33 もう少し言葉を選ぼうね
「そういえば、さっきクリスが言ってたんだけど、アーサーが来たんでしょ?」
リスみたいに口いっぱいにクッキーを頬張りながら話すソフィア。
「えっ? アーサー様が!」
「あ…うん。来たね。変わった人だよね…」
「あの何考えてるか分からない笑顔を張り付かせている奴よね。どうだった?」
「ソフィアは私以外の人に対しての印象が悪いよね」
「そうね。私クリス以外の人に興味ないもの」
はっはっは。ソフィアが興味あるのは私が作ったお菓子でしょうに。
そんな事を考えていたら、マーガレットが不機嫌になる。
「ねぇ、流石のソフィアお姉様でもアーサー様の悪口は見過ごせないわ」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃなかったのよ。ゲームのイメージで言っただけだから、気を悪くしたらごめんね」
「いや、そういうことならいいけど…」
まぁ、今のはソフィアが悪いわよね。
マーガレットはアーサーの事慕ってるみたいな話を以前に少し聞いたことあるから、怒るのも無理はないわね。
「ねーえぇ、そのアーサーちゃんってどういう子なのぉ?」
「誰にでも優しく親切で、面倒見のいい聖人君子みたいな人よ?」
「あれが? うっそだぁ…」
「なんですって?」
あ、やっば口に出てたか…。
「いや、その何というか、マーガレットのイメージと違うというか…」
「そんな事ないわ。孤児院に居た時、他の子達にも分け隔てなく接してて、面倒見も良かったもの」
まぁ、マーガレットが言うんならそうなんだろうね。
昨日会った時はきっと舞い上がっていたんだと思う。多分…。
そんな理由で納得するのもどうかと思うけどね。
「ねぇ、マーガレット。みんなゲーム通りのキャラじゃないんだから、アーサーだって、多かれ少なかれきっとどこか頭がおかしいと思うわよ?」
「性格が違うじゃなくて、頭がおかしいって言い方はどうなのよ…」
マーガレットが正しい。
「いやだってほら、まずクリスとエリーを見てみなさいよ」
マーガレットが両隣の私とエリーを見る。
「まぁ…そうね。こうして見ると男の子よね」
おい。どこを見て言った?
「あらぁ…私のはいくらでも見てくれていいのよぉ」
見やすいように席を立とうとするエリー。
「うるさい黙れ。立つな座れ」
「まぁひっどーい」
この二人の間には一体何があったんだろうね?
普通ここまで言われたら怒ると思うんだけど、もともとエリーって大らかだから怒ったとこ見たことないのよね。
でもそれにしたってマーガレットの言い方はきついわね。
「ソフィアお姉様ぁ、あれはお姉様には大きすぎます。私最近色々試してるんですけど、お姉様には私ので………」
「え? 何? 何か言った?」
自分で振っといて、お菓子に夢中で話聞いてないとかどうなの?
「あー………、えーっと、なんでもないですわ。おほほほ…」
「あ、そ?」
そんな感じで暫く近況とか、最近街で流行ってるものなんかの話を話し合っていた。
そんな時、ドアの方からノックの音がした。
「あら、何かしら?」
「クリス様ー、お客様がいらしたんですがお通ししていいですかー?」
ドアから顔だけを覗かせたメアリーが聞いてくる。
「え、誰?」
「アーサーですね」
好きじゃない人だとしても、一応敬称はつけようね。
でも何の用だろう。まだ昼前よ?




