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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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25 基本他力本願のジェームズ


           *      


 まずい! どうしようか。クリスに押し付けてしまおうと思ったのに、まさかまさかの宰相に駄目出しを食らってしまった。

 レイチェルもクリスと一緒に向こうへ行ってしまった。

 クリスがダメならルイスとサマンサにお願いしよう。

 逃げられる前に二人の肩を掴んでおいてよかった。

 「ちょ、お父様…」

 「(もう少しつきあってくれないか、な?)」

 正直、街の激辛料理屋と風俗店の場所しか知らないから、まともな場所を案内できる自信がないんだよね。


 「で、では、今後の領地経営の勉強のためにルイスとサマンサを連れても……」

 「もしかして私と行くのが怖いのかね?」

 「い、いえいえとんでもございません……」

 はい。怖いです。駄目出しされる予感しかしないので、もうこの時点で胃がキリキリ痛む。


 「君は本当に顔に出るねぇ。もう少し貴族というものを学んだ方がいいぞ。その点ルイス君にサマンサ君も顔には出していないぞ。なぁに観光ついでに妻や娘ににいろいろ頼まれてね。どれを買ったらいいかわからないから付き合って欲しいんだよ」

 「そ、そういうことでしたら……」

 なんだよ。驚かせやがって。そんな事なら最初から勿体ぶらずに妻への土産と言えばいいのに。ブライアンといい、この人といい。どうしてこうも回りくどい嫌がらせをするんだろうね。

 わざわざ、ここに寄らずに勝手に街を散策してくれればいいのに。


 「奥様と娘さんは一緒ではないのですか?」

 「二人とも酷い方向音痴でね。一緒にいてもすぐに迷子になるのでね、それに私も羽を伸ばしたいと思ってね」

 「あぁそうでしたか。でしたら、奥様や娘さんの欲しいものに関しては子供達のが詳しいでしょうね」

 「あぁ、そうかもしれないね。娘とは年頃も近いし、化粧品やらアクセサリーやら私にはちょっと分からなくてね。サマンサ君がいてくれると助かるよ」

 「え? 私も?」

 「いいじゃないか。あとで何か奢るからさ」

 「まぁ…それなら」

 「じゃあ僕はクリスのところに行くね」

 「いいえ。抜け駆けさせないわ。今後の領地経営の事考えたらお兄様も行くべきよ」

 「サマンサ………」

 グッジョブサマンサ。ルイスとサマンサがいれば心強いよ。ここにクリスもいれば完璧だったんだけどな。


 「心なしか嬉しそうだね」

 「え? そうですか?」

 図星です…はい。

 親の真似事だって上手くできているか分からないのに、貴族の真似事にまで(かま)けている余裕は無いんだよ。

 表の事に関しては、頼れるものにはとことん頼っていくスタイルなんで何を言われても大丈夫です。笑いたきゃ笑えばいいさ。その為ならピエロにだってなってやるさ。ピエロは人を笑わせるのが仕事だからね。

 普段から道化師みたいだって? やかましいわ。 なーんて心の中でひとりツッコミしてみたんだけど、ピエロでも対応出来ないことが起こった。


 「ふむ。そっちのが面白そうだな。私も行こう」

 「えっ!」

 「君は本当に腹芸を覚えた方がいいと思うぞ」

 いやいやいや。教皇までついてきたら、何話したらいいか分からないよ。

 今日はいいお祈り日和ですね。とか言えばいいんだろうか?


 正直、ここまで神に頼らずに来たし、今までに教会なんて数えるほどしか行った事ないから宗教の事も何にもわかんないよ。分かるのは裏でやってるやばい事しか知らないよ?

 この前の裏帳簿、もう少し上手く作れなかったんですか? なんて言えないし、この人関わってないからなぁ。

 それにいつの間にか行く事が決定してしまっているんだけど。


 「じゃあ、テオ、パパ達は街に行くけどどうするね?」

 「一緒に行く」

 「アーサー君と一緒じゃなくていいのかい?」

 「忙しそうだから」

 「そうか。じゃあ、ジェームズ君。案内頼むよ」

 「…………はい………」

 テオドール君が行くならクリスを連れて行っても良かったんじゃないんですかねぇ?


