23 めんどくさい人達
もう。今日はめんどうな人達が来るのに朝からこんな疲れるような事させないでほしい。
そう思っていたんだけど、うちに滞在中のめんどくさい人達が集まってきた。
「……っんまぁ〜! 何てこと! ここに天使! いや女神様がいるわ!」
この一番暑苦しい声と喋り方はアンさんだな。
そちらを向くと、両手を握りしめ、目をキラキラさせながらハァハァしていた。
「落ち着きなさいよアン」
「離しなさいキャロル。これが落ち着いていられるわけないでしょう。アンタ馬鹿なの? 目の前に女神様がいるのよ。祈るから邪魔しないで。(どうか私とクリスきゅんがラブラブになりますように)」
んー…、その願いは却下ね。荒い鼻息が当たるから離れてほしい。
「うわぁめんどくさっ…。ねぇルイスーこれ止めらんない? って……」
「何? 僕は今凄く高揚感に包まれているんだ。邪魔しないでくれ」
お兄様こういう黒と白を基調とした服好きですもんね。
「クライブは………いいや」
「おい。どうして俺の扱いはいつもそんな適当なんだ」
「うるさいわね。さっき子供達に近寄ろうとした時にメイドさん達に塞がれてたじゃない。きっとよからぬ事をしでかそうとしてたんでしょ? そんな人相手に丁寧にする必要があって?」
「なっ……俺は別にそういうつもりで子供に近づいたつもりじゃ」
朝からホントに騒がしいね。この人達を見て貴族で、学園の生徒会って言われても誰も信じないと思う。
それにアンさんとクライブさんは子供達に接近禁止令が出ているんだけど、何したのかしら?
「ごめんねぇ、うちのアホどもが迷惑かけて」
「いや……はい。そうですね」
キャロルさんが謝るけど、貴女も連日馬鹿騒ぎしていたうちの一人なんですよ?
「いやでも、いきなりこれ着てねって渡されたけど、何始めるの?」
「そうよ。そうそう。こんなエッチなシスター服着ろだなんて。もしかしてぇっ!」
「はいはい。アンは少し黙ってようねー。話し進まないから」
「んぐっ!」
キャロルさんがアンさんの顔をアイアンクローして黙らせた。
「なぁ、どうして俺のはこんなにチープなんだ」
あぁ確かに。クライブさんの服だけ、普通の神父の服だけど、ペラペラの安っぽい生地だ。一回来たら終わりみたいなそんな感じの作りだ。
「あぁ、すいません。どうしても男の服には興味が持てなくて…」
そんな感じでエペティスさんがそっと補足する。
まぁクライブさん以外はみんなシスターの格好だからね。
うちの男の使用人さん達も全員シスターの格好をしている。
ゴーレム並みに大きい庭師の三人ですらシスターの格好だもの。
誰も反対しなかったんだろうね。みんな満足そうな表情をしている。
まぁ、好きで着ているならいいんだけどね。全員ムダ毛の処理済みなのは評価高いわ。あの格好でムダ毛ボーボーだったら、流石の私でも口を出していたでしょうね。
まぁクライブさん以外はみんなシスターの格好だからね。一人くらい神父役がいないといけないんだろうけど、それにしたってこのクオリティの落差よ。
ところどころ解れているのはわざとなんだろうか? 足と袖の丈とか左右とも違うし。
「あぁ、ちなみにクライブ様のは子供達が作ってましたので、不満があれば…」
「不満などなかろう。これほど素晴らしい服は他にはない。一生着よう」
「あっ…そ、すか」
流石に引いたのか、エペティスさんがそっけない態度で返事をする。
しかし、どんだけ子供が好きなんだろうね。こんなあっさり手のひら返しして…。
ずっと黙ったままだけど、ロベルタさんとお兄様はお気に召しているのか、ずっと満足げな表情をしている。
他のメイドさんと一緒に色々ポーズをとっている。あそこだけ撮影会会場みたいな感じになってる。ローアングルで撮るカメラマンがいれば完璧だったわね。




