちょっとイラっとしているようです。声がいつもより低い低い。

 「じゃあ、お許しが出たのでいいですよ? で、勝負の方法は?」


 勝負は相手に一発入れるか、片方が参ったと言うまで。シンプルでいいね。サクッとやっちゃいましょうか。

 「じゃあ、いつでもいいわよ、どうぞ」

 「へぇ、よゆーじゃん。ま、俺様には敵わないと思うけどな。負けても泣くなよっ――――」

 俺様系ショタは、言い終わらない内に上段に構えて突っ込んできた。

 いや、もうなんか凄いね……。もう完全に頭狙いに来てるもんね。

 でも、なんだろう。お母様との特訓の成果なのか知らないけど、めっちゃ遅い。ほぼ止まって見えるくらい遅い。父親が騎士団の団長なのに構えも素人やん。

 あれかな、周りからチヤホヤされて勘違いしちゃった系かな? いや、もしかしたら態と隙を狙ってきてるのかな? でもどうみても猪突猛進というか、脳筋というか、頭足りてない感じがする。

 そんなことを十分に考える時間の余裕があった訳だけど、今やっと残念脳筋ショタが剣を振り下ろした。

 勿論、そのまんま受ける気もなかったので、サッと左に避けて右足を軽く前に出す。

 足元が疎かですわよ?

 「へぶちっ!」

 顔から芝生にダイブ! 砂利や石畳じゃなくて良かったですね。

 鼻を手で押さえながら、プルプルと震えて涙目になっている。

 「お、お前、よ、避けるなんてずるいぞっ!」

 へぇー。戦場で同じこと言えるんですかね。まぁ、ここは戦場じゃないんですけどね。

 「み、認めないぞ! 今のはノーカンだ! もう一回! 次こそは泣かせてやる! ……って、何だよその顔はー! まだ負けた訳じゃないぞ! 一本入れられてないからなっ! 本当だぞっ! さっきのはただ転んだだけだ! その目をやめろぉぉぉ!」

 ついつい、笑いを堪えきれずに吹き出してしまいそうな顔になる。

 うーん。やんちゃで生意気な男の子なんて、ずっと見てなかったから新鮮。

 私の精神年齢との差が親子くらいあるからなぁ。こんなんじゃ怒りも湧かないよ。これが母性かぁ……。走り回る子供を注意深く見てる親みたいな感情しか湧かない。

 うちの家族側もなんかほっこりしてるし。結果オーライ?

 というか、あそこのメイド達こそこそと生意気ショタヘタレ受けとか言うのやめなさい。どう考えてもレオナルドの方が受けでしょうに。まったく。

 「もう一回だけよ?」

 すっと手を出すが、払いのけられる。反抗期かな?

 ぐしぐしと汚れを袖口で拭う仕草はもう見事なショタですね。そのままアニメに出れるんじゃないですかね? 知らんけど。

 剣どうしで打ち合いしないと満足しなそうなので、正面に剣を構えてあげる。

 さっきと同じように突っ込んできたので、一回、二回、三回と打ち合う。

 ………軽い。子供の打ち合いってこれが普通なのかな?

 お母様の一撃のなんと重いこと…。初めて剣を受けた時は半日痺れていたなぁ。と、しみじみと思い出す。

 「やぁ、やぁ」と真剣な表情で申し訳ないんだけど、生意気なショタの鼻を明かしたいので、ここいらで黒髪ショタの剣を真上に飛ばす。

 「っ――――!!!」

 「はい、おしまい。一本あったでしょう?」

 呆然としながら自分の手を見つめている。

 レオナルドがニコニコしながら駆け寄ってくる。

 「どうですかリアム? クリスは強いでしょう?」

 そこはフォローしてあげたほうがいいのでは?

 「わぁ………ぁ………」

 「泣いちゃった!!!」

 あんなに威勢が良かったのに、まさか泣かれてしまうなんて思いもよらなかった。どうしよう、どうしましょう。

 「ふむ。ここは儂と一勝負どうかの?」

 ヌッと大男が顎をさすさすしながら近寄ってきた。まさか息子の敵討ちですか? 大人気ないなぁ。絶対に負けるやつですやん。

 そんな風に嫌だなぁと見上げていると、横からお母様が遮るように入ってきた。

 「ほう…。第一騎士団のパジェロ将軍ともあろう者が、か弱い子供相手に勝負を挑もうとは、随分と見下げ果てたものですこと」

 「いや、そのだな。いい太刀筋をしていたから儂もちょっと打ち合いたくなったんだよ。ホントだって。そんなに怖い顔すると、シワが増えるぞ」

 「怖い顔なんてしていないわ。親子そろって失礼ですこと。そんなに、打ち合いたいなら私が相手になりますわよ?」

 正直戦ってるお母様って見たことないから、是非見てみたい。

 「うぅ…。親父ぃ、仇とってくれよぉ…」

 これはもう逃げられませんね。わくわく。


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