28 もしかしたら祭りの可能性が…
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「女神様、本日はありがとうございました」
私何もしていないけど。強いて言えば、濡れ衣を着せられたくらいかしら?
勝手に周りが盛り上がってただけな気がするのよね。
「明日以降は街で視察させていただきたいと思います」
「あっ、はい…」
これどうなるんだろう……。
街で視察って見るようなところあるかしら? 教会の場所も知らないし、私が居なかったら街の人も普通だと思うんだけど…。
何かしら見当がついてて来たんでしょうけど、無理矢理こじつけられたりしないかしら?
カルト宗教、異端認定されて投獄打ち首エンドかしら? それとも生きたまま焼かれる方かしら?
正直どっちも好ましくないのよね。
ぶっちゃけ私無関係だと思うの。このまま何事も無く平穏無事に終わって欲しいんだけど、今までの流れからすると無理なんだろうなぁ…。まーた巻き込まれるのか…。やだなぁ…。
そんな風に自分の世界に入っていたら、予想外の言葉を掛けられた。
「またお伺いしますね」
「えっ!」
「アーサー様、そろそろ行きましょう」
どういう事? と、聞く前に神官達がいそいそとアーサーを馬車に乗せて帰って行ってしまった。
今日ここで会って終わりじゃないの?
しかし、それにしても嵐のような時間だったわ。
疑問は尽きないけれど、まずはうちの駄メイド達に話を聞くのが先よね。
そう思って振り返ると同時に誰かに体を持ち上げられてしまった。
「やっぱりクリスきゅんは女神様だったのね。認められて然るべきよね。こんなにかわいいんだもの」
正直、つっこむ気力もおきない。
そして、私をそっと地面に下ろしたアンさんは、跪き祈るポーズをとった。
「女神様…どうか私の願いを聞いてください。私アン・ボルツ・カーボナードはクリスきゅんと末長く………」
「はいはーい。そこまでよー」「ダメよー抜け駆けはー」「抜け駆けはクリス教会員規則十五条に違反してますね」「これはお仕置き案件だわ」「おら立てぇ!」
会員規則とは…?
アンさんが最後まで何を言おうとしていたのか分からないけど、大勢のメイドさんに羽交い締めにされ、どこかへ連れて行かれた。
「待って! せめて最後まで言わせてぇっ!」
最終的に胴上げのように高く上げられたまま連れて行かれた。
もしかして、これって祭りの感覚でやってた?
あ、だからみんな同じ衣装着ていたの?
で、最後のアレがお神輿みたいな感じで………。
ってそんな訳あるわけないでしょ!
似通っている部分はあるし、うちの使用人一同お祭り騒ぎが好きだから、なんとなくそうかなと一瞬思ったけど、多分……。いや絶対に違うわね。
まぁ、この騒ぎが今日限りだったらそうかもしれないけどね。




