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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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24 偉い人がたくさん


 それから十数分、みんな思い思いに楽しんでいたら、門の方から、やたら豪奢な白地に金色の細工が施された馬車が三台入ってきた。

 やっば。急いで整列して並ばないと。そう思って振り返ったら、私以外の全員が後ろで綺麗に整列していた。ねぇ、一声かけてくれても良くない?


 そんな訳で、私一人前に代表者みたいな感じになってしまった。逃げたい。

 おろおろとしていたら、両肩を掴まれた。

 「落ち着きなさいな。私もいるから」

 「そうだよクリス。クリス一人に対応させたりはしないからね」

 お姉様にお兄様…。

 普段ロクでもない事しか言わないのに、こういう時は頼りになるのね。

 少し好感度を上方修正しておくわね。


 「えぇ。全くその通りだわ。ねぇあなた」

 「い、いや、そんなつもりはなかったんだよ。ははは…」

 お母様にお父様もいる。珍しい。

 お父様もいる事にびっくりなんだけど、お母様がシスター服に身を包んでいる方が驚きだ。てっきりいつものドレスかと思ったわ。


 「そんなことよりどうしてレイチェルはそんな格好をしているんだい?」

 「私だってこういう服着たいもの。こういう機会でもないと着れないじゃない?」

 本当に経産婦なんですかねってくらいスタイルがいい。正直凄くエロく見える。実の親になんて感情を………。

 「お母様素敵です」

 「あらぁ、ルイスありがとう」

 素直に下心なくありがとうが言えるお兄様って凄いね。


 改めて、辺りを見回すと、メイドさん達と、孤児院の子供達。それとお兄様の生徒会の仲間達とその従者一向がみんなシスターの格好をしているというのはなかなかに壮観だよね。まぁ一人は神父さんの格好だけど?

 という事は、この場でただ一人普通の格好をしているのはお父様だけになるのか。


 「なんだいクリス?」

 「いや、お父様だけ着ていないんだなって思って」

 「………あっ………そうだね。じゃあ居なくても大丈夫かな」

 どうしてそんな発想になるんだろうか。


 四人で呆れた表情でジトーッと見ていると、いつの間にか私達の前に馬車が止まり、中から白地に金色の刺繍の入った、みるからに高そうな神官服に身を包んだ人が降りてきた。

 その中に、あの時助けた赤髪のおじさんと少年もいた。

 その少年は私を見るなり、パァッと顔を綻ばせ、私の前に駆け寄ってきた。


 「おぉ…。女神様直々にお出迎えくださるとは、身に余る光栄、私め恐悦至極歓喜にございまする」

 重い。

 「あ、はい……よこそ…………」

 「そんな私ごとにそんな気を使わなくていいのです。その辺の野良犬を躾けるような感じで構いません」

 さらっと願望を混ぜてきたわね。というか、別に気を使ってるんじゃなくて、どう対応したらいいか分からないだけよ。


 「どうも。女神の姉です」

 女神の姉ってお姉様何言ってるんですか?

 「ようこそ。女神の姉です」

 いやいやお兄様。そこは兄っていうところじゃないんですか?

 まぁ、女神の姉ってのも十分におかしいんですけどね。


 「ようこそいらっしゃいました。女神の母です」

 お母様まで!

 「あ、領主のジェームズです」

 「「「「はぁ…」」」」

 一斉にため息が出てしまった。

 流石の私でもそこはボケるところだと思ったのよ。それをお父様はつまらない返ししちゃって………。


 「これはこれは。皆さん…一様に……敬虔な……シスターの格好を………………えっと、随分と扇情的なシスターの格好をしているんですね。こっちの方ではこういう感じなんですか?」

 「いや……どう……ですかねぇ…はは…」

 一週間前に作ったばかりだし、この領に教会があるのも知らないから普通が分からないけど、私たちが来ているのは全部間違ってるってのは分かるわ。


 「でも、女神様の美しさをこれでもかと表現しているこの服はいいですね。是非とも採用したいですね」

 ちょっと鼻息荒くキョロキョロとしだすアーサー。

 「アーサー様、お戯れはその辺にしてくださいませ。我々はこの地に誕生したあやしい宗教について調べに来たのです。それにただの子供相手に女神などと……。次期教皇になろうお方がそれでは困りますよ」

 鼻で笑って侮蔑の表情を見せたのは、他の神官達だった。

 八人いるけど、うち一人だけ女性だな。あの人かな? あの頭のおかしい本を描いたのは。


 「まぁまぁいいじゃないか。子供とは不思議な遊びをするもんだ。うちのテオドールだって変わった遊びをする。いちいち目くじらを立てるものじゃない」

 「…パパ…」

 「そうだ、な。子供はいつも不思議な事をする。お前達ももっと寛容にならないといけないな」

 「「「はっ」」」

 後ろの馬車からは緑色にうっすら灰色が混ざったイケメンのおじ様と、緑色の髪をした少年? と赤灰色の髪のおじ様だ。赤灰色の髪のおじ様は杖をつきながら歩くが、少したどたどしい。確か、ロザリーと話をしていた教皇の人だったと思う。


 しかし、この人一人だけやつれているけど大丈夫なんだろうか。暑いから老体には厳しいんじゃないかな? 老けて見えるけど、実はそこまで歳いってないのかな?

 そんなおじ様二人が嗜めると侍ている神官は一様に頭を下げていた。

 しかし、この緑の髪の人たちも教会の関係者かな? 普通にジャケットにアスコットタイをつけているけれど。


 こっちに気づいたのか、イケおじ様は軽くウインクした。

 あらいやだ。胸がキュンキュンしちゃったわ。私男なのに。

 しかし、あの緑髪の少年か少女か分からない子はずっと、しがみついてるね。気が弱いのかな?


 「ジェイドフォレスト宰相、どうしてここに…」

 宰相って、この国の政治の一番偉い人よね。どうりでお父様の顔が青くなっているわけだわ。

 「それにカーネリアンダウン教皇も、本日は来られないはずでは…」

 どうやらこの二人はイレギュラーだったみたいね。


 「いや何、発展目覚ましいこの領が気になってね。友人が行くというから一緒についてきたんだよ」

 「あぁ。私も来る予定は無かったのだが、アーサーが行きたいというからな。あのアーサーが何かに興味を持つなどなかなかにないことだ。私も気になってね、来たんだよ」

 「そ、そうでしたかー…………」

 お父様の声がどんどんと小さくなっていく。そして、青首大根みたいなグラデーションだったのに、今は茄子のように紫に近い顔色になってるわ。それに脂汗が凄い。

 本当にお父様は人付き合いが苦手なのね。


 「そうだ。ジェームズ、街を案内してくれないか?」

 「えっ! あ、あぁ…そ、そうですね。じゃ、じゃあクリスが詳しいので一緒に……」

 「おいおい。もしかして自分の子供に案内させるのかね? 自分のところの領だろう?」

 「あ、あははは…、そ、そうですよね…」

 「じゃあ、お父様、私は向こうに行ってますわね」

 「あっ………」

 カーテシーをしようとしたんだけど、この服出来ないわ。

 出来ないから、軽く頭を下げてこの場を後にした。

 「どうぞごゆっくりー………」

 普段からお父様には無理難題を吹っかけられているんだもの。こういう時こそ返さないとね。


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