 「じゃあ、お父様私たち着替えてくるわ」

 「いや、待たせたら悪いから…」

 「はっはっは。紳士たるものそのくらい待てるさ。ところで、どうして君のところの息子は女装しているんだい?」

 随分とセンシティブな話題に食い込んできたな。

 正直言って知りません。


 クリスに関しては、レイチェルとサマンサが女装させて、クリスもそれを受け入れた形なんだけど、ルイスに関しては分かんないなぁ。

 気づいたらしていたし、変なポーズとりながら意味のわからない事をよく口走っていたな。

 いつの間にか変な事話すのも無くなったけど、親としてそれは失格だよって言われたら何も言い返せないよ。

 あ、そういえば、宰相はクリスが未だに女の子だって思っているんだったな。

 国王に呼び出された時に、必死に否定したのに冗談と勘違いされて終わったんだったな。


 まぁ確かに? 贔屓目に見ても可愛いし、どっからどう見ても女の子にしか見えない。下手なご令嬢方と比べても圧倒的に美人なんだよなぁ…。

 そりゃあ勘違いするよな。つまり、宰相の言う息子はルイスの事だけなのか。

 もう一回カマかけてみるか。


 「えっと……どっちの息子ですかね?」

 「何言っとるんだ君は? 君に息子は一人しかいないだろうに。……………いや、まぁ、サマンサ君が男勝りなところはあるが、女の子だろう? もう少し自分の子供に目を向けた方がいいぞ?」

 「あっはい……」

 ダメだ、この宰相目が節穴だ。

 でもなぁ。この領の住人は全員クリスが男だって知ってるのに、どうして他の領の人はそれが分からないんだろうな。もうお手上げだよ。


 「お父様、着替えが終わりました」

 「今更だけど、私も行く必要あったのかしら。今日はクリスのシスター服を堪能したいのだけれど」

 「あぁ、それは僕も同じだね」

 「二人とも宰相の前だから、そういう事は言わないでおいてもらえると……」

 「構わんよ。子供は素直でわがままなくらいが丁度いい。テオももう少しわがままを言ってくれてもいいんだがね」

 「ぁう…」

 テオドール君は父君にずっとしがみついたまんまだな。

 うちのクリスと同い年とはとても思えないくらい幼く見える。

 向こうへ行ってしまったクリスはアーサー君達と何やら楽しく話しているようだ。

 こっちは全然楽しくないんだよなぁ…。


 「じゃあジェームズ、行こうか」

 「分かりました」

 「教皇、そのお身体では危ないですから我々も同行します」

 「別に必要はないが…」

 「いえ、万が一がありますから…」

 教皇も一緒に歩き出したと同時に、お付きの神官が二人付いていくと言いだした。

 どうせならそのまま全員でうちの街を適当に観光して帰ってくれればいいのに。


 ………あぁ、でも、それでまた変な事を広められても困るな。

 仕方ないけど、ここは腹を括って()()しますか…。

 僕の意図に気付いてくれたのか、メイドが二人、初めからそこにいたかのように自然に振舞っている。メイド服の格好で。

 ルイスに後ろから抱きついているミルキーと、苦労人のイノ。

 この二人なら問題ない。

 まぁ今回は何も起こさないと思うけれど、用心に越した事はないからね。

 しかし、イノは窶れたね。ルイスが学園に入っている間にお付きで行ったはずなのにこんなに窶れるもんなんだろうか。

 後で飲みに連れて行って聞いてみようかね。


 「ふふっ…」

 宰相がこっちを見て意味深に笑う。

 「どうかしましたか?」

 「いや、君のところはメイドも自由でいいなと思っただけさ」

 「不徳の致すところです」

 「いやいや、褒めているんだよ。寧ろ羨ましいくらいだ」

 「はぁ…」

 この人はブライアンと一緒で何考えてるかよく分からないんだよな。


 「そうそう。これが頼まれた買い物のメモなんだが…」

 「拝見します」

 中を開いて見る。

 「これは………」

 「頼むよ。私はこういうのに詳しくないんでね」

 やられた。こいつも狸だったか。

 「善処します」

 「頼んだよ。いやぁ、楽しみだ。なぁテオ」

 宰相はニコニコしながら一番に馬車に乗り込んでいった。


